ここはいったいどこなんだ?(後編)




番外編 ここはいったいどこなんだ?(後編)

「オーフェン、どうしちゃったの?そんな顔して」
コギーは机の上で虚空を眺めるオーフェンに話しかけた。
「いやな、この世の中には不思議なことがあんだな〜と、思いふけっていただけさ」
「そうですか、それもたまには良いですね。黒魔術士殿、ちなみに私は ちゃんと精霊を召喚したわけですし、怒らないで下さいよ?」
「うっせぇぇぇぇ!だいたい精霊は精霊でも異世界で、しかも三人+普通の人間一人・・・・お前、はっきり言うが、自覚して無いだろ、そこんとこ」
オーフェンはため息をついて、再び虚空を眺め始めた。
「ところで、オーフェン」
「なんだ?」
「その4人は何処にいるわけ?」
「ああ、あいつらは、何か試練をするとか何とか言って出かけちまったぞ」
「試練?」
コギーは試練という言葉を聞き首をかしげながら考えていた。
「まぁ、考えたってどうにもならんだろ。さて、俺も散歩に・・・・・」
ズドォォ・・・・ン!
「なんだ!?この地響きは!」
ズドォォ・・・ン!
ズドォォ・・ン!
「近づいてくる!?」
オーフェンはいすを蹴飛ばすように立ち上がり、そのまま出口から外に出た。
後ろからコギーが出てくるのが気配で分かったが、オーフェンはその場で放心した。
「な・・・・なんだありゃ・・・・」
オーフェンの見たその光景とは、遠くから走ってくる太助に向かって、でかくなった
空き缶や竜みたいな物が飛んできていた。
「おっおおおオーフェン、あっあれ何?」
「ンなもん知るかっ!」
太助はそのままこちらに向かって走ってきて、宿の前につくと空き缶は小さくなり竜は姿を消した。
「あれ、オーフェンさんにコギーさん、どうしたんですか?」
太助はこちらを見て放心している二人に問いかけた。
「たっ太助、いっ今の何なんだ?」
「今の?」
首をかしげ太助は不思議そうに聞き返す。
「だから、今の空き缶やら竜やらだよ」
それを聞き太助は「ああ!」といって手をポンとついた。
「今のですか?今のがさっきオーフェンさんに言った『試練』です」
「今のが?それよりどうやってあんな風に缶とか大きくしたんだ?」
「それならキリュウと飛欄の能力で・・・」
太助はいつの間にか現れたキリュウたちの方を眺めて言った。
「能力?精霊のか?」
オーフェンは相変わらず不思議そうに聞き返していた。
ちなみのコギーは後ろで首をかしげ「能力ってなーに?」とか呟いている。
「私たちの能力は、シャオさんとは違って、キリュウさんは物を大きくしたり小さくしたり出来るんです。私は風を操る能力ですね、使い方によれば先程のように竜などを作り出せます」
オーフェンは下を向きながら少し考え聞いた。
「大きくしたり小さく・・・・そっちの世界じゃあ当たり前みたいなもんなのか?」
太助は、まさかという顔をして答えた。
「そんなことは無いですよ。偶然って言うか、俺の親父が世界中を旅してて何故だか知らないけど毎回精霊具とかを送ってくるんですよ。
ここまで精霊具を探し当てて送ってくるとなると有る意味天才ですね・・・・・」
「いや、そりゃー天才超えてんだろっ。しかし、毎回?お前ン家には何人いるんだ?」
オーフェンは呻き半眼で聞き返した。
「この三人と元の世界にもう一人います。しかし、親父の奴どうしてこんなに送ってくるかなぁー。まっ楽しいからいいんですけどね」
太助は笑いながら答えた。それを見てオーフェンは「そうだな」と頷きながらやぞのなかに入っていった。

