魔法の国と科学の国


道は二つに分かれていた。
一つは北の方に続き、森の奥へと伸びる。
もう片方は南の方に続き、途中で道が整備されているようだった。
 
「リュウ殿、どっちへ行くのだ?」
 
そこに腰に剣を持っている中性的な美形の女性が言った。
 
「普通は南の方だな」
 
リュウと呼ばれた青年が呟いた。歳は15歳ぐらい。女性と同じように剣を持っている。
 
「リュウ様、ここは北の方に行きましょう」
 
「なんでだ?サリア」
 
リュウの意見に反抗したサリアと呼ばれた少女。
黄色いの髪をした少しポケポケとした感じがする。
 
「旅の途中ある魔術師さんに聞いたのですが、南の国はとてもひどいらしいです」
 
「ひどいとはどういうところなのだ?」
 
「そこまでは知りませんけど……魔術師さんは二度と行きたくないといってました」
 
「……ま、どっちでもいいか、わかった。北に向かうか」
 
リュウはそういい、三人は森の中へと入っていった。
 
 
 
 
 
しばらく進むと城壁に囲まれた建物が見えてきた。
それは街だろうと三人は思い、歩くスピードを速める。
 
近づくと遠くからだとわからなかったが、とても高く、分厚そうな城壁と今は閉じている門があった。
 
「いらっしゃい!旅人さん」
 
その門番はたった今到着した三人に嬉しそうに言う。
 
「こんにちは、私はサリアと言います。
こちらはリュウ様と歌那さんです」
 
サリアはペコリと頭を下げて挨拶をした。
 
「入国に当たっての質問をしてもよろしいでしょうか?一つだけです、すぐ終わりますので」
 
リュウは「ああ」と頷き、サリアや歌那も同意するB
 
「あなた方は魔法を使えますでしょうか?」
 
三人は少し驚いた。
今の世界なら魔法は使えてあたりまえだった。
リュウやサリアの国なら国民全員が使える。
だが例外もあることが旅の途中、リュウとサリアは知った。
でもそういう国には魔法の代わりとなるものが存在している。
実際、歌那の国には魔法は存在しない。
だから歌那は魔法は一切使えないでいる。
しかしそれを剣術でカバーしているのだ。
 
「魔法が使えなかったら、入れぬのか?」
 
珍しく歌那は恐る恐る聞いた。
魔法を使えないだけで差別されるのが嫌なんだろう。
 
「いえ、そういうわけではありません。ただの質問なのでお気軽に」
 
「わかった、俺とサリアは魔法は使える。
でも歌那は使えない、それでいいか?」
 
「わかりました、あらためてこんにちは、わが国へようこそ」
 
入国許可が下り、城門が開いていった。
 
 
 
街の中は中世的な建物ばかりが並んでいる。
そしてとても古い像もあり、歴史を感じさせる。
 
「良い国ですね」
 
「まぁ…別に変わっている国じゃないからな」
 
リュウは以前歌那の国と比較した。
歌那のくにでされたことや変な髪型。
 
(サリアの言うとおりここは良い国だ)
 
と、本人の目の前では言えず、心の中で言うリュウ。
 
「これからどうする?宿でも探すのか?」
 
歌那は言い、リュウは「そうだな」と頷く。
しかしサリアは…
 
「リュウ様!歌那さん!さっき聞いたのですが、
この国は魔術学園という所へ行ってみるといいらしいですよ!!」
 
「……サリア殿は実は自己中心的なのか?」
 
「……まぁ…宿はあとからでもいいだろう」
 
 
 
魔術学園はアーチを組み合わせた一風変わった建物だった。
学園内には黒い服を着た学生だらけ。
先生らしき人物もちらほら見かける。
そして数人だがリュウ達にように一般人の人もいる。
 
(この建物……まさか)
 
入った途端、リュウはふと何か思ったが、途中で考えることを止めた。
 
「ここが魔術学園という所か……たしかに魔術師だらけだ」
 
「そういえば歌那さんはこういう場所初めてですよね。
この機会に魔法を習ってみませんか?」
 
歌那はそれを丁重に断り、サリアは少し残念そうな顔をした。
 
「それにしても、この国はかなり魔法のレベルが高いな」
 
リュウはあたりを見回しながら言う。
ときより部屋を覗いてみたがかなりの上級魔術を学生が行おうとしている最中だった。
 
部屋の中には一人の学生らしき魔術師が目を閉じて精神を統一している。 
 
『万物の始原たる燃え盛る炎よ……
我が意に従いてここに……滅びを誘う灼熱の炎…… 』
 
リュウにとっては聞いたことのない詠唱。
だがその魔力からして上級レベルの魔法だと推測していた。
 
魔術師の手に赤い炎が集まっていく。
そして魔術師はそれを上手く制御させていった。
 
 
 

『コロナバースト』
 
 
 

