幻の村




私は気を失っていた。
キ「あれからどれくらい経っただろう。」
私は辺りを見た。そこは薄暗く、壁は遺跡のようだった。
ピラミッドの内部のようだ。仕方が無いので私は奥へ進むことにした。
キ「そういえば長老殿が罠が有ると言っていたな。気を引き締めねば。」
奥に進むに連れて、僅かづつだが通路が広くなってきた。
しばらくして罠らしき物が無いので気を抜いていた私は何かに躓いた。 コテッ
キ「いたた。」
そう言ってこけた時にぶつけた鼻を擦った。
とその時何かが落ちてくる音が聞こえてきた。
ヒュー
私は上を見た。すると、大きな岩が私を目掛けて落ちてくる。
ドンッ
私は間一髪のところでかわした。
キ「あっ危ないところだった・・・」
私は数秒前まで自分が居た場所を見てゾッとした。
『そういえば主殿はいつもこのような試練をしていたのだな。』そう思うと試練を与える側にもかかわらず感心してしまう。
キ「よしっ、今日は私自身がこのピラミッドの罠を超えてみせよう。」
そう言い、心機一転に奥へ進む。
しばらくして大広間に出た。ここに来るまでに幾度と無く罠を超えてきた私の体力は底を尽きようとしていた。
そして大広間の中央に箱があった。その箱の外側は宝石などが散りばめられており、まさに《宝箱》という感じだった。
キ「あの中に特効薬があるのだな。」
私はふらつきながらそのに近づいていく。今の私には『罠が在るのでは?』と考える余裕は無かった。幸い箱に辿り着くまで罠は無かった。そして私は箱に手を伸ばし、触れた。
キ「っ・・・」
その時、箱は光り出し私は中に吸い込まれた。
キ「・・・ここはどこだ?」
先程までと違い、辺りは白い霧のようなものに覆われていて、遠くまでは見えない。
コツコツ
誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
キ「誰だ?」
私の問いに答えず、尚も近づいてくる。私は身構えた。
?「そう警戒しなくていいよ。別に危害を加える気は無いから。」
そう言って私の前に現れた。その姿は10歳前後の少年だった。見た目とは不釣合いなほど落ち着いた口調だった。その姿を見て私は警戒を解いた。
キ「あなたは何者だ?」
?「僕はガルム。あの箱を守ってる番人ってとこかな。」
キ「私は万難地天キリュウ。訳あってあの箱の中身を譲ってもらいたい。」
ガ「んー、譲っても良いけどそれはキリュウの心次第かな。」
キ「私の心?」
ガ「そうここは君たちの世界から見ると異次元に位置する所なんだ。」
キ「そうなのか。でどうすればいいのだ?」
ガ「取り合えず訳を話して、もしその動機が純粋な物であればここから出られて箱の中身を取ることが出来る。」
キ「純粋でなかったらどうなるのだ?」
ガ「二度とここから出られなくなるだけだよ、さあ話してみて。」
ガルム殿は軽い口調で言った。
キ「・・・うむ。」
私は主殿の事、これまでの事、何故あの箱の中身が欲しいのか等を話した。
キ「・・・と言うことだ。だからどうしてもあの中の物が必要なのだ。」
ガ「・・・」
ガルム殿は黙ったままなにやら考え事をしていた。
キ「どうしたのだ?」
ガ「ああ、ごめん。」
キ「それでどうなのだ?私の心は。」
ガ「合格だよ。」
キ「本当か?」
ガ「うん。キリュウの主を助けたいっていう気持ちは純粋な物だったからね。」
そう言った瞬間ガルム殿の体が光りだした。
ガ「僕の役目は終わった。お別れだね、キリュウ。」
私は眩しさの余り目を瞑ってしまった。光が止み目を開けた。すると其処はなんら代わり映えの無いピラミッドの中だった。そう、あの光に包まれたあの箱の前。
キ「・・・」
私は色々な感情で混乱しそうになったが考えるのは後にして再び箱に手を伸ばした。
今度は何の抵抗も無く開けることが出来た。中に万難地天である私も見たことが無い薬草が入っていた。
キ「ガルム殿ありがとう。」
私は一礼してその場をあとにした。
私は長老殿に礼を言おうと思い村に向かった
しかしそこに村は無く、ただ砂の大地が広がっていた。私は蜃気楼でも見ていたかのような気分だった。が、ハッと気が付き『おそらくガルム殿の力だな。』と思った。
私は再び一礼してその場を去った。
キ「特効薬も手に入れた事だし帰ろう。」
『主殿、待っていてくれ。』