試練を越えてパーティーへ



試練を越えてパーティーへ



第七話 試練を越えてパーティーへ


『ドカッ、バキ、ベキッ』
容赦ないキリュウの試練が幸太を襲う。
「はあ、はあ、はあ…」
息を切らしながらバタンと地面に寝転ぶ幸太。
「どうした、主殿?もうばてたのか?」
屋根の上からキリュウが言う。
「な、なあ、キリュウ、一つ聞いていいか?」
息を整えながら幸太がキリュウに尋ねる。
「何だ?」
「お父さんってキリュウの試練を受けていた理由、あったの?」
幸太が尋ねるとキリュウは少し間を置いてから言った。
「今詳しい事は私の口から言えないが、太助殿は大切な人を守るために私の試練を受けていた」
「大切な人か…、お母さんの事かな」
しばらく黙っていたが幸太だったが起き上がって言った。
「よし、キリュウ、続けようぜ!」
「分かった、万象大乱」
周りの石が大きくなり幸太を囲む。
「今からは前に太助殿に与えた試練を与える。見事乗り越えられよ」
そう言って、キリュウは姿を消す。
「お父さんと同じか…。ちょうどいいな」
太助が目標を持っていた事を知り、幸太も目標を持つ事にした。
『お父さんを越える!』


「へ〜、キリュウの試練って結構きつそうだね」
空の上から見ている麗奈が言った。
「けど越えたらすごく強くなりますよ。たー様もそうだったから」
「ふ〜ん」
そう返事をする麗奈。
「けど、見てるだけって退屈ね」
そう言ってルーアンはコンパクトを出した。
「ルーアン、化粧でもするの?」
「いいえ、これはただのコンパクトではなく、遠く離れたところを見る事ができる
千里眼の力を持っています」
「すごいね、ねえ見せて」
そう言われ、ルーアンはコンパクトを開けた。そこには試練を受けている幸太の姿があった。
「わあ、映ってる、映ってる」
「がんばってるわね。そうだ、シャオリンはちゃんとごちそう作っているかなぁ」
そう言って、画面を切り替える。
「あら、シャオリンだけじゃないわね」
「あ、翔子お姉ちゃん!」
それを見た麗奈が言った。
「ホントだ」
「ルーアン、まずいよ。幸太の試練をやっていたら気づかれるよ」
「確かに、あの子、結構鋭いからね」
「よし、やめさせに行こう」
麗奈が言い、ルーアンが頷くと、キリュウの所に向かった。


その後キリュウは以前太助が初めて希望を出した時に与えた試練を幸太に与えていた。
2時間後、家の近くまで来た時に、ルーアンがキリュウを止めた。
「ちょっとキリュウっ!」
「何だ、ルーアン殿」
聞き返すキリュウ。それには麗奈が答えた。
「キリュウ、試練を止めて!」
「何故だ?まだ家に着いていないぞ、麗奈殿」
「翔子お姉ちゃんが家に居るの」
「翔子殿が?」
「今、コンパクトで家の様子を見てみたら、不良嬢ちゃんが居たのよ」
ルーアンが説明する。
「お〜い、キリュウぅ〜、試練は〜?」
幸太が叫ぶ。キリュウは幸太の前に降りた。
「主殿、すまぬが試練はここまでだ。翔子殿が家にいるらしい。試練をやっていると気づかれる恐れがある」
「翔子姉ちゃんが!?そりゃぁ止めないとな」
幸太は納得した。太助に内緒にしておけといわれているのにばれたらマズイ。
そう思ったのだ。そうしている内に、ルーアンと麗奈も降りてきた。
「さて、これからだけど…」
ルーアンが切り出した。
「学校の時と、一緒でいいんじゃないの?ルーアンとキリュウ、小さくなってさ」
「それでいいな。じゃ、キリュウ、頼むよ」
「では、万象大乱」
キリュウが唱えると、ルーアンとキリュウの体が小さくなる。麗奈と幸太は、二人を胸ポケットに入れる。それから家に向かう。
「それよりもなんで翔子姉ちゃんが家にいるんだ?仕事でめったにこれないだろ?」
「分からないけど、こないだ全国ツアーやったから、それで休みを貰ったんじゃないの」
「そう考えるのが普通か。ま、いいや、帰って聞こう」
と、言っている内に家に着いた。
「「ただいまぁ〜」」
二人が揃って言うと、リビングから翔子が出てきた。
「お、麗奈に幸太、久しぶりだな」
「あれ、翔子お姉ちゃん、来てたの」
「仕事は休みなのか?」
二人が何も知らなかったように尋ねる。
「ああ、ツアーが終わったからな。で、来てみたら今日パーティーだろ。タイミングよかったぜ」
「そうだね、じゃあ私達部屋にかばん置いてくるから」
「置いたら、早く来て手伝えよ」
「「は〜い」」
返事をして二人は部屋に向かった。
「それにしても、あいつらの他にまだ誰かいたような気がしたんだけどな。気のせいかな?」


