危険な試練(2)



第六話 危険な試練(2)

 「それでは第二の試練をはじめる」
「第二の試練は先ほど説明したように気配を消す試練です。 この試練は先ほどの試練とは違いとても難しいですから常に気を抜かないで下さい」
「ああ、気をつけるよ」
「それでは始めますが少し待ってください」
そう言うと飛欄は縮めといた風陣槍を大きくした。
「へ〜、飛欄の聖具は小さく出来るんだ〜」
「はい、もともとこの風陣槍は形などありませんから」
「形がないってどういう事だ?」
「それは後で説明しますよ。さて、そろそろ話を戻しましょう」
飛欄は取り出した風陣槍を掲げて言った。
「『風によって形になりし風陣槍よ、今その槍の形を弓の型風陣弓に変えよ』錬風陣!!」
ブォウ!
飛欄がそう言うと、いきなり風陣槍が空に浮び槍の形から弓の形に変っていった。
「ふう、これでよし。さあ始めましょうか!」
「ちょっと待て、何でいきなり槍から弓になるんだ?」
「それは先ほど言ったように後で説明します」
「む〜そうか。分かった気になるけど後で説明してくれるんなら良いや」
「それでは、飛欄殿よろしく頼む」
「はい、キリュウさんは休んでいてください」
「え?キリュウは一緒に試練をしないのか?」
「ああ、この様な試練は私の能力では出来ないからな」
「そうか、分かった休んでいてくれ」
「そうさせてもらう」
「それでは始める前に少しばかり注意点があるので説明しますがいいですか?」
「ああ」
「この試練はこの風陣弓を使い行ないます。今回の試練は気配を完全に消すことが目的です」
「それは知ってる」
「ですから、この風陣弓で矢を放ちそれに私の力で気配を追う風竜を纏わせます」
「ちょい待ち!」
「何ですか?」
「風竜ってお前俺を殺す気か?」
「いえ、大丈夫です。当たっても大丈夫なように出力を最小にしておきました。
あたっても先ほどの風玉の3倍くらいの威力ですから、死にはしませんよ」
「3倍って・・」
「主殿、試練だ耐えられよ」
「・・・分かった、それじゃあ始めるか!」
「はい」
その声を合図に飛欄は弓を構えて言った。
「それでは行きますよ!
『天界に住む風竜よ我が命によりて我の放つ矢に宿れ』風竜矢!!」
ビシュン・・・・ブワァ!
「なんだ!?矢がいきなり竜に!」
「気を抜かないで下さい主様!」
「くっ!早い!うわ!」
「主様その矢はかわしても追いかけていきますよ!」
「うわ〜!追いつかれる〜!」
「頑張ってください太助様〜!」
「主殿、気配を消すのを忘れるな!」
「サンキュウ二人とも!(とは言ったものの気配の消し方なんてわかんね〜よ!)」
ヒュウン!
「え?うわぁ〜!」
ドカァ!
「太助様!」
「いってえ〜!!くっそ〜次は必ず気配を消してやる!」
「口で言ってるうちは気配は消せませんよ。
それより一度シャオさんに見てもらったほうが良いんじゃないですか?」
「ああ、そうだな」
俺は一時試練を中止しシャオのほうに歩いていった。
「太助様、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だとは思うんだけど一応見てもらっていいかな?」
「・・・・わかりました」
「シャオ、どうしたんだ?」
「いえ、何でも有りません。来々、長沙!」
ポン
「長沙、太助様の怪我を治療してもらっていいですか?」
長沙は「はい」と言って太助の体の傷を治し始めた。
「それにしても気配を消せなんてな〜、読むのはそう難しくなかったのにな〜」
「太助様お気をつけて・・・・」
「おう、じゃあ行ってくるわ!次は成功するから心配するなよ!」
「・・・はい!」
シャオは少しためらったような顔をしたが、笑顔で太助を見送った。
「さあ飛欄、試練を再開するぞ」
「分かっています。しかし主様、ただがむしゃらに気配を消そうと思ってもけして消せはしません。