3時間後 広場

太助たちは、オーフェンが散歩に行くというので、
「俺たちも暇だし付いていっていいですか?」
と聞き、OKを出してくれたので、一緒に散歩していた。
「しっかし、あれだな。お前たち、災難だったな」
オーフェンは、少し気の毒そうに話しかけてきた。
「そんなこと無いですよ。俺たちの世界のほかに、こんな世界があるなんて知りませんでしたし、いい経験でしょ?」
「まっ、考え次第ではそうなるな」
頷き、再び歩き出すと、目の前に黒い人影が現れる。
「おい!金貸し魔術士っ!今日こそこのボルカノ・ボルカン様が貴様のような環境に悪い、ええーと、なんだっけ・・・そうだっ!貴様のような環境に悪いダニ野郎は、掃除機で吸い殺してやるっ!」
隣にいる弟、ドーチンが諦めたように呻いた。
「最後の環境に悪いダニというのは同意しかねるよ、兄さん」
「なにをいうかっ!コイツのような極悪非道な奴はダニで十分だっ!」
ボルカンはオーフェンを指差しながら叫ぶ。
「ほっほぉー、てめェボルカン、いつからお前そんなに偉くなったんだ?」
「すっすみませんでした、オーフェン様っ!ですからその頭を握りつぶすようにしている手をどけてくださいっ!」
オーフェンは「それでいい」と呟き、離してやると、
「くっくっく、このボルカノ・ボルカン様を痛めつけるとはいい度胸だっ!
今日は、強力な助っ人たちを呼んでいるのだっ!皆さーん出てきてください!」
「なにっ!?」
ボルカンが叫ぶと、オーフェンたちを囲むように複数の人々が現れた。
「こいつらはっ!ドラゴン信仰者!?」
「ドラゴン信仰者?一体彼らはなんなんだ?オーフェン殿」
キリュウが周り囲んでいる信仰者たちをにらめつけながら聞いた。
「『ドラゴン信仰者』奴等はこの大陸に住むドラゴン種族を崇高し。そして、人間の魔術士を忌み嫌い、敵対している連中だっ!」
それを合図にするかのように、ドラゴン信仰者たちは一気に駆けてきた。
「ちぃ!お前らっ!伏せろー!『我は呼ぶ破裂の姉妹』!!」
伏せていた太助たちの上を何か見えないものが飛んで行き、爆発する。
ドカカカカカァァァーン!
連続して破裂するように広がる爆発で数人の信仰者は気絶するが、爆発の中残った信仰者が手にしていたのは、
「のっ天人の遺産っ!?やばい!お前らっ!逃げろ・・・・」
オーフェンは太助たちに叫びかけるが一人の信仰者が持っている剣を振ると、細かい針のようなものが、100本ほど飛んでくる。
「っ!風障壁!シャオさんキリュウさん、援護をっ!」
「来々、車騎!」
「万象大乱!」
オーフェンは、キリュウが相手が持つ剣を針ほどに小さくし、そしてシャオの出した星神が相手を気絶させるのを見て、呟く。
「ふっ、どうやら心配は無用のようだな!」
オーフェンは残る信仰者たちに向かい魔術を放つ!
「我は放つ光の白刃!!」

オーフェンの放った光熱波は残った信仰者を打ち倒す。
シャオたちも他の信仰者たちを倒し、全員気絶させると、オーフェンは 太助たちの元へと走っていった。
「お前ら、大丈夫か?」
太助は、少し驚いたみたいで少し放心していたが、すぐに答えを返してきた。
「えっええ、シャオたちが居たからなんとか」
「そうか、ならいいんだが、すまなかったな、俺のせいで巻き込んじまって」
「そんなこと無いですよ、でも何で魔術士だからって差別されるんですか?」
オーフェンは、頷き答える。
「このキエサルヒマ大陸には、ドラゴン種族という生き物が存在するんだ。
彼らの内、ウィールドドラゴン・ノルニルは、昔人間種族と交わり人間の魔術士が生まれたんだが。
彼らは急に人間の魔術士を憎むようになった。そして魔術師ではない 人間をそそのかし『魔術士狩り』を行なった。
ドラゴン種族を崇高する信仰者はそれを理由に魔術師を忌み嫌い、さっきのように魔術士を襲うようになったんだ」
オーフェンは、まるで紙に書いた文章を読むようにすらすらと答えてきた。
「そっそんな事があったなんて・・・・」
太助たちは、悲しそうな顔をして暗くなっていた。
「まぁ、今となっちゃぁ、魔術士狩りなんてしなくなったがな。それよりだ・・・・」
オーフェンは、後ろでこそこそと逃げようとしている地人兄弟の方向に向き直る。
ボルカンとドーチンは、ビクッ!と振るえゆっくりとこちらを向いてくる。
「あのっ・・・そのぉー」
ボルカンが青い顔をして何か言おうとするが、かまわずオーフェンは言った。
「お前ら、こんなことしてただで済むと思ってるんじゃねぇーだろうなっ!」
半眼で睨みつけ、右腕を掲げると、ドーチンが恐る恐る言う。
「あっあの、今回のこととか全部兄さんがやったことで、僕にはまったく関係ない・・・って聞いてないか・・・・」
ドーチンは目に少し涙を浮かべて諦めると、同時にオーフェンが叫ぶ! 「我は放つ光の白刃っ!」

