月天の物思い




幸せな日々、私にとってかけがえの無い束の間の休息。
しかしその幸せな日々に不幸が降りた。
私のもっとも大切な人が目覚めないまま一年が過ぎようとしていた。
近くても遠い存在、前は近づこうとしても壁に阻まれるような感じだったけど、今はそれすら易しく思えるほどの壁が太助様と私の間にある。
私はこの一年で翔子さんから私の太助様への気持ちが何なのか教えてもらった。この気持ちが愛情だという事も。
しかし今の私には愛情というものが何なのか分からない。
ただ胸が苦しいだけ。
そして、今感じている胸の苦しみは太助様への愛情が強ければ強いほどつらい事を。
そんなある日、私はいつも通り学校の帰りに病院に寄った。
私はここ一年毎日通っている病室に入った。
私はいつも変わらぬ光景のままの太助様が眠っている横の椅子に腰をかけた。
シャ「私の太助様への気持ち・・・」
そう呟いた。最近はこの事ばかり考えている。
シャ「翔子さんはああ言っていたけど、私の気持ちはどうなんだろう?」
太助様は私が始めて選んだ主様。
そして太助様は私に此処に居て欲しいと言ってくれた。
シャ「太助様は私の事どう思っているんだろう。」
この事だけは翔子さんも教えてくれなかった。「それは七梨から直接聞くものだ」と言って。
私は一人で考えていた。私の気持ちを。
・・・
私は目を覚ました。
シャ「・・・眠ってたんだ。」
ふと窓の外を見てみるとそこはもう暗くなり始めていた。
なぜか私はすっきりした気分だった。自分の事ながら私は何故だか分からなかった。
分からなかったが一つ仮説を立てた。何か決心が付いたのだと。
『よしっ。』私は心の中でそう呟いた。
シャ「そろそろ帰らないと。」
そう言って立ち上がった。
シャ「太助様、また明日来ます。」
私は病室を後にした。