ここはいったいどこなんだ?(前編)




番外編 ここはいったいどこなんだ?(前編)

 ピピピピピピ   パチ
「ふぁ〜あ、朝か・・・・」
その日の朝は、いつもと変らない普通の休日の朝だった。
「ん〜、さて一階に下りるか〜」
太助はパジャマを着替え、一階のリビングにむかった。
「あっ、太助様おはようございます」
「シャオ、おはよう」
「主様、おはようございます」
「おはよ〜飛欄」
太助はリビングにいたシャオと飛欄に挨拶をして席についた。
「ルーアンとキリュウは?」
「ルーアンさんは学校に用事があるみたいで朝早くでかけられました。 キリュウさんはそろそろ起きると思います」
シャオの説明を聞き
(ルーアンの奴も大変だよなぁ〜)
などと思っているとキリュウがリビングに入ってきた。
「よっ、おはよ〜キリュウ」
「ああ、おはよう主殿」
キリュウは、まだ少し眠いのか目をこすりながら席に着いた。
「それじゃあ、朝ごはんにしましょうか・・・・・・えっ?」
シャオがキッチンに向かおうとするとテーブルの上に漆黒の穴が現れた。
「なっなんだこれは!?」
太助はいきなり出現した穴を見ながら叫ぶ。と次の瞬間
「えっ?うわぁ〜!!」
「太助様!きゃ〜!!」
「なんですかこれは!?」
「眠い・・・・・・」
太助たちは、漆黒の穴に引っ張られ七梨家から姿を消した。

キエサルヒマ大陸 トトカンタ市 バックアップの宿

「黒魔術師様」
「なんだキース」
黒魔術師といわれた男は振り返り聞いた。男は黒目黒髪黒ずくめ、胸元に剣からみついたに一本足のドラゴンの紋称、大陸黒魔術の最高峰たる《牙の塔》のペンダントをしていた。
「まったくっだらねェことだったら、さっさと帰れよ」
「はっはっはっ、黒魔術師殿。私がつまらぬ事で黒魔術師殿を 困らせたことがありましたか?」
「いや、めちゃくちゃ記憶にあるんだが・・・・」
男はキースが軽く無視したので、テーブルに頬杖をかいて
(コイツは何でこうも自分かってなんだ?)
などと思っていた。すると宿のドアを思い切り開け
「オーフェン!今日も一緒に市民のためパトーロールよっ!」
「やかましいっ!コギー、てめェいつも人に頼ってねーで、自分でしろ!」
オーフェンと呼ばれた男は、コギー(扉から入ってきた女)に向かって怒鳴りつけた。
「ひっどいわぁぁぁぁ!オーフェン、いつもそんなこと言って 手伝ってくれるじゃないっ!」
「今回は何が何でも、お前一人でやれっ!」
オーフェンとコギーが言い争ってるとそばに立っていたキースが話しかけてきた
「黒魔術師殿、話を聞いてください」
「キース?てめぇまで手伝えとか言うんじゃねーだろうな」
「そんなわけ、あるはずありません。何故私が、脳細胞がほとんどなく 幼稚園児も引っかからない罠に引っかかる人のためにそんな面倒くさいことをしなくてわならないのですか」
「いや、お前一応こいつのとこの執事だろ?」
オーフェンが半眼でキースを眺めながら聞くと
「そういえばそうでしたね」
などと言っていた。
「うう、なんか、酷い事いわれ放題じゃない・・・」
「お前自覚無いのかよ、まぁいいや。んで何だキース」
近くて転がりながら泣いているコギーのことは忘れキースに聞いた。
「はい、実は黒魔術師様に合わせたい人が・・・・」
「俺に?って前も同じこといってなかったか?」
「気のせいでしょう、さて支度をするので少しお待ち下さい」
「ん〜いつだっけな〜なんか、とんでもないことがあったような、たしかそうだアレは!ってやっぱりそれかぁ〜!!」
オーフェンはキースが地面に引いた布を指差し叫んだ。
「キース、てめぇーそれはこの前の精霊魔法の魔法陣じゃねぇかっ!」
「いえいえ、黒魔術師様。これは前の時の魔方陣の布ではありません」
キースは準備をしながら返事をした。
「ンじゃあ、それはなんだ?」
「召喚陣です」
「たいして変らんわぁぁぁぁぁっ!」
オーフェンはキースの顔を思いっきり殴り倒したが背後から
「何故怒っているのですか?」
と前に倒れたはずのキースが何事もなかったかのように無傷で現れた。
「まぁいい、で?これは何処で入手したんだ?」
オーフェンは何となく分かってしまっているが一応キースに問いかけた。
「マジク殿からいただきました」
「やっぱりお前か!マジク!」
さりげなくコギーが注文したレスカを運んでいる少年に向かって叫んだ。
「えええええ!?だ、だってキースさんが、この前の魔方陣みたいの他に無いのかって言うからっ!」
「だからって、なんでこんなもんばっか持ってんだ・・・」
オーフェンはため息をつきキースの方へ向き直った。
「まぁそれは良いとして。キィィィィス!てめぇ、そんなもんばっか 集めんじゃねぇ〜!」
「良いではないですか。別に減るわけでもありませんし」
「減るっ!俺が疲れるんだよっ!」
「そんなこといって、この後どうせあてもなく街をぶらぶら歩くつもりだってンでしょう」
「ぐっ!」
マジクが運んできたレスカを飲みながらコギーがオーフェンに言った。
「何のことかな?まぁいい、そんでキース?召喚でも何でもさっさとしろよ。
俺はさっさと平和を感じのんびりと街へぶらぶらとだな」
「わかりました。ではさっそく」
キースは前回にもまして意味の分からんものばかり並べていた。 「それでは、今回召喚するのはそうですね・・・私が進行する精霊神様でもっ!」
「ちょっと待てっ!てめェざけんなっ!また意味の分からん精霊呼び出して
暴れまわさせんじゃねーだろうな?」
「はっはっはっ、しませんよそんな事。ではいきますか」
オーフェンはキースを半眼で睨みながら少し不安を感じていた。
(まーた変なもん出したら、こいつどう処分するか・・・)
そんな事を胸中で呟いているとキースは意味の分からない単語を並べた呪文を唱えていた。
「αΘγβΩ・・・・カモン、精霊神」
キースが呪文を唱え終わると周りには何も異変が起こらず失敗に見えた。
「・・・失敗か、んじゃ俺は出かけるぜ」
オーフェンは席を立ち出口へと歩いていこうとするとコギーが言った。
「ねっねぇオーフェン?」
「んだよ?」
「あっあれ・・・・」
コギーが震えた指先で指した所、つまり天井を見上げるとそこには漆黒の穴が開いていた。
「んなっ!?」
オーフェンが驚き眺めていると穴の中から声が聞こえてきた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「キリュウさん何寝ぼけてるんですか!?」
「眠い・・・・・・」
そして、穴から出現した4つの影はオーフェンに激突した。
「ぐぇっ!」
「うわっ!」
「きゃっ!」
「眠い・・・い!?」
「って、きゃー!」
オーフェンの上に落ちてきたのは、太助・シャオ・キリュウ・飛欄だった。
「キィィィィィィス!!!」
「何でしょうか、黒魔術師殿」
「なっなんだこいつらはっ!?」
オーフェンはあさっての方向を向いているキースに聞いた。
「・・・・どうやら召喚が成功してしまった用で」
「すんなぁぁぁぁぁ!!」
オーフェンは気絶している4人の下敷きになりながら声を張り上げて叫んだ。