夕方 バックアップの宿

コギーが退屈そうにして机に伏せていると、宿のドアが開きオーフェンたちが疲れた様子で入ってきた。
「オーフェン、お帰り〜。どうしての?そんな疲れたような顔して」
オーフェンは彼女の座っているテーブルの合い席に座った。
太助たちは、適当にそこら辺のいすに座って「疲れたぁー」などと呟いている。
「まぁ、色々あったんだよ。あの福ダヌキたちのせいで、な」
オーフェンはため息をつき半眼で聞き返してくる。
「ンで、お前は一日中ここにいたのか?」
コギーが、辛そうな顔をして言った。
「そうなのよっ!マジク君は、なんか友達の家に泊まるって言うし。バックアップさんは話をしても続かないし!もう地獄だったわっ!」
あきれた顔をしてオーフェンは言い放つ。
「っていうか、仕事しろよお前・・・・」
「えーっ!だってオーフェン、太助君たちと散歩行っちゃうし、それじゃあ私が楽できないじゃないっ!」
「お前はもっと自分で仕事しろぉぉぉ!!」
オーフェンは、何故かテーブルに置いてあった、手紙を彼女の顔に投げつけた。
「って、手紙?」
オーフェンは、その投げつけた手紙を見て聞く。
「なぁコギー、この手紙お前のもんか?」
コギーは、「違うわよ」と言ってこちらに手紙を手渡した。
ちなみに、太助たちは、今日の騒ぎについて「ホントに疲れたぁー」と語っていた。
「えっと、何々?オーフェン様宛、送り主は・・・・チャイルドマン!?」
オーフェンは、立ち上がり叫ぶ。さすがに太助たちも驚いたのか、オーフェンの方を凝視して聞く。
「どっどうしたんですか?オーフェンさん」
「ああ、チャイルドマン・・・先生から手紙の返事が来たんだ」
オーフェンの返事を聞き、太助たちは少し顔を明るくした。
「それじゃあ、帰る方法が!?」 頷き彼が答える。 「ああ、たぶんな。ちょっと待て・・・・『我ネットワークで調べた結果は・・・・』
なにぃぃぃぃ!?」
「どっどうしました!?オーフェンさん!」
「『結果は召喚陣の前で術者が、「お疲れ様でしたぁー」と言うこと』だとぉぉ!」
オーフェンはいつの間にか近くにいるキースの方へ走っていき、胸倉を掴み言う。
「キィィィィス!!」
「何でしょうか。黒魔術士殿」
「てめェ!何でこんなに返し方が簡単なんだよ!?」
「さぁ?しかし、私的に分かっていましたが、帰し方」
平然とした顔をして言ってくるキースにオーフェンは叫ぶ。
「だったら何でもっと早く言わねーンだよっ!」
「なぜかというと、黒魔術士殿。教えろとお言いにならなかったではないですか」
オーフェンは、キースをゆらゆらと揺さぶりながら言う。
「ふざけるなっ!常識ってモンを知りやがれっ!」
「私としては、心得ているはずなのですが」
「なお悪いっ!!!」
オーフェンはキースに強烈な一撃を与え吹き飛ばす。
「そうですか・・・・次からは気をつけましょう」
「なぁ!?」
飛ばされたキースはいつの間にか、丸太にかわっていて当のキースは、隣に立っていた。
「どうやったんだよ今の・・・・」
「黒魔術士殿、時に『変わり身の術』を知ってますか?」
オーフェンは、適当に右手を振って言った。
「知るかそんなもん・・・まぁ、いいさ、さっさと準備しやがれ!」
「はい」
キースは、足元に召喚陣を広げ始めた。
「よかったな、太助。これで帰れるな」
オーフェンは太助に話しかけると、太助は笑って言った。
「はいっ!」
「しっかし、こんなこともあるのねぇー」
コギーはオーフェンに言う。
「そだな。あながち、簡単に起こるもんなのかもな」
「あまり起こりすぎても困るんですけどね」
太助が言うと皆で笑った。
「黒魔術士殿、準備は終わりましたよ」
「そうか、んじゃ太助、用意しな」
太助は頷くと召喚陣の方へ歩いていく。
「ありがとうございました、オーフェンさん」
「いんや、こっちこそキースの奴が起こしちまった事だしな。気にすんな」
「でも、楽しかったです。他の世界に来れて」
オーフェンは頷いて答えた。
「そうだな、たまにはいいかもな。そう言うのも」
「そうよねー。たまには起こんないと退屈だし」
「だから、てめェは仕事しろって言うのに・・・・・まぁいい、用意は良いか?お前ら」
「はい、お願いします」
頷きキースに言う。
「よし、キース頼んだぞ」
「分かりました、黒魔術士殿」
キースは、召喚陣に前したように構え、言う。
「・・・・お疲れ様でしたぁー」
すると、天井に再び漆黒の穴が広がり始めた。
「オーフェンさん、本当にありがとうございました!」
太助は、最後に言うと穴に吸い込まれ消えていった。
「行っちまったか。これで今回の騒ぎもお終いだな」
「そうね。でも、よかったじゃない。彼らに会えて」
「だな・・・・・又会えるといいかもな」
「そうね・・・・」

