是ガ世界 〜プロローグ〜




この世界は、孤立した世界が故にそのバランスを均等に保つことができる。
しかし、世界は一にして全で有るが為に、“それ”に対応することができなかった。
そう、完全に均等なバランスを破壊しうる者が現れたのだ・・・・・・
――――世界はその者の呼称を“ひび割れし者”と名付けた。

“ひび割れし者”は何処からか、行き成り現れた。唯一分かることは、その力と外世界から来たと言う事。
その驚くべき力は、世界を侵食する力・・・・・・
だが、一にして全で有る世界にとって、この世界の一たる物質で有るのならばどのような存在でも消滅させる事など容易かっただろう。
だが、外世界の一たる物質で有るが故に“ひび割れし者”の侵食を止める事は出来なかった。

――――だから、世界は手の付けようも無く自らの崩壊を見届けるしかなかった。

そして、一にして全で有る世界が滅びるという事は、この世界に生存する一たる生物全ても共に滅びる事を示す。
一である生物の中でも飛びぬけて知能が高く、高度な技術を持つ人類・・・・・・
彼らは、この事実を知ったらどういう行動に出るのだろう。
“ひび割れし者”と戦うか?
否、世界を浸食する力を持つ外世界の一は、この世界の全と同意義。歯向かう事など意味を成さず、逆に絶望することになるだろう。

――――故に、彼らにはこの事を知らせないでおこう。

身勝手な思い。分かっている、だがせめても贖いに最期の時まで幸せに生きてほしい。
世界は、分身を作り出す。その役目は侵食された世界に関わった者の記憶の改ざん、痕跡の消去。

――――だがその20年後、世界は侵食を食い止める一つの可能性に出会う事になる・・・・・・