消そうと思うのではなく先ほどの試練のように感覚でどうやれば消せるのかを感じ取るしか気配を消せるようになる方法は分かりません」
「感覚で・・・・感じ取る・・・」
「それでは試練を再開します」
「ああ、今の助言で何か掴めたような気がするんだ・・・」
飛欄は少し微笑んで言った。
「そうですか。さて始めますよ!風竜矢!」
ビシュン・・・・ブワァ!
先ほどと同じように飛欄の放った矢は風を纏った竜の形になっていった。
「ただがむしゃらではなく・・・・・感覚で・・感じ取る」
太助がつぶやいた時にほんの一瞬矢の動きが鈍くなった。
「!一瞬だけどスピードが遅くなった!これなら・・・・行ける!」
「主様!油断は禁物ですよ!(しかし、なんてスピードで飲み込むんでいくのでしょう。
これほどの成長力を秘めているなんて・・・さすが、主様!)」
「感じるんだ気配の消し方を・・・」
太助は目をつぶりその場で立ち止まった。
「太助様!?」
「・・・・・自然の流れに逆らわず・・・自分の周りだけ流れを・・・消す!」
ブォン・・・・・ヒュウー・・・・
いきなり矢が減速し始めて風が緩んでいく・・・そして矢が太助の数センチ前で地面に落ちた。
「ふう〜」
太助の緊張の糸が切れたらしくすの場にへたり込んだ。
「やっとできた〜・・・・」
「見事です!第二の試練・気配の消し方を完璧に取得しましたね!
しかし、日々その感じを忘れないで下さいよ?
少し経つとその感覚を思い出すのに時間がかかりますから」
「ああ、気をつけるよ。もうこんな難しいことしたくないしな」
太助は苦笑しながら言った。
「そんなことを言ってると明日の第三の試練をクリアできませんよ?」
「うへ〜分かった日々心がけておくよ」
「そうしてください」
「・・・・よし!家に帰ろうぜ!」
「そうですね」
太助達は今日の試練を終えて家に向かって帰っていった。
「あっ、そういえば飛欄」
「何ですか主様」
「さっき言ってた風陣槍には形がないってどういうことだ?」
「ああ、そのことですか。実は私の聖具はシャオさんやキリュウさん(ルーアン)とはちがってもともとの原型がなく風の力によって保っているんです」
「原型がないって?」
「はい、私にも良く分からないのですがこの風陣槍は風の力により圧縮し今の形を保ってるみたいなんです。
だから先ほどのようにさらに圧縮すれば小さくなるし、圧縮の力を部分的に変えれば弓のような形や剣のような形にも出来るんです」
「ふ〜んそうなんだ」
「お分かりいただけましたか?」
「ああ良く分かったよ、でもその風の力が解放されたらどうなるんだ?」
「それは私にもわかりませんが、恐らく聖具に宿る力が解放され、エネルギーが連鎖的爆発を起こし半径1000kmは吹っ飛ぶでしょう」
「はっ、半径1000km!?」
「はい、ですから常に力はセーブしなくてはならないんです」
「そうなんだ〜(要するに核爆弾よりも危険って事じゃん・・・)」
「さあ、そろそろ家に着きますよ」
「えっ?もうそんなに時間がたったのか!?」
太助は少し大げさだったかな〜と思って少し顔を赤くした。
「分からなかったんですか?」
「ああ・・・」
「いい事だ主殿」
「・・・えっ?それっていいことなのか?」
「ああ、話を真面目に聞いていたから気が付かなかったのだろう?」
「話を真面目に聞くことはいい事ですわ」
「そうか〜まっ、そんなもんか」
「そうですね」
「主殿、飛欄殿もう付くぞ。準備してくれ」
「ああ、わかった」
そして家に着き太助はよほど疲れていたのか風呂に入った後すぐに部屋に戻り寝てしまった。
「・・・明日はもっときついんだろうな〜」
そんなことお考えながら・・・・

あとがき
 
ラストの方でかなり大げさすぎると思いましたが
そこら辺は作者の都合によりお許し下さい。
なるべくルーアンの出番作りたいのですが作れません・・・・・
それでは、また第7話「危険な試練(3)」で逢いましょう!
 
2003年7月26日アキト作