FightRPG Dat.11「悲劇、響き渡る。」
 
 
ミイ「リボーン・ストロベリィィィサプラァァイズッ!!!」
 
ちゅどおぉぉぉんっ!!
 
 
サプライズの爆風と共に、洋館の化け物が吹っ飛ばされる。
 
 
寄宿舎の探索を終えて洋館へと戻ってきた一行を待ち受けていたのは、今までの化け物とは全く異なる、正に異質と言える代物達であった。
 
体中を爬虫類の鱗のような物で覆われ、ゴリラのような体型をした怪物。
 
その怪物の両腕の爪一本一本自体が、クリスが愛用しているサバイバルナイフの様な鋭利な凶器となっている。
 
そして何より特筆すべき所は、異常な踵のバネだ。一見つま先歩きのような動作で動きにくそうに見えるが、その足腰から生み出される瞬発力で獲物を確実にしとめるのだ。
 
無論、新しく現れた驚異に洋館の探索も思うようにはかどらない。
 
 
令「・・・全く、こうあちこちから前触れもなく現れたんじゃ思うように前に進めないわね。」
 
ジ「ええ・・・でも、洋館内の探索もあらかた終わったから、何とか中庭の残りの部分に行けそうね。」
 
神通棍片手に呟く美神と、グレネードランチャー(硫酸弾)を構えつつ呟くジル。
 
現在の戦法としてはスピードの速いミュウイチゴの電光石火の後に、美神とジルが波状攻撃を仕掛けるという、オーソドックスな物。
 
腐った奴らと違い、知能は若干あるようだがそれでも連係プレーを繰り出す美神達の敵ではない。
 
だんだんと余裕が出て来つつある一同の中で、若干一名ほど様子がおかしい奴がいる。・・・れたすだ。
 
 
れ「はあ・・・・はあ・・・はあ・・・・・」
 
横「・・?どうしたのれたすちゃん、息苦しそうだけど具合でも悪いのか?」
 
れ「い、いえそんなことないです!大丈夫ですから、本当・・に・・・」
 
ふらっ・・・・
 
 
れたすの意識は、そこで途切れた・・・。
 
 
・・・・・・
 
 
令「どう、彼女の容態は?」
 
ジ「・・・・芳しくないわね。接触したとしたら、多分寄宿舎の大水槽でだと思う。」
 
い「そんな・・・れたすが・・・・t−ウィルスに感染してしまったなんて・・・。」
 
寄宿舎を探索中に見つけた怪物プラントのファイルに記された生き物を狂気の姿へと変貌させるウィルス『t』。
 
そう、れたすは大水槽で大サメと格闘していたとき、まわりの水からこの悪魔のウィルスに感染していたのだ。
 
現在は感染の初期の初期なので、まだかゆみやら全身の鬱血などは見られないが、いずれにしろ油断を許さない状態といえよう。
 
い「・・・!そうだ、白金なら治療法を知ってるかもしれない!!マシャ、白金と大至急連絡を取って!!」
 
ぽん!!←突如マシャが出現する
 
マシャ(以下マ)「リョーカイリョーカイ!」
 
その直後、マシャが白金と連絡を取り、彼のホログラフが出現する。
 
 
白『なんだどうした?』
 
い「白金っ!大変なの、れたすが・・・れたすがっ!!」
 
白『お、落ち着けっ!一体何があったんだ、説明しろ!!』
 
令「実はね・・・・・・・ということで、れたすちゃんがt−ウィルスに感染したっぽいのよ。何かいい手立てはない?」
 
白『t−ウィルスか・・・確かに厄介な代物だが、変身したら幾分かはマシになると思うぞ。』
 
い「へ?そうなの??」
 
白『お前等に打ち込んだR・D・AのDNAのお陰で、BC(生物・化学)系兵器が使用された環境下でも最適な状態で活動できるようになっている。ゾンビになりたくなけりゃ頻繁に変身を繰り返すんだな。』
 