その声とともに凄まじい炎が放たれた。
そしてその炎は部屋の中心にある水晶へと吸い込まれていく。
 
「あの水晶は魔力の威力を吸い取るように作られていますね。
でももしあれを破壊することができたら…」
 
サリアが言い終わる前にその結果が出た。
突然部屋の中から眩しいほどの光が溢れ出し、気づいたころには水晶が見事に割れている。
 
「凄いですね、あの子」
 
「…そうだな」
 
だが、凄いのはそれだけではない。
 
あの魔法の威力なのに振動どころか爆音さえ部屋から漏れていなかったのだ。
 
「この学園には協力は魔術結界が張っているようですね」
 
「まぁ、それもあるかもしれないが、
たぶんこの建物自体魔法でできているんだろう。
それで衝撃を吸収している」
 
「やっぱりそう思いますか?」
 
「まぁ、信じがたいがな」
 
「二人ともちょっと待ってくれ!!」
 
さっきから黙り込んでいた歌那がようやく口を開いた。
魔法がわからない歌那にとって、この二人の会話は理解しがたいのであろう。
 
「歌那さんにはやはり難しいですね
やはり魔法を習ってみますか?」
 
しかし歌那はそれを断固拒否した。
 

三人が学園内とを見て回っていると一人の女性が出迎えてくれた。
白髪の老婦人だが優しく聡明そうな人だった。
 
「ようこそ、魔術学園へ、私が院長です」
 
「こんにちは、私はサリアと言います。
こちらはリュウ様と歌那さんです」
 
サリアは門番の人と同じようにペコリと頭を下げて挨拶をする。
 
「どうでしょうか?この国は、この学園は?」
 
「素晴らしいところですね、私も魔法使えますが、ここまで魔法のレベルが高い国を見たのは初めてです」
 
サリアが微笑みながら言い、院長も微笑みながら聞いていた。
 
「この国は昔から魔法だけで生活してきました。それはこれからも続きます」
 
「それで国中の人達の魔法のレベルが高いんですか」
 
院長は頷く。
 
「この国では国中の人々が魔法の才に恵まれて、
そしてとても良い環境で魔法を学び、育っていきます。
ですから魔法の力のみで生きていけるんですよ」
 
それからサリアと院長の魔法についての話が続いた。
サリアにとって、良い勉強になるだろうと思い、リュウは何も言わなかったが、
いつの間にか学園の学生まで集まりだして、討論になっていく。
どんな魔法を使えるか?
今まで一番印象に残った魔法は何か?
魔法とは何か?等など
歌那は魔法を知らないため、初めから蚊帳の外。
リュウも最初は聞いていたが、
彼はどちらかというと歌那同様剣術が得意な方なので、その中から出ていた。
 
 
 
 
 

「リュウ殿、長いな…」
 
日はすでに沈みかけようとしている。
 
「ああ…魔術師というのはみんなこんなんだから気をつけたほうがいいぞ」
 
リュウは笑顔だが熱く討論しているサリアを見つめながら呟いた。
 
 
 

その夜、リュウ達はサリアのおかげで院長の家に泊まることになった。
食事も用意され、院長と一緒に旅の話をしながら食事している。
そのときは歌那もよく話していたが、
何時の間にか魔法の話が入っていき、また昼間の討論みたいになっていった。
当然歌那とリュウはついていけなくなる。
 

食事も終わりかけてきたころ、院長はあることを言ってきた。
 
「南の国には言ったことがありますか?」
 
それにサリアは「いいえ」と答えた。
 
「それはよかったです、南の国はとても危険な国なんですよ」
 
「危険とはどういうことだ?」
 
首をかしげる歌那。
 
「南の国はこの国とは違い、とても不思議な物を使って、生活しているんですよ。
魔法も何もかけていないのに物が勝手に動いたり、さらには飛ぶ物まであるらしいです。
ある日私たちの国から数人、南の国に行ったことがあるんですがその恐ろしさに逃げ帰ってきました」
 
「それは怖いですね」とサリア。
 
 
 
 
 
 
 

――次の日
日の出ととも起き、院長の家で朝食を食べてから、サリアは礼をして、この国を出た。
 
 
 
 
 
「リュウ様、どちらに行かれんですか?」
 
リュウは一人先頭に立って、黙々と歩いている。南に向かって。
 
「ん?もちろん南の国だが」
 
「え?でも恐ろしい国って」
 
「それはあの国の住民にとってはだろう
俺達にとっては普通かもしれない」
 
「もし危険だったら、どうするのだ?」
 
「そのときは……そのときだ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「綺麗な街ですね」
 
城門をくぐり終えたサリアが呟いた。
 
前の街とは違った完成された町並み。
何本も並ぶ整った太い道路。
所々に車が置かれている。
そして外見も配置も美しくデザインされた建物。
 

「リュウ殿、あれはなんなのだ?」
 
歌那は道路の脇に置いてある車を指差しながら言った。
 
「ん?歌那知らないのか?」
 
「うぬ、わらわの国ではこういう物はなかった」
 
(歌那の国は古臭かったからな…)
 
