新しい日々



太助の厄日



第2話 太助の厄日

 飛欄が来た次の朝、リビングで寝不足の俺を叩き起こしてくれたのは 1つの爆音だった。

ズカーン

「なんだ!?」
爆音に驚いて俺が聞いたのはやはりこの二人の声だった。
「やりますねルーアンさん!」
「まぁ〜ね!あんたもそこそこいい線いってるじゃないの」
「そりゃそうですよ、どこかのバカと一緒にしないで下さい。」
「なんですって!誰がバカよ!」
「誰もルーアンさんのことなんて言ってませんよ〜だ!」
「その減らず口、次で終わらせてやるわ!」
「それはこっちのセリフです!」
七梨家が次々に破壊されていく中二人のケンカを止めたのはやはり太助の一声だった。

「やめろ〜!!」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あっあんたのせいでたー様が怒っちゃったじゃないのよ!」
「私のせいですか!?」
「そーよあんたのせいよ!」
「聞き捨てなりませんねその言葉!大体ルーアンさんのせいじゃないですか!」
「あんたのせいよ!」
「ルーアンさんのせいです!」
「やめろって言うのが聞こえないのか!」 たかし顔負けの大声で朝の大ゲンカは終わった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・なあ主殿私が寝てる間何が起こったんだ?」
あまりにも気まずいリビングで顔に汗を浮かべながらキリュウが言った。
「ん?ああ昨日はキリュウ昼間から爆睡してたから知らないのか」
「昨日は試練を考えていて全然寝てなかったからな」
「えっとこいつは・・・・」
「自分で言います主様。はじめましてキリュウさん。私は導幸風天 飛欄、主様を幸せに導く為にあの風陣槍からやってきました」
「そうか、では飛欄殿、これからよろしく頼む」
「いえ、こちらこそ」
「しかし、使命が主殿に幸せを導くとはルーアン殿の使命と似ているな」

し〜ん

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・(なにかまずいことを言ったのか?)」
汗をかきながらキリュウはあせった顔をしていた。
「・・・いやだなぁ〜キリュウさん、ルーアンさんと似てるわけないじゃないですか〜」
「そうよキリュウ、こいつと似てるなんて天地がひっくり返ってもありえないわよ」
「なんですって〜!」
「なによ〜!」
「あ〜!!二人とも落ち着け〜!!」
「止めないで下さい主様!」
「たー様は黙ってて!」
「もう怒った!決着をつけましょう!」
「望むところよ!」
二人は庭にでた。
「なんでケンカになるんだ〜!!」
「太助様お気を確かに!」
「私が悪いんだろうか・・・・(汗)」
キリュウがさらにあせった顔をした。
「はぁ親父の奴、俺に恨みがあるんだったら言葉で言えよ・・・・・」
「太助様のお父様はけして恨みなどないと思いますわ」
「悪気があったら今頃親父を殴る為に旅に出てるよ・・・・・・」
言葉はその一言で途絶えた。
場所は変わって庭
最初にルーアンが叫んだ。
「陽天心招来!!」
庭の隅に置いてあった某仏像が歩いてきた。
「そんなの効きませんよ?」
「それはやってみないと分かんないわよ!」
陽天心のかかった仏像が飛欄に体当たりを仕掛けた。
「そんな攻撃かわすまでもないです!」
「えっ!?」
いきなり仏像がいきなり砕け散った。その破片が丁度リビングから庭に出てきた太助に向かって飛んでいった。
「太助様危ない!」
「えっ?うわぁ〜!!」
「しまった!」
飛欄が何か唱え始めた。
「『我に忠実なる天界の風よ我が命によりて彼の者を守れ!』天風壁!!」
破片が太助に当たる10cmくらい手前でいきなり跳ね返った。
「ふぅ危なかった・・・・・」
「なにやってんのよ!たーさまが怪我する所だったでしょう!?」
「なに言ってるんですか!今はそれどころじゃないでしょう!?大丈夫ですか主様!」 
「ああ、一体何をしたんだ?」
「風で障壁を作ったんです。厚さ3cmですが大砲の弾ですら無効化できます」
ルーアンをのぞいて一同「へぇ〜」と感心したように言った。
「まぁそれは良いとして、二人ともケンカはやめろよ。俺が主である限り二人には仲良くしてもらう!」
「でもたー様!」
「分かったな!」
「は〜い・・・」
「分かりました・・・・」
「よし!それじゃあ仲直りの握手だ!」
二人は顔を引きつりながら握手した。
「すみませんでした」
「悪かったわね」
「これで一件落着だな!」
太助は仲直りしたと思ってシャオたちと一緒に拍手をしていたが
二人の握り合う手が妙に震えているのに気がつかなかった。