横「なんや、そんな簡単なことかい。」
 
白『だが、念押しして置くが必要以上に変身を繰り返すと二度と元の姿に戻れなくなる可能性も出てくるから、その辺もよく考えろよ。』
 
令「そんな恐ろしいことさらりと言わないの。」
 
こいつはホントに頼りになるんだかならないんだが・・・。
 
 
白『なんにしても、今こっちも大ピンチ状態でな。あんまり長くは話せなんだ・・・』
 
れ「一体・・何があったん・・・ですか・・・・?」
 
白金のただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、震える声でれたすが尋ねる。
 
 
白『・・・・こっちに残ってるみんと・歩鈴・ざくろの三人が何者かに誘拐された。』
 
全員『な、なんだってぇ?!!』
 
ジルを除いて全員すごい形相で驚いている。いくら彼女達が女の子と言えど、一般人よりは逸脱した強さを持っているはずだ(←酷)。
 
そんな三人を誘拐するとなると、相手も相当の手練れと言うことだろう。
 
 
白『とにかく、今、フィリア・セリカ・香澄の三人が先行している。そっちの事件が片づいたら急いでこっちに戻ってきてくれ!!』
 
ぶつんっ・・・
 
 
回線はここで切れた。どうやら白金自身もかなり忙しいみたいだ。
 
い「・・・・急がなきゃ!美神さん、ジルさん、超特急で中庭の探索を終えちゃいましょう!!」
 
令「そうね、横島クンは荷物をおキヌちゃんに預けてれたすちゃんをおぶってちょうだい。なるべくなら今後も彼女に頼る時が来ると思うから、極力無駄な体力を使わせないこと、いいわね?!」
 
横「了解っス!!」
 
 
かくして、本当に超特急で中庭の探索へと向かった・・・。
 
 
暗く、湿った通路。生暖かい風がどこからともなく吹き付けてくる・・・。やはり突如として現れるゴリラの化け物。
 
ただでさえ残り少ない時間を余計に食わされている分、ジル達の足取りも非常に慌ただしいものへとなっていった。
 
 
令「うっしゃあぁぁっ!エレベーター補修完了っ!!」←何故かガッツポーズも取ってる
 
横「めちゃハイテンションすね。」
 
い「そりゃタイムリミットがついちゃったんですもの・・・それにこっちの都合を無視して襲いかかってくる生物兵器・・・ハイテンションっていうよりキレかかってるって所ですね。
 
エキサイトとも言うがな、世間一般(特に野球界)では。
 
 
と、小ボケをかましてくれた一行はいよいよ中庭地下の最深部へと向かうところである。その最深部へと向かうためのエレベータを美神が直していたのである。
 
と、そこへ・・・・
 
バ「おっ、ジル、嬢ちゃん・・・みんなここにいたのか。」
 
ジ「バリー!!よくここが分かったわね。」
 
バ「物音がしたんでな、もしやと思ったんだが・・・行くのか?」
 
令「ええ、こっちに残された時間も少ないしね、さっさと終わらせて日本に帰るわよ私らは。」
 
言いながらエレベータの電源を入れ、降りる準備を行う美神。それに伴いいちご、横島、ジル、バリーも共にエレベータに乗り込む。
 
令「行くわよ・・・。」
 
 
ぐぉぉぉぉぉ・・・・・ん
 
 
凄まじい金属の軋む音と共にエレベータは下層部へと降りていく・・・。そして、数分後・・・
 
エレベータが停止し、辺りを静寂が包み込む・・・と思われたとき
 
???『U・・Uuu・・・・UUuu・・・・』
 
 
ジャラジャラジャラ・・ジャラジャラ・・・
 
 
苦しそうで、なおかつ不気味なうめき声と鎖を引きずる音が奥から聞こえてくる。と、ここでいちごが身震いをし始めた・・・。
 
い「こ・・この声、聞いたことある。・・・・確か、キッシュと一緒に小屋を調べてたとき・・・」
 
令「となると、この声の主はバリーが戦った銃の効かない化け物?!」
 
バ「違いねぇ・・・俺はここを確保しておく、みんなは他を当たってくれ。」
 
ジ「分かったわ、バリーも気をつけてね。」
 
ジルに連れられて、洞窟奥の探索を始める一行。状況が状況だけに、誰も口を開こうとしない。いや、開くと自然とギャグの方向に行ってしまうからという見解の方が正しいだろう。
 
さすがにこの状況下でギャグをやってしまおうなどと考える輩はいない。そして・・・
 
 
ジャラジャラ・・・ジャラジャラ・・・・
 
 
令「さっそうとお出迎えって訳?!」
 
ジ「やるしかないわね・・・いくわよみんな!!」
 
れたすを除く全員が一挙に戦闘態勢に入る。・・・無論目標は鎖の化け物。たとえ倒せなくとも、しばらくの間黙らせておけば周辺の探索に入れると睨んだからだ。
 
令「・・・念っ!・・・波っ!!
 