一時間後 バックアップの店

「で、お前らの名前は?」
一時間後、目が覚めた太助たちにオーフェンは問いかけた。
「えっと、俺は七梨太助って言います。それで右からシャオ・飛欄・キリュウです」
「俺はオーフェン、よろしくな」
オーフェンは軽く太助たちに挨拶をかわし話題を変えた。
「お前らどうやら見かけからするとここらへんの人間じゃねーらしいが、何処に住んでんだ?」
「鶴ケ丘市って所ですが・・・」
太助の言葉を聞き少し不思議そうに言った。
「鶴ケ丘市ぃ?ンな名前の町聞いたことないな、おれの記憶が正しければそんな場所この大陸には存在してない・・・」
オーフェンの答えを聞いた太助たちは驚愕の顔を浮かべ、聞き返した。
「大陸?ここは何処なんですか!?オーフェンさん!」
「まぁ落ち着いて聞け、ここはキエサルヒマ大陸の五大市の内1つトトカンタ市だ」
「キエサルヒマ大陸?ここは日本ではないんですか?」
「さっきも言ったようにそんな場所聞いたことないし地図には存在しない。
お前ら、おそらく大陸外から召喚されたんじゃねーか?まったく、キースてめェが妙な召喚もどきなんかするからこうなるんだっ!」
「何をおっしゃいます。黒魔術師殿、私は黒魔術師殿が日々退屈に過ごしているので娯楽にと用意しましたのに・・・・」  
「なお悪いわぁぁぁぁぁっ!!!ちっ、ここで愚痴を言っててもしょうがないし、取り合えず俺の先生に連絡を付けてみる」
オーフェンはキースを殴り飛ば昏倒したことを確認しながら言った。
「先生?オーフェンさんのですか?」
「ああ、彼なら何か知ってるかもしれない」
太助たちは、ほっとため息をついてひとまず安心した。
「そんじゃ俺は、先生への手紙を出しに行くが、太助」
「はい?」
「お前らも来るか?こっちは初めてなんだし、しばらく居ることになるだろうしな」
「そうですね。お願いしますオーフェンさん」
オーフェンは頷き彼らと一緒に外へ出た。