鶴ヶ丘市 七梨家

バタン 
「ただいまぁー、はぁ〜ルーアン疲れたー。シャオリン、ご飯!」
ルーアンは、用事を済ませて、家に帰ってきた。
「シャオリーン、ってあら?」
ルーアンは、リビングに行くが誰も居なかった。
「へんねー。ちゃんとテーブルに食器置いてあるのに・・・・どこ行ったのかしら?」
玄関には靴があった、となると二階にいるか、あるいは突然消えたか・・・・
この二つしか理由が考えられないと思ったルーアンは、取り合えず二階に行こうとすると、彼女の上に漆黒の穴が現れた。
「えっ?」
「きゃあああああああ!」
「うわあああああああ!」
「又ですかぁぁぁぁ!?」
「試練だ、耐えられよぉぉぉ!」
穴からは、いなかった太助たちがいきなり飛び出てきた。
「つまりは、後者って事・・・?」
ドスーン!
「ぐえ!」
「きゃあー!」
「もうやだっ!」
「試練だっ!」
穴から出てきた太助たちは見事にルーアンを下敷きにした。
「あんたたち〜!さっさと私の上からどきなさぁーい!!」
「えっ!?ル―アン?」
太助が下を見てみると、ルーアンが体をわななかせている。
「きゃー、すみませんルーアンさん!」
「すまなかった・・・」
「ごめん・・・・・」
「すみませんでした・・・・」
ルーアンは、ゆっくり立ち上がると、こっちを見返していった。
「まぁいいわ。で?あんたら何処行ってたわけ?いきなり天井から現れて」
「ああ、それなら後で私が説明します・・・・・ってあれ?」
飛欄が時計を見て間の抜けた声で言った。
「ホントだ、あれからまだ1時間しかたってない?」
「こっちとあちらでは時の流れるスピードが違うんじゃないですか?」
「そうだな、それしか考えられないか」
太助たちが、呟いているのを聞いてルーアンが叫ぶ
「そんなこと良いからさっさと朝ごはん頂戴よー!」
「それじゃあ、今仕度しますね」
シャオは、ルーアンに言われ台所に入っていった。
「んー、こっちは平和だな〜」
「そうだな、というよりオーフェン殿の世界がにぎやかなのでは?」
「だな」
太助は苦笑いして席に着く。
「また行きたいかもな・・・・」
「そうですね・・・・」
こうして、七梨家で起こった不思議な出来事は終わり。
また七梨家の一日が始まった・・・・・

あとがき

なんか、前後編であとがきって言うのもおかしいけど。
どうもアキトですっ!
今回のクロスオーバー、いかがだったでしょうか?
私は始めての試みだったので、正直うまいのか下手なのか分かりません(苦笑
『魔術士オーフェン』は私的にかなり気に入っていて、「あれ?月天と合うかも・・・」
と思いやっちゃいました(爆笑
では今回出たチャイルドマンについて教えます。

チャイルドマン・・・本名:チャイルドマン・パウダーフィールド  
《牙の塔》で教師をしていて、大陸で最も強い暗殺者と言われている。
オーフェンとの関係は、簡単に言えば、師弟関係である。

まっ、こんな所でしょう。
うう、逃げ道が終わってしまった・・・・
では、又本編で逢いましょう!
 
2003年12月1日アキト作