術札に念を込めて化け物へと投じる美神。札がそれに触れた瞬間、凄まじい轟火が怪物を包み込む!
 
が、当の怪物は自らが炎に包まれていることにも気付いていない素振りで黙々と一行との距離を縮めていく。腐った奴らと同じく、こいつも痛覚という物が存在しないのか?!
 
ジ「一瞬だけでもいい、体勢を崩すことが出来ればっ!!」
 
令「あ、そう言えば・・・こんないい物があったのすっかり忘れてたわ。」
 
そう言うと、美神はイヤリング代わりに耳に付けていた精霊石を一つ手にとって・・・
 
令「必殺、精霊石フラッシュ!!!」
 
 
ぱあぁぁぁぁぁぁっ!!!
 
辺りを凄まじい閃光が包み込み、怪物も思わず目を覆う。その間にジル達は一旦探索を断念し、バリーの元へと戻ることにした。が・・・
 
ぐおぉぉぉぉぉ・・・ん
 
 
エレベータで待機していたバリーが突如自分一人だけで装置を作動させ、エレベータで遙か上方へと上がっていった。ジルの呼び声にも反応する気配もなく、凍ったままの表情で・・・
 
一行の脳裏を絶望の2文字が支配する・・・。
 
令「全く、一体どういうつもりなのかしらバリーは?!今度あったら半殺しだけじゃ済まさないんだから!!」
 
相変わらず執念深い女、美神。と、ここでジルがある異変に気付く。
 
ジ「・・・いちごは?さっきから姿を見ないけど・・・。」
 
令「げっ!!もしかして・・・まださっきの通路の中?!」
 
れ「そんな・・・それじゃいちごさんは!!」
 
令「あんのバカ!人様にここまで迷惑かけんじゃないわよっ!!」
 
 
一方そのころ、変身したいちごは・・・?
 
ミイ「・・・大ピンチって感じね。もう、体力も殆ど残ってないし・・・ってやばっ!」
 
ぶおうっ!!
 
 
ものすごいスピードで振り回される拘束具を間一髪で回避するミュウイチゴ。さっきからこれの繰り返しである。本人が呟いたとおり、次第に体力も残り僅かとなってきた。
 
ミイ(やばっ・・・目が・・目がかすんできた・・・・殴られたときの傷が完全に治ってなかったみたい・・・。)
 
中庭の小屋で殴られたときの傷が再び開き、額から血が流れ出る。その血が目に入り、視界のかすみにさらに拍車をかける。
 
そして、不安定となった足が地面の石につまずき、その場に倒れ込む形となった!!
 
ミイ(まずいっ、やられる!!)
 
 
倒れた視界の先に見える怪物の面影・・・傷口が開くことで出血し、疲れ切った身体はもはやまともに動かすことすらままならくなっていた。
 
そして・・・・ミュウイチゴの意識が再び途切れる・・・。
 
 
 
暗い・・・・何も見えない・・一体ここは何処??
 
美神さん・・ジルさん・・・横島さん・・・・れたす・・・・おキヌちゃん・・・・・・
 
みんな・・・
 
青山くん・・・・
 
 
助けて・・・・
 
 
・・・ん?この感じは・・・・誰、あの子?リサ・・?それがこの子の名前・・・。
 
連れて行かれて・・・注射を打たれてる。えっ・・・何て言ってるの?・・お母さん・・・?
 
そっか・・・あの子、お母さんとはぐれて・・えっ、隣にいる女性(ひと)・・・・
 
この人も・・・子供とはぐれて・・いや、違う!引き離されて・・・実験されてる?!
 
あなたは一体誰なの?!何故あたしにこんなものを?
 
・・・・止めて欲しいの?運命を・・・悪魔から救う?
 
 
ぱあぁぁぁぁぁぁっ!!!!
 
ミイ(きゃあぁぁぁぁぁっ!!!)
 
