最大最後の試練!!



最大最後の試練!!




第1話 最大最後の試練!!
      
    ここは中国。とある山の洞窟の中。洞窟の中は薄暗く、道は険しく、入り口には『キケン!立ち入り禁止!!!』と、書いた看板があった。そんな危険な洞窟に今二人の少年少女が入っている。
そして入り口の前には、二人の女性が立って話しをしている。
「たー様、大丈夫かしら?」
一人の女性がふとつぶやく。表には出していないが、彼女は何もできない自分にを腹立たしく思っている。
自分の主を幸せにする、それが自分の役目であるにもかかわらず…。
「主殿の事だ。大丈夫だろう。それよりもシャオ殿が星神を使ってしまわないかどうかが私は心配だ」
もう一人がそう答える。こちら側はすこし年下に見える。彼女も内心穏やかではない。今自分の役目がちゃんと果たされているかどうかの答えが出ようとしているのだから。
「そうね…。どっちにしても私たちはただここで二人が帰ってくるのを待つしかないのよね」
そう、二人は待つ事しかできない。中に入っている二人が無事帰ってくるのを、ただじっと待つしか……。


 薄暗い洞窟の中、二人の少年少女はゆっくりと歩いていた。なぜこんなところにと端から見れば誰もが思うだろう。しかしいま周りには誰もいない。二人の行く手を阻むトラップ以外は。
そう、洞窟の中はトラップでいっぱいだった。入ってくるものすべてを容赦なく拒むのように。
そのトラップの中を少年は、少女をかばいながら進んでいるため無傷の少女とは反対に少年の服はボロボロ、体は傷だらけである。
「太助様、本当に大丈夫ですか?」
少女は少年に心配そうに尋ねました。
「大丈夫だってシャオ。この日の為にキリュウの試練をうけていたんから。心配するなって」
「はい」
と笑顔で答えたが、シャオはまだ不安だった。
今自分はただ守られるだけの存在に過ぎない。襲いかかってくるトラップをただ太助にかばってもらうことしかできない。
本来なら少女は逆の立場にいる。主である少年をその身をかえりみず守らなければならない。何千年と続いた終わりなき宿命。その宿命から少年は少女を解き放とうとしている。
何があっても少女は守る…、少年は洞窟に入る前にそう誓った。
そして再びその時がやってきた。
今度はいきなり石の針が降ってきた。
「あぶない!!」
とっさに太助はシャオを抱きかかえ、横に跳んだ。
『グサ!グサ!グサ!』
間一髪避けられたものの、次々と降ってくる。紙一重でかわしている太助とシャオ。
しかし、避けきれなかった一本が太助の足に刺さってしまい、
「ぐっ!」
太助はそのまま倒れてしまった。その間にも、容赦なく石の針は降ってくる。
「太助様ぁ!!」
とっさにシャオは支天輪をかまえた。
「来々塁へき…」
結界用の星神をだそうとしたが、
「シャオ!だめだ!!」
という、太助の声ではっとなって、星神をだすのをやめてしまった。
その間太助は、傷ついた足を引きずりながらも無事なほうの足で何とか難を逃れていた。


太助の足の手当てをしながらシャオはいった。
「もうやめましょう。これ以上やると、太助様の命に関わります!」
シャオは泣きかけていた。大好きな人が目の前で傷つくのをもう見ていられない。それが自分の為ならなおさらだ。
しかし、太助は言った。
「大丈夫。俺はシャオを置いて死んだりなんかしないよ。君を幸せにするまでは絶対にね。
それに、もう少しなんだ。もうすぐ君のつらい宿命から解放できるんだ」
そう、太助とシャオがこんな危険なところに来ているのにはわけがある。
シャオを守護月天の宿命から解き放つため、ここに来ている。以前からこの事を考えていた太助が、この方法を知ったのは昨日のことだった。



時はさかのぼり、昨日…
今は春休み。太助とシャオは二人で話をしていた。今七梨家は、この二人しかいない。
ルーアンは新学期の準備で学校へ、キリュウは朝からどっかにいってしまった。
二人は楽しそうに話をしている。とても幸せそうだ。そんな様子を支天輪の中で見ているものがいた。
南極寿星である。何やら厳しい顔付きである。それを見た虎賁は彼に話しかけた。
「まさか、また月天様を支天輪へ連れ戻そうと思ってるんじゃないだろうな?俺は反対だぜ!
もうあんなに悲しんでいる月天様はもう見たくない!!」
「そうでし!!」
いつの間にか離珠もいる。
「そんなことは儂だって同じじゃ!誰がシャオリン様を連れ戻すといった?まったく、はやとちりしおって」
「じゃあ、なんでそんな厳しい顔で二人をみているんだ?」
虎賁が尋ねると、
「考え事をしていたんじゃ。もう二人の中を切り裂くことなどできん。かといってこのままほっといたら小僧は年寄りになってしまう」
「どうするでしか?」
こんどは離珠が尋ねた。
「もう方法は一つしかない。シャオリン様を守護月天の使命から解放するしかない!!」
その言葉を聞いたとたん、離珠や虎賁はおろか、まわりにいた星神たちも大声をあげて驚いた。