10分後 トトカンタ市・広場

「うわぁー、人がたくさんいますー」
「そうだな、ここはトトカンタ市の中央部だから、人だかりが多い」
彼は軽く答えると、いきなり足を止めた。
「どうしたのだ?オーフェン殿」
キリュウはオーフェンがいきなり足を止めたので彼に聞いた。
「少し、仕事をしなければならんが、いいか?」
「いいですけど、なにかするんですか?」
「ああ、かなり騒がしくなると思うが、まぁ我慢してくれ」
「はぁ」
オーフェンは前方を睨みつき右腕を掲げ、叫ぶっ!
「我は放つ光の白刃っ!!」
その呪文のような言葉を叫ぶと掲げていた右腕の先に白い光が発生し、 収縮し光熱波となり放たれる・・・・
ドコォォォォン!!
「なっ!?」
太助たちはその光景を見て放心する。
オーフェンが放ったその光熱波は人々の間を抜け、毛皮のマントをまとった身長の低い
二人組みに突き刺さり爆発した。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
光熱波が当たった二人組みは爆発に飲み込まれ黒焦げになった。
周りの人々も一緒に吹き飛ばされたが、何故だか「またかよ」などと呟きながらオーフェンたちを避けるようにして再び歩みを再開した。
「まっ、こんなとこかっ!」
「ちょ、ちょっとオーフェンさん今のは一体!?それよりもあんな事したらあの二人、死んじゃうじゃないですか!シャオっ!」
「はいっ!」
シャオが黒焦げになっている二人の元に走っていった。
「えーと・・・・最初に言っとくが、あいつらはあんなんじゃ死なんぞ?」
「・・・えっ!?」
飛欄がオーフェンの言葉に驚いていると、黒焦げになった二人のうち一人が起き上がり叫んだ。
「きさまっ!この金貸し黒魔術師っ!人が平和に町を歩いている時にこんなことしやがって、このマスマテュリアの闘犬ボルカノ・ボルカン様がいい加減にしないとニワトリで突き殺すぞっ!」
その光景を半眼で睨みながら言った。
「なっ?」
「・・・・なんで?」
「さぁーな、俺も知らん。それよりさっきの事だが・・・あれは魔術だ」
「まっ魔術!?」
太助たちが驚いているのを眺め、頷いてそのまま続けた。
「そうだ。この大陸では、魔術師という人たちが存在する。
理由は、まぁメンドーだからいいか」
「面倒って・・・まぁいいや、ここにはそんな人がいるんですか」
「・・・なんか、あんま不思議そうじゃないな」
「まぁ、こっちも同じような人(?)がいるしな」
「はっ?」
オーフェンは、太助の発言がどういったことなのか理解できず、聞き返した。
「それは口で言うより見たほうが早いかな、シャオを見てみてください」
言われた通り先ほどボルカンともう一人、弟のドーチンの元へ走ってったシャオを見る。
「来々 長沙!」
ポン!
「なっ!?」
オーフェンが見た光景はシャオが手に持った輪っかから、小さい生き物(星神)を呼び出すところであった。
「なんだあれっ!?」
「そういうことです。シャオたちは精霊なんですよ」
「精霊ィィィ!?ンなアホなっ!精霊が具現化していて、しかも気絶やら話すやら他にも色々できんのか!?」
「まっまぁ、そうですけどぉぉ・・・」
大声をあげすごい面幕で聞いてくるオーフェンに少し引きながら答えた。
「しかも『たち』ってことは・・・・」
「そうだ、私たちも精霊だが」
「ああああ、なんてことだ。精霊がこんなに、しかも具現化?お前ら、まさか異世界からきたのかっ!?」
「いや、だから最初にそう言ったような言ってないような・・・・」
「・・・・・はぁ〜、こりゃ付けたさねぇとな」
オーフェンは、半眼で手当てを拒むボルカンを新しく出した小さい人(星神)で押さえつけている光景を見て、ため息をつき、空を見上げた・・・・

あとがき

はい、作者のアキトです。
今回の前・後編でクロスオーバー「月天&オーフェン」に挑戦してみましたが
なんかとても新鮮ですね。
後編も楽しく書けそうです。
では、「魔術士オーフェン」を知らない人がいるかもしれませんので人物紹介です。

オーフェン・・・本命:キリマンシェロ  昔、大陸黒魔術の最高峰《牙の塔》で上級魔術師だったが、5年前に起こったある事件で《塔》から飛び出し姉を探している。

コギー・・・本名:コンスタンス・マギー  トトカンタ市で治安警察官に勤めていて三等官の位に就いている。オーフェンとの関係は、ボルカン兄弟の逮捕の時に協力してもらい、それ以降彼の力に頼るようになった。

キース・・・本名:キース・ロイヤル  マギー家の執事を務めている魔術師で最初のころはオーフェンと魔術が互角であったが最近は使わない。

マジク・・・本名:マジク・リン  オーフェンが泊まっている宿の主、バックアップ・リンの息子。マジクは無謀編ではあまり登場しないがはくれ旅編だとレギュラーで、オーフェンの弟子である。

ボルカン・・・本名:ボルカノ・ボルカン  マスマテュリアに住む地人族でオーフェンに金を借り、返済できない為オーフェンを敵視している。

ドーチン・・・本名:ドーチン  同じくマスマテュリアに住む地人族でボルカンが借りたお金のせいで、オーフェンにいつも攻撃されている。

こんな所でしょうか?
さて、後編は戦闘が有ったりしちゃったりするのでお楽しみに!
それでは、また後編で逢いましょう!

2003年11月23日 作アキト