 その日の夜、何処からだか知らないが情報を入手した
たかし達が飛欄の歓迎会をしようと家に押しかけてきた。
「よっしゃー!それじゃあ皆!俺の歌を聞けー!!」
「やめてくださいよ〜野村先輩!」
「ルーアン先生どうしたんですか!?」
「うるさいわよ遠藤君!ガツガツガツ」
「先生なんでヤケ食いしてるんですか?ルーアン先生ぇ〜」
「はじめまして飛欄さん、私は宮内出雲と申します。」
「はじめまして宮内さん」
「今日という日は素晴らしい日ですね」
「えっ?何でですか?」
「貴方に会えましたから・・・・」
「?」
「いやいや、そんな分からなそうな顔しなくても・・・(まずい、この人はシャオさん並だ!)」
「はぁ」
「まぁそれでこそ落としがいがあるってもんですよ!」
そんな出雲の言葉を聞いて正直「またやってるよ」と思った。
「はぁ・・・・」
「どうしました太助様」
「ああシャオ、なんでこう騒ぎ事は家でやるんだろうとか考えてたんだ」
「そう言えば何ででしょうね?」
「こらそこ〜!いちゃついてんじゃなぇ〜!!」
「えっ!?あ〜本当だ〜!」
「太助君!シャオさんをかけて勝負です!」
「何っ!?抜け駆けはずるいぞ出雲!」
「あ〜!うるせぇ〜!!頼むから静かにしてくれ〜!」
こうして時が過ぎ飛欄への質問タイムになった。
「はいはい!じゃあ俺から質問していいかな?」
「いいですよ野村さん」
「え〜と飛欄ちゃんの趣味はなんだ?」
「趣味ですか?そうですねぇ〜・・・しいて言うなら風の声を聞くことですね」
「風の声?」
「そうです。私は風の声が聞くことが出来るんです」
「へ〜」
「じゃあ次は僕が」
「なんでしょう遠藤君」
「飛欄ちゃんの能力は何ですか?」
「あっ遠藤先輩、それ私が聞こうとしてたのに〜!」
「まあまあ、私の能力は風を自在に操り、風を使って攻撃したり・傷を癒したりできるわ」
「そうなんだぁ〜」
「他に誰か質問は?」
「私も質問していいですか?」
「ええどうぞ宮内さん」
「好きな食べ物は?」
「好きな食べ物ですか・・・甘い物なら何でも好きです。あっ、でも辛い物は嫌いです」
「分かりました。え〜と飛欄さんの好きな食べ物は・・・・」
それを聞いた後、出雲は表紙にマル秘と書かれているノートになに書き込んでいた。
「もう誰もいませんか?」
「ああ」
周りの反応を見て俺は答えた。
「それでは、終わりにします」
「ん?もうこんな時間か」
時計を見てたかしが言った。針はちょうど11時を指していた。
「じゃあ、そろそろ俺は帰るわ」
「じゃあ私も〜。それじゃあ七梨先輩、お邪魔しました〜」
「待ってよたかし君、ルーアン先生また学校で」
「シャオ、私も帰るよ」
「ええ、翔子さんお気をつけて」
「それじゃあな〜七梨〜」
「おう気をつけて帰れよ〜」
「さて、私も帰りますか。それじゃあ飛欄さんまたのちほど」
「気をつけてくださいね」
それぞれが自分の家に帰って行った。
「ふぅ〜疲れた〜」
「大丈夫ですか?太助様」
「ああ少し疲れただけだ」
「それじゃあ早くお休みになったほうがいいですね」
「ああそうするよ」
俺はそう言って自分の部屋に向かって行った。
ちなみに飛欄の部屋は昼間家を直すのと一緒にシャオに頼んで作ってもらった。
「あ〜さっさと寝るか〜」
俺は布団に寝そべって言った。
「おやすみ〜・・・・・」
コンコン
「主様起きてますか?」
「ん?飛欄か?」
「実は話があるんです」
「なんだ?まあ入れよ」
「それじゃあ失礼します」
ガチャ
「で?何の話だ?」
「はい、いきなりですが、主様にとっての幸せとは何ですか?」
「はっ?」
「私の使命は主様を幸せに導くことです。よって主様の幸せとは何か 知っておかなくてはならないのです」
「う〜ん、俺にとっての幸せか・・・実はさ、俺はシャオを守護月天のさだめから解き放ちたいんだ」
「・・・なぜですか?」
俺はまじめな顔で言った。 「・・・俺はシャオが好きだ。だけどシャオが守護月天である限り必ず別れは来る・・・
だから俺はシャオをさだめから解き放ち一緒に暮らしたい・・・
それが俺にとっての幸せかな」
「・・・・・・分かりました。」
「うん・・・」
「それじゃあお休みなさい」
「ああ、お休み」
ガチャリ
「・・・ふぅ、いきなり聞かれるから驚いちまったな・・・・
俺にとっての幸せ、か・・・・・」
俺はさっきの自分の言葉を思い出しながら深い眠りに入っていった・・・・

「う〜ん、こんなに難しいな願いは初めてです・・・・どうしよう」
私は主様の願いを聞いて考えながら一階のリビングを目指し歩いていた。
「う〜ん・・・・」
「なんでそんなに難しそうな顔をしてるんだ?」
「あっ、キリュウさん・・・・実は」

「そうか主殿はそんな事を」
キリュウさんは微笑しながら言った。
「どうしたんですか?」
「いや、私の時も同じような願いだったからな」
「そうなんですか?」
「ああ」
「それでキリュウさんは何をしてるんですか?」
「今まで通りただ試練を与えてるだけだ」
「そうですか・・・・・次から一緒に試練を出してもいいですか?」
「別に良いが何故いきなり」
「・・・キリュウさんと協力することで結果的には主様を幸せに出来ると思ったからです」
「そうか・・・・」
「いいですか?」
「ああ、じゃあ明日からよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします」

あとがき

前回が短かったので今回は長くしてみました。
キリュウがまだ出番が少ないです。(苦笑
次回からは多めに出せるといいですがキリュウファンまたはシャオファンの方
すみません!それでは第3話をお楽しみに!

2003年5月28日アキト作