「トントントントン」
台所からは聞きなれた音が聞こえてくる。シャオが夕食の準備をしている。太助はリビングで考え事をしていた。テーブルに置いてある支天輪を見つめながら。考え事の内容はシャオの事である。
「どうしたらシャオを守護月天の宿命から解放できるんだろうな…」
と、言いながら支天輪を手に取ると、いきなり支天輪が光りだした。そして、南極寿星がでてきた。
「じ、じーさん!?」
「ひさしぶりじゃな小僧。」
はじめは驚いていた太助だったが、すぐにはっとして、南極寿星にいった。
「まさか、シャオを連れ戻しに来たんじゃにだろな?」
「だとしたらどうする、小僧?」
太助の質問に挑発的に答える南極寿星。すると太助は、怒鳴るように言った。
「そんなことは絶対させない!たとえ星神全員と戦うことになっても、絶対にシャオは帰さない!!!」
その言葉を聞いて南極寿星はある事を決心した。いっぽうシャオは、太助の声に驚いて台所から顔をだした。
「どうしたんですか太助様?いきなり大声をだ……な、南極…寿星…」
南極寿星を見るなりシャオは青ざめた。また支天輪に戻される。そう思ったからだ。しかし南極寿星は言った。
「心配せずとも儂はシャオリン様を連れ戻しに来たのではありません。ただ、話があったので出てきました」
それを聞いて太助とシャオはとりあえず安心した。それから二人はソファーに座った。
そして、太助は言った。
「で、話って何?」
「うむ。その前に小僧、お主に聞きたい事がある。お主はシャオリン様を幸せにする自信はあるか?」
「「えっ…」」
いきなりの質問に驚く太助。シャオも南極寿星の口からそんな言葉が出るなんて思わなかったから驚いていた。
少し間を置いて、太助は言った。
「あると言えばある、かな。今の俺じゃ力不足だけど、いまに成長してシャオを守護月天の宿命から解き放って幸せにしてみせる!」
「太助様……」
太助ははっきりと言った。横で聞いていたシャオはうれしそうだった。
「それを聞いて安心したわい。これからシャオリン様を守護月天の使命から解放する方法を教える。しっかり聞いててくだされ」
その言葉を聞いて太助は思わず立ち上がってしまった。
「ほ、本当なのか、じーさん!?」
「今更嘘をいってどうする?とりあえず座って話を聞け、小僧」
太助はソファーに座り直した。南極寿星はごほんと咳払いをしてから語りだした。
「とりあえずシャオリン様を守護月天の使命から解放するには、ある儀式を行わなければならないのですじゃ。
その儀式を行う場所も決まっておる。場所は中国の月光山の洞窟ですじゃ。その洞窟の中にある儀式の間で、儀式を行えばシャオリン様は守護月天を辞めて人間になれます」
南極寿星が話し終えると太助は、
「ちょ、ちょっと待ってくれじーさん。儀式をするだけでいいんだろ?そんなんでいいんならなんでもっと早く教えてくれなかったんだよ」
と、少し怒り気味で言った。シャオは黙ってじっと南極寿星を見つめていた。
「儂だってのう、できることなら早く教えたかったわい」
「だったらなぜ…?」
南極寿星の言葉にシャオが質問した。
「その儀式の間まで行くのが問題なのです。洞窟の中は侵入者を拒む罠がたくさんあります。普通の人間なら、すぐに死んでしまうでしょう」
それを聞いて二人の顔は青くなった。そんなに危険な場所なのかと、思い、想像してしまったからだ。
「だから儂は小僧、お主が万難地天の試練を受けて、成長するのを待っていたのだ。今のお主ならその罠も越えられるはず。シャオリン様と一緒にな」
南極寿星が言い終わると長い沈黙が続いた。その沈黙を破ったのはシャオだった。
「でも南極寿星、星神のみんなと力を合わせれば…」
「駄目なのです、シャオリン様」
シャオの言葉を南極寿星がきった。
「あそこでは、守護月天の力が爆発的に高まります。あそこで星神を使おうとしても、今のあなたでは操りきれません。
それどころか力が逆流してシャオリン様にとんでもないダメージをあたえます。へたをすれば………」
と、ここで言葉をきってうつむく南極寿星。そしてまた沈黙が続く。
「要するに、俺はその洞窟の罠からシャオを守りながら儀式の間に行けばいいんだろう?そうすればシャオを守護月天の使命から解き放てるんだな?」
今度は太助が沈黙を破った。太助の問いに南極寿星はこくりとうなずいた。
「別に儂は強制するつもりはないのだがのう、方法はそれしかないのだ。やるかやらんかは小僧、お主次第じゃからな」
そう行って、南極寿星は支天輪に帰っていった。



俺は次の日迷うことなくここに来た。シャオと一緒に。ルーアンやキリュウも一緒に来たがっていたが、俺が断った。もしかしたら慶幸日天や万難地天の力も爆発的に高まるかもしれない、そう思ったからだ。
じーさんのいった通りここは恐ろしいところだ。トラップの数も内容も半端ではない。キリュウの試練が易しく思えるくらいだ。そんな中、シャオを守りながら進んでいる俺ってすごいなー、と思っていた。


暗い洞窟の中を今私達は歩いています。手を繋ぎながら。太助様は傷だらけになりながらも私を一生懸命守ってくれています。ここにくるまでに私は何度も太助様に、もうやめましょう、と言いました。けど太助様は、大丈夫、心配するな、とやさしくいってくれます。そのたんびに、私は胸がモヤモヤします。もし守護月天を辞めてしまったら、このモヤモヤが何なのか分かるのでしょうか。


そしてトラップも少なくなってきた頃、先の方に光が見えた。
「太助様、光が見えます!」
「本当だ。シャオ、いこう!!」
「はい!」
二人は走り出した。そして光の出所にたどり着いた。

続く