「ふう〜、どうやらばれてないみたいね」
部屋に着き、ルーアンがそう言った。
「そう言えば、主殿、先ほど翔子殿が言っていた『つあー』とは何の事だ?」
「ああ、翔子姉ちゃん歌手だから、歌を歌って、全国を回るんだ。それがツアーだ」
「なるほど」
納得したようにキリュウが言った。
「翔子お姉ちゃん、すっごい人気なんだよ」
「へ〜え、あの不良嬢ちゃんがねぇ〜」
「不良?翔子姉ちゃんが?」
ルーアンの言葉を聞いて幸太が尋ねる。
「そうだったみたいよ。シャオリンと会ってから変わったみたいだけど」
「そうなんだ、あ、そろそろ行かないと。ルーアン達はここで待ってて。幸太、行くよ」
麗奈がそう言うと幸太は、
「俺もここで待ってる」
と言った。
「何言ってんの。早く来なさい!」
「いやだって〜」
幸太の叫びも空しく、幸太は麗奈に連れて行かれた。
「何か面白いわね」
「そうだな…」
二人が行ってからルーアンとキリュウは話し出した。
「それよりも、今日どうする?驚かすでしょでしょ?」
「太助殿がそうするつもりだろう。して、どうする?」
「やっぱり少し暴れた方がいいんじゃないの?いきなり陽天心や万象大乱をかけたりさあ」
「別にいいが、程々にしておかないと、もう羽林軍殿はいないのだからな」
「分かってるって」
そう言っているものの、本当に分かっているのかと少し不安のキリュウだった。



パーティーの準備は着々を進んでいた。
シャオと翔子が料理を作り、麗奈と幸太は食器などを並べる。
「ふ〜、ちょっとキツイな」
「大丈夫?」
「大丈夫な訳ないだろ。キリュウの試練受けたばっかなんだから」
「分かるけど、怪しまれない為だよ。がんばらないと」
「分かってるよ」
ぶつぶつ言いながら準備をしていく幸太だった。


準備を終えた頃、太助が帰ってきた。
「ただいま〜」
「お、帰ってきたな、七梨。」
「や、山野辺!?なんでここにいるんだっ!?」
「いちゃ、悪いのかよ」
太助の言葉に少し怒りながら翔子は言った。
「たまたま休みでな。ここに来たらパーティーやるって言うからいるんだよ」
「そっか」
「それから他の奴も全員くるってさ」
「全員集合って訳か、どのくらいぶりだろう?」
「さあな、あたしが芸能界にいるようになってから全然ここには来れなくなったからなあ」
翔子がそう言うと、麗奈と幸太が玄関に出てきた。
「あ、お父さん、おかえり」
「お帰りなさい、お父さん」
それぞれ挨拶をする。
「じゃあな、さっさと着替えて来いよ」
そう言って翔子はリビングに消えた。
「おい、二人とも、ばれてないだろな?」
太助が小声で尋ねると、二人はコクンと頷いた。
「で、どうするの?みんなをおどかすんでしょ?」
「そうだな、ルーアン達に適当に暴れてくれって言っといてくれ」
「分かった」
そう言って二人は部屋に向かった。
「さてと、俺も部屋にいって着替えるか」
そう言って太助もその場を離れた。


 そして時刻は6時半、
「こんばんは〜」
「お邪魔しま〜す」
たかしと花織がやってきた。
「お、来たか」
太助が出迎えた。
「よっ、太助」
「こんばんは、七梨先輩」
「急だったから来れないかと思っていたけど…」
太助がそう言うと、たかしは、
「ふっ、たとえどんな事があろうともパーティーと聞けば日本の端からでも飛んでくるぜ」
と言った。
「そっか。そうだろな。ま、とりあえず上がれよ」
「はい」
花織が返事をし、上がる。それに続こうとするたかしを太助が呼び止めた。
「おい、たかし、最近どうだ?」
「最近はマシだな。時々新作だって食わされるけど…」
「で、どうだった?」
「あれは表現できない味だった。どうやったらあんな味になるのか知りたいよ」
「ふ〜ん、でもマシになっただけいいんじゃないのか?」
「そう考えてる。今日は久々にまともな料理が食えるぜ」
そう言ってたかしもリビングに入っていった。太助も後に続く。
花織の料理音痴はいまだに直っていないようだ。
その三十分後、家のチャイムが鳴る。
『ピンポーン』
「はいはい」
太助が出る。そして開けるとそこには、
「な、那奈姉…」
旅に出て数年、久々に見る姉の姿にすこし驚く太助。
「よ、太助。何となく帰ってきてみたかったから、帰ってきた」
(相変わらずだな)
那奈の言葉を聞き、そう思う太助。
「ところでなんか賑やかだな」
「ああ、今日は…」
「あ、那奈姉じゃねえか!」
「お〜、翔子!久しぶりだなぁ!」
太助が言い終わる前に翔子がリビング出てきて言った。
「今日、パーティーやる事になったんだ。ちょうど言いタイミングじゃん」
「おお、そうか、あたしって運いいな。そんじゃ上がるか」
そう言って上がる。と同時に、
「あれ、太助くんそんなところで何してるの?」
乎一郎と出雲がやってきた。
「何かあったんですか?」
出雲が尋ねる。
「いや、予定外の客が来たから」
「そうですか、ま、パーティーは多い方がいいでしょう。あがらしてもらいますよ」
「お邪魔しまーす」
そう言って二人も上がる。
(出雲の奴、那奈姉の遊び道具にされるんだろな)
そんな事を思いながら太助は麗奈と幸太の部屋に向かった。
「あら、たー様」
部屋に入ると、ルーアンが声をかけてきた。
「みんな揃ったの?」
「ああ、二人とも、すこしだけ暴れてくれ。くれぐれもやりすぎないでくれよ」
「分かったわ」
「うむ」
ルーアンとキリュウが返事をする。
「それじゃ、パーティーの始まりだ!」
幸太が言い、三人は(正確には5人)リビングに向かった。

続く