FightRPG Dat.13「野望の果てに残るもの」
 
 
リサを倒した後、アークレイ山地奥に眠る研究所に潜入した美神達・・・。
 
研究所の奥に進むに従って、狂気の如き研究の実体があらわになる。研究所内の所々に眠るデータの数々。
 
もちろん、洋館内で遭遇した化け物共のデータもいくつか納められていた。
 
 
MA-39ケルベロス・・・ドーベルマンに人為的にt−ウィルスを注入して作った生物兵器。
 
MA-121ハンター・・・人のDNAを培養する課程でハ虫類のDNAをt−ウィルスの力で融合させた怪物。
 
FI-03ネプチューン・・・ホオジロザメにt−ウィルスを投与した凶暴性の高い生物兵器。
 
 
い「何のために・・・こんな怪物達を作る必要があるんでしょうか・・・?」
 
ジ「一番濃い線としては『価値ある武器』といった所かしら?」
 
横「こんな不気味な輩、買う奴らなんているんスか?」
 
令「欲しいと思うヤツはいるんじゃない?軍隊・マフィア・そして警察。世界の4分の1は戦争をしてるしね・・・需要は尽きないわよ?」
 
れ「・・・・非道いですね。ここで犠牲になった人や動物たちも・・・きっと沢山いるんでしょうね。」
 
 
一同『でもこれほど悪趣味な生物兵器ってないと思うわよ(ぞ)、ウェスカー?』
 
そう、一同の目の前にはいつのも様にサングラスに隠して薄笑いを浮かべるウェスカーが立ちつくしていた。
 
そして彼の後方には・・・練馬駐屯地を襲った大男にそっくりの生物兵器が培養カプセルの中で密やかに寝息を立てていた。
 
 
いや、今はそんなことはどうでもいい。問題は後方でジルに銃を向けているバリーだ。
 
令「いい加減そんな物騒な物しまってくれない?バリー。」
 
ウェ「それはできんなMs.美神。私の命令に従わないと可愛い娘と愛する妻の命が危ないそうなんでね。」
 
い「よくも他人事みたいにそんなぬけぬけと・・・。あんたみたいな・・・あんた達みたいな人がいるからリサはぁぁぁぁっ!!
 
 
ばうんっ!!
 
 
ウェ「五月蠅い娘だ・・・。言っておくがあの女は私が造ったのではない。あれは私がここに就任する10数年も前から既にあの姿になっていたのだ。」
 
 
一言の警告とともにウェスカーはハンドガンを下ろす。幸いにも放たれた弾丸はいちごの肩をかすった程度だったが、彼女を黙らせるには十分すぎる一撃だった。
 
ウェ「それに、生物兵器という概念では君らのミュウミュウも似たような物ではないか。」
 
れ「・・・!白金さんのμ(ミュー)プロジェクトをご存じなんですか?!」
 
ウェ「彼の両親がうち立てた理想的とも言える『μ』の存在を知らないはずが無いだろう?無論アンブレラの方も興味津々のようだがな。」
 
い「それってつまり・・・」
 
ウェ「そう・・・君らは既にアンブレラからマークされているのだよ。独立した個体でありながら命令を忠実に遂行し障害を排除できるだけの能力を持つB.O.W.の本質を求めてね・・・。」
 
いちごとれたすは、何故自分達のR・D・Aが『t』を前に警告を発したかがようやく理解できた。
 
 
理由はどうあれ自分達もまた戦うために生み出された存在・・・生物兵器。
 
そして『t』もまた、戦うために生み出された生物兵器・・・。
 
造られた目的こそ大きな違いがあるものの、両者とも似たもの同士の存在なのだ。それ故にミュウミュウのR・D・Aが警告した。
 
 
そう、これ以上生き物の命を弄ばれないように・・・。
 
 
ウェ「バリー、地上で待機していろ。あとは私一人で十分だ。」
 
バ「・・・・・・。」
 
シルバーサーペントを下ろし、その場で回れ右をしてそのまま立ち去ろうとするバリー。
 
ジ「バリー・・・・!」
 
ジルの静かな叫びに、バリーはわずかに戸惑うも、振り切るように立ち去る。
 
 
れ「もしかしてバリーさん、この洋館に到着したときからこの事を思い詰めてたんでしょうか?」
 
ウェ「哀れな男だ。家族を人質に取られたとたんアンブレラに怯えている・・・。全く、おもしろい男だ。」
 
い「よくそんな酷いこと言えるわね・・・今さっき、バリーさんがどんな気持ちでジルさんに銃を向けていたのかも知らないで!!」
 
ウェ「勘違いしてもらっては困るな。確かに脅しはしたがそれはアンブレラの意向だ。私には関係ない。」
 
令「綺麗事をぬかしたところで最終的な主謀者はあんたじゃない。今回の事件のね・・・!」
 
 
勢いよくズバッとウェスカーを指差す美神。いつにもまして恐い・・・。
 
ウェ「・・・ジル、そしてMS.美神・・・君らはとても博識で頭がいい。だが少し思い違いをしているようだな。ウィルス漏洩は予期せぬ事故だったがこいつの覚醒はあくまで私自身のためだ。」
 