暗い景色が一挙にまぶしい世界へと変貌し、思わず目をつぶるミュウイチゴ。やがて眩しさに慣れ、恐る恐るまぶたを開けてみると・・・。
 
ミイ「ここは・・・誰かの・・部屋?・・痛ッ!!・・・あ、頭に包帯が巻いてある。」
 
思わず頭部に走った激痛にうずくまるミュウイチゴだったが、怪我を負っている部分に治療が施されていることに気付く。
 
一体誰が・・・?もしや、例の怪物?!・・・まさかな。
 
ミイ「・・・・そうだ、美神さあぁぁぁぁん!!ジルさあぁぁぁぁん!!いたら返事してくださあぁい!!!!
 
 
令『ん、今のって・・・ミュウイチゴ、無事なの?!』
 
ミイ「あ、はいっ!こっちです!!」
 
声をたどって駆けつける美神達。どうやらあれからミュウイチゴの足取りをあっちらこっちら探し回っていたらしく、体中泥だらけである。
 
令「こんっ・・・バカたれっ!!!無事だったからいいようなものの、もし何かあったらどうすんのよ!!」
 
い「ひゃあぅっ・・・ごめんなさい・・・・・。」
 
変身もとけ、すっかりしょげてしまったいちご。何だかんだ言っても自分の心配をしてくれてる辺り、彼女も立派な大人である。
 
令「もしあんたの身に何かあったら私が慰謝料払わなきゃいけないんだからね!!」
 
い「・・・・・・・。」
 
前言撤回、やっぱこいつはこういう女だった。一方で横島とジルは出口がないか周辺を探索しているところだが、どうやら出口を発見したようだ。
 
一室で手に入れたオブジェを片手に急いで脱出する一行。
 
 
部屋奥のはしごを伝って上っていくと、その先はいちごがキッシュと探索していた小屋の中であった。
 
れたすのパソコンからはじき出した残る探索場所、それは中央玄関裏の鉄格子・・・。バリーのことも気にかかるが、今は進むしかない。
 
オブジェをはめ込み、扉を開けて進む一行。扉の先は地下へと通じる長い階段であった。再び続く暗く湿った通路。
 
 
はしごを降り立った一行が目にしたのは、祭壇らしき場所で石棺を調べているバリーの後ろ姿。やがてこちらの気配に気付いたバリーは慌ててジルの方に視線を向ける。
 
ジ「バリーっ!!」
 
バ「おぉ、ジルか・・・すまねぇな、てっきり死んじまったのかと・・・」
 
にこやかな表情の後ろでは、シルバーサーペントが怪しく光っていた。無論ジルがそれを見過ごすはずもなく、ジルに突きつけられるもあっさりと奪われ、逆に今度はバリーの方を睨み付ける形となった。
 
ジ「ふざけないで!!」
 
バ「ちょっと脅かすつもりだったんだ!悪かったって!!」
 
もはやジルには何を言っても無駄だろう。彼女の表情が全てを物語っている。
 
一番信頼を置いていた男に裏切られ、あまつさえ自分の仲間すら危機に追いやられたのだ。彼女の怒りは計り知れない。
 
だが・・・背筋に悪寒を走らせるあの鎖を引きずる音が辺りをこだました。
 
例の鎖の化け物・・・いや、ジルや美神達は既にその正体を知っているように見える。
 
令「リサ=トレヴァー・・・この洋館の設計者であるジョージ=トレヴァーの一人娘。だが、屋敷の完成パーティーのドサクサに紛れて誘拐され、母親と共に人体実験の対象に・・・。」
 
い「み、美神さん!!それは一体・・・?!」
 
 
令「洋館の所々に残された館の設計者の日記と家族連れの写真の裏に記された謎の文章・・・。ま、心理学の応用と霊能力者の勘で導き出した当てずっぽうの推理だけどね。」
 
バ「だが、今はそんなことで悩んでる暇はねぇぞ!ジル、銃を返してくれ!!」
 
ジ「な・・・。」
 
一行の運命は、ジルの選択に任された・・・。
 
 
続く
 
 
あとがき
 
あうぅぅっ・・・長っ!!12話に繋げるために無理矢理ストーリーをひん曲げてるような感が否めません。
 
やっぱり先に12話を書いちゃったのはまずかったかな。話の展開が中途半端な気もしますが、これ以上手直しできそうにもありません。
 
明らかに未熟者です・・・次回からはまともになると思うので今回も見逃してください(泣)。