新たな出会い(前編)



新たな出会い(前編)




第四話   新たな出会い(前編)


出会いは突然やってくるものである。たった一回の出会いが自らの運命を大きく変えることもある。
それがよいことなのか、いけないことなのか、すぐには判断できない。
これは、ある出会いにより、運命が大きく変わる二人の話である。



『キーンコーン カーンコーン』
学校の終わりを告げるチャイムだ。誰もがまちどうしにしているベルだ。
「はい、じゃあ今日はここまで」
「起立、礼!」
『さようなら!』
日直の掛け声で礼をする生徒たち。そして帰る準備を始める。
小学二年生ぐらいだろうか。帰る準備をし終わった生徒が次々と教室から出て行く。
そんな中、一人の少年が一人の少女に歩み寄った。
「なあ、麗奈、俺サッカーして帰るから先帰っといて」
「えぇー、今日もして帰るのぉ?毎日よく飽きないね。でも、あんまり遅くなるとお母さんに怒られるよ」
「分かってるって、じゃあな」
そう言って教室から出ていった。麗奈もかばんに教科書などを入れ教室を出た。
「バイバイ、麗奈ちゃん。また明日ね」
「バイバーイ」
クラスメイトに別れを告げ、帰路についた。途中、一人の男子生徒に呼び止められた。
「おーい、麗奈ちゃーん」
「あっ、祐介君」
彼は同じクラスの竹内祐介。小さい頃からよく遊んでいた、いわゆる幼なじみという奴だ。
「あれ、幸太は?」
「今日もサッカーして帰るって」
ちなみに麗奈と幸太は双子なのだ。しかし髪の毛の色が違う。二卵性双生児ということもあって麗奈は銀色、幸太は黒色だ。
ついでに言うと麗奈はかわいく、クラスの男子からとても人気がある。
誰もが少しでも仲良くなろうとしているがなかなか上手い事話せず、彼女とまともに話せるのはクラスの男子では、幸太と祐介くらいだ。
幸太もまた女子に人気があった。運動神経バツグン、勉強はできる、おまけに結構かっこいい。
親の友達には、一体誰に似たんだとよく言われるらしい。
「ところでどうしたの?」
麗奈は祐介に尋ねた。
「父さんがさぁ、社員旅行のお土産に珍しい物を買ってきたんだ。麗奈ちゃんにあげようと思って」
「ホント!?じゃあ今から取りに行く!」
そう言って麗奈は足早に歩き出した。祐介も一緒に行く。


「ねえ、ところでさぁ、それってどんな物?」
歩きながら麗奈が祐介に尋ねた。
「ちょっと変わった筒と扇。扇の方はなぜだか知らないけど開かないんだ。けどそれには何かの伝説があるらしいんだけど」
「伝説って?」
「それが分からないんだ。そこの店の人もただ伝説があるとしか知らなかったみたいなんだ」
「ふ〜ん」
そうして話をしている内に祐介の家に着いた
「ちょっと待ってて」
そう言って祐介は家に入り、そして白い箱を持って出てきた。
「はい、これがそうだよ。家に帰ってゆっくり調べてみて」
「うん、そうするよ。ありがと、それじゃあまた明日、バイバ〜イ」
「バイバ〜イ」
手を振る麗奈に手を振り返して見送る祐介。
「けど、伝説ってホントに何なんだろう……?」


麗奈は少し速く歩いていた。早く調べたいからだ。麗奈の家には骨董品がたくさんある。
旅好きな祖父がいっぱい送ってくるのだ。そのせいか珍しい物は何でも貰ってしまうのだ。
たくさんありすぎて、ついこないだ地下室を作ってもらい、そこに置いている。
少し先の曲がり角から一人の少年が出てきた。
幸太である。
「あれ、麗奈、まだ帰ってなかったのか?」
「うん、ちょっと祐介君のところに」
「祐介の?なにしに?」
「これをもらいに」
そう言って手に持っていた箱を出した。
「何だよ、これ?何か入っているのか?」
「筒と扇。何かの伝説があるみたい」
「本当か?見せてくれよ」
「だ〜め。帰ってから」
「ちぇ、ケチ」

「ケチで結構。さあ、早く帰ろ」 そう言って二人は歩き出した。たわいもない話をしながら。
五分ほど経った頃、家に着いた。
「「ただいま〜」」
「おかえり」
麗奈によく似た母親が顔を出した。
「ん、どうしたの、麗奈、その箱?」
「ちょっとね」
そう言って二人は自分の部屋に向かった。母親は、何かしら、と思いながらも夕食作りに戻っていった。


部屋に入ってまず口を開いたには幸太だった。
「早く見ようぜ」
「待ってよ」
そう言いながら麗奈は箱の蓋を取った。中には別に何でもないような筒と扇が入っていた。
「見た目はただの筒と扇だな」
「そうだね、ほんとにどんな伝説があるんだろう?」
そう言って麗奈は筒を手にした。幸太は扇の方を。
「あ、その扇、開かないらしいよ」
「はぁ?そんな扇があるのかよ?」
そう言って幸太は扇を開こうとした。麗奈は筒の中を覗こうとした。
そして二人がほぼ同時に言った。
「あれ、何か見える!」
「何だよ、ちゃんと開くじゃないか」
その瞬間二人の手から筒と扇が離れた。
何だ、と思いながら見ていると、筒と扇からそれぞれ人が出てきた。
呆気に取られている二人の前で出てきた二人は同時に言った。
「「はじめまして、主様(殿)」

出会いは突然やってくる。特に精霊との出会いは……。

続く