―告白、そして…―




第11話  過去(3)―告白、そして…―

時は規則正しく進んでいく。誰もこれを止める事はできない。
人はこの世に生まれ落ち、時の流れに乗って成長し、真に愛するものと出会い、ともに生きる事を誓い、子孫を残し、老いて土に返る。
誰もこの流れを逆らう事はできない。
しかし、ある一人の少女は、この時の流れに逆らって生きていた。
不老不死の体を持って…。
永久に続く主を守るという使命。いくつもの辛い主との別れ。
その悲しい宿命を持った少女を救ったのは何の力も持たない一人の少年だった。
そう、たった一人の心清き少年だった。


『トントントントン』
シャオはいつも通り夕食の用意をしていた。
シャオが精霊の宿命から解き放たれて6年が過ぎた。
今や邪魔する者もいなく、那奈もまた旅に出て、七梨家では静かな毎日が送られている。
周りが変わっていっても太助とシャオの関係は変わりない。
そして進展もしていなかった。
「ただいま〜」
玄関から声がした。シャオは手を止め、早々と玄関に向かう。
自分の一番好きな人が帰ってきたのだ。
「お帰りなさい、太助様」
「ただいま、シャオ」
いつもと同じ光景。
二人は高校を卒業した後、大学にはいかず、太助は働き、シャオは家の事をしている。
もちろん、シャオははじめ『自分も働く』と言ったが、太助がいいと言ったのだ。
自分だけでも裕福とは言えないが生活していけるからである。
シャオはそれでもなかなか引かなかったが、太助のある言葉で引く事になる。
「シャオに苦労をかけたらじーさんに怒られるよ。それにシャオには家にいて欲しいんだ。
待っていてくれる人がいた方がいいから」
この言葉が決めてとなった。
太助にとって誰かが家で待っていてくれることがどれだけうらやましかったか。
そのことが現れた言葉だった。


「先にお風呂に入ってきますか?沸いていますから」
「ああ、そうするよ」
鞄を預け、風呂に向かう太助。
脱衣所について、太助は上着の内ポケットからあるものを出す。
見たところ箱のようだ。
「はあ〜」
箱を見て太助はため息をつく。
何度もこれをシャオに渡そうとしているが、いざとなるとなかなか渡せない。
もちろん箱の中身を渡したいのだが…。
それを開けて、中身を見ながら太助は決心する。
「よし、今日こそ言おう」
蓋を閉め、意気込みながら太助は風呂に入った。


楽しい夕食タイムがはじまった。
しかし賑やかな食事ではない。静かな食事だ。
食事の途中、太助は食べるのを止める。
「シャオ」
シャオに呼びかける。
「何ですか?」
手を止めて尋ねるシャオ。
「あ、あのさ…」
なかなか言い出せない。
「?」
シャオは不思議そうに見ている。
(なにやっているんだ、俺は。ここまで来たんだ…)
そう決心して、太助は脱衣所で出していた箱をシャオの前に置いた。
「?これは…」
「開けてみて」
太助にそう言われ、シャオはその箱を開ける。
中には、先端に宝石のついた指輪が入っていた。
「あんまりたいした物じゃないけど…」
太助は照れくさそうに言う。
「今までもずっとシャオと一緒だった。そしてこれからも一緒にいたい…。
……結婚しよう。(い、言えたー)」
太助は言いきった。シャオは少し驚きの顔をしている。
(へ、返事は…)
太助は返事を待った。
「太助様」
「なに?」
聞き返す太助。
「結婚……って何ですか?」
『ズコッ』
思わず太助は椅子から落ちてしまった。
「大丈夫ですか?」
シャオは慌てて駆け寄る。
「だ、大丈夫だよ。シャオ、本当に結婚を知らないのか?」
そう聞く太助。
シャオはクスクスと笑いながら答える。
「知っていますよ」
それを聞いて太助はまたずっこけた。
「しゃ、シャオォォォ、いつからそんなにぼけるようになったんだよ?」
「ごめんなさい。……太助様」
太助に呼びかけるシャオ。
「私も…私も太助様とずっと一緒にいたいです」
シャオはそう言った。OKと言う事だ。
「シャオ…」
「太助様…」
二人の間に静かな時間が流れる。太助はそっとシャオの左頬に右手を当てる。
その後シャオはゆっくりまぶたを閉じる。
二人の距離がだんだんゼロになっていく。
そして…


続く