と、リュウはやはり歌那の目の前では言えず、心の中で呟く。
 
「……なにか言ったか」
 
「…いや、あれは自動車といって、機械で動く乗り物だ。
ちなみに俺の国にもないな…ああいうのは、本とかで見たことはあるけど」
 
「あれが乗り物なのか……ではあれは?」
 
次に歌那は車椅子にコンピュータを載せて、腕をつけた機械を指した。
腕には箒を持っていて規則的に掃いている。
 
「……たぶんロボットというやつじゃないのか?」
 
「ろぼっと?からくり人形みたいなものか?」
 
「さあな」
 
興味なさげに答えるリュウ。
だが歌那は子供みたいに新しく見るモノに目を奪われて、興味津々だった。
 
「世の中には不思議なモノがいっぱいだな。
魔法やこの機械という物や……まだまだたくさんあるのか?」
 
「……そうかもな」
 
その答えはリュウにもわからなかった。
 
「リュウ様!歌那さん!さっき聞いたのですが、
この国は工業学園という所へ行ってみるといいらしいですよ!!
これでこの国が恐ろしい理由がわかると思います」
 
とりあえず他に行く当てもないので、そこに行くことになった。
 
 
 

工業学園は学園というより完全に工場だった。
だが、かなりの広さがある。
地図でもほしいところだった。
そして生徒や教師達は全員青い作業服を着ている。
 
「あるで工場ですね…何を学んでいるのでしょうか?」
 
「そりゃあ、工業だろ」
 
ときより部屋を覗いてみたが黙々と一人の学生が作業している最中だった。
 
部屋の中には一人の学生らしき科学者が一生懸命手を動かしながら、細かい作業をしている。
 
リュウと歌那は剣士、サリアは魔術師なので、
三人には何をしているのかはいまいちわからなかった。
 
徐々に形ができてくる。
それは猫型のロボットのようだった。
 

三人が学園内とを見て回っていると一人の男性が出迎えてくれた。
白髪の老人で、髭を生やし、少し太っている人だった。
 
「ようこそ、工業学園へ、私が校長です」
 
「こんにちは、私はサリアと言います。
こちらはリュウ様と歌那さんです」
 
サリアは前の国と同じようにペコリと頭を下げて挨拶をする。
 
「どうでしょうか?この国は、この学園は?」
 
「とても凄いですね、こんなに科学が発達している国ははじめて見ました」
 
サリアが微笑みながら言い、校長も微笑みながら聞いていた。
 
「この国は昔から機械だけで生活してきました。
今では全ての仕事が機械で行われています」
 
「働かなくても、いいということですか?」
 
校長は頷く。
 
「しかし人間には欲求がありますからね。
食物などの生きるためのことは機械がやり、
我々人間は新たなる機械を生み出すため、日々研究をしています。
今ではほとんどの住民が科学者になっています」
 
校長の言ったことに対し、珍しくリュウが歓声の声をあげる。
だがそれだけだった。
 

その夜、リュウ達は校長の家に泊まることになった。
食事も用意され、校長と一緒に旅の話をしながら食事している。
だが、何時の間にか校長の科学講座になり、リュウ以外は聞き流していた。
 
食事も終わりかけてきたころ、校長はあることを言ってきた。
 
「北の国には言ったことがありますか?」
 
それにサリアは「はい」と答えた。
 
「それはとても危険な目に負われたでしょう」
 
いきなり大声をあげる校長。
 
「危険?」
 
首をかしげる歌那。
彼女にとって、魔法は理解できない。
だが、危険じゃないことは彼女にもわかる。
 
「北の国はこの国とは違い、とても不思議な力を使って、生活していたでしょう。
何もないところから火を出したり、いきなり電気を発生させたりして……」
 
サリアは「私もできますよ」とは言わず、黙って聞いていた。
 
「ある日私たちの国から数人、北の国に行ったことがあるんですがその恐ろしさに逃げ帰ってきました」
 
「ははは」とサリアは笑うしかなかった。
 
 
 
 
 
 
 

――次の日
日の出ととも起き、校長の家で朝食を食べてから、サリアは礼をして、この国を出た。
 
 
 
「なぁ、魔法の国と科学の国どっちが好きだ?」
 
「私は断然魔法です」
 
「わらわはどちらかというと科学というものだな」
 
リュウの予想通り二人の意見はバラバラ。
 
「リュウ様はどちらですか?」
 
「…そうだな……俺は…」
 
二人は興味津々にリュウがしゃべるのを待っている。
そして―――
 
 
 

「両方だ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あとがきと呼ばれるもの
 
現在クラブ中にこれを書いています。
執筆時間4時間……やや時間かかりました。
しかしこれが私の書きたかった小説かもしれません。
もろにキノの旅のパクリですが……
まぁ…私は面白かったら、それでいい派なので
そのへんはご了承ください。