といってウェスカーは親指で培養カプセルの中で眠る生物兵器を指差す。気のせいか、とても誇らしげな雰囲気に見える。
 
これに反抗する、さらに怒り浸透のいちご。
 
い「この上まだ何か考えてるの?!これだけ数多くの命を弄んでおいて!!」
 
ウェ「・・・こいつを見ればそんな考えも変わるさ。」
 
ウェスカーは培養カプセルの側にあるコンピュータにデータ入力を行い、中身をライトアップさせた。
 
 
右手とは対照的に、異常なまでに発達した左腕の指とほとんど一つになった巨大なフォークのような爪。
 
発達し過ぎた心臓や動脈が体から露出し、今も不気味に拍動を響かせている。
 
ゾンビと同じく体中の肌が土気色で、右太股の広範囲にわたって腫瘍が出来ていた。
 
 
こんな恐るべき生物兵器を前に、芸術品でも鑑賞するかのような視線でグロい物体を見つめるウェスカー。
 
ウェ「実に美しい・・・。」
 
令「こいつは・・・練馬駐屯地を襲った!!」
 
ウェ「そう・・・これが究極の生命体『タイラント』だ。ちなみに日本の『ネリマ』に送られたのはこいつの量産型だがね。」
 
れ「こんなものが既に量産されているなんて・・・一体何のために?」
 
令「おおかた『武器』として正式に『販売』するつもりなんでしょうね。こんな不気味な奴買う輩なんているとは思えないけど。」
 
ジ「それじゃ・・・最後の質問よ。t−ウィルスに感染した場合の治療法を教えて!」
 
ウェ「簡単なことだ・・・まだ初期の感染段階ならば医療機関向けに市販されている、ウィルスワクチンで簡単に治療できる。最も間に合えばの話だがね・・・。」
 
令「間に合う希望があるんなら、十分よ。」
 
ウェ「どのみち君達はもう終わりだ。あの世に・・・行けっ!」
 
言うが否や、ハンドガンを構えるウェスカーだったが、彼が弾を発射することはなかった。
 
いや、正確には出来なかったのだ。なぜなら、彼が引き金を引こうとした瞬間、後方から発射された弾丸がハンドガンをはじき飛ばし、続いてウェスカーの左肩を貫いたからだ!!
 
一行が振り向くと・・・一度はその場を退いたバリーがシルバーサーペントを構えて立っていた。
 
淡い硝煙の臭いが辺りに立ちこめる・・・。
 
 
バ「・・・すまねぇ、ジル・・・嬢ちゃん達。って、今更俺がこんな事言えた義理じゃねぇけどな。」
 
ジ「何言っているの、バリー。あなたに罪はないわ・・・。」
 
バリーさんっ!!
 
とびっきりの笑顔で出迎えるいちごとれたす。この二人ほど、バリーの再帰を望んでいた者はいないだろう。
 
バ「家族を人質に取られて・・・いろいろ取り返しのつかない事をやっちまったけど、もう俺は・・・仲間を裏切るような真似はしたくねぇ!」
 
い「それでこそ、いつものバリーさんだねっ♪」
 
心からバリーが戻ってきたことを祝福する一行。だが、ウェスカーは再び立ち上がりコンピュータに最後の入力を行う。その様子に気づいたバリーが慌ててウェスカーを止めに入る。
 
バ「止めろ!!」
 
バリーに突き飛ばされながらも、リターンキーを押したウェスカー。そして、培養カプセルから中の水が抜かれ、怪物の心音がダイレクトに聞こえるようになった。そして・・・
 
 
がっ!!ばきっ!!!
 
 
怪物・・・タイラントの右腕の連続打撃に少しずつカプセルが悲鳴を上げ始め、そしてついに・・・
 
 
がっしゃあぁぁぁんっ!!
 
 
特徴的な左腕の一撃で一挙にカプセルが完全に破壊され、大地に足を下ろすタイラント。
 
もし設計通りの知能を持ち合わせているなら、ウェスカーを完全に主と認めることとなる。無論そうなると真っ先に抹殺されるのがジルを含め美神達全員であろう。
 
ウェ「ふ・・ふはははは・・・・全員仲良く地獄へ堕ちるがいい!!」
 
???『そうはいかないな・・・』
 
ウェスカーの罵声の直後、全員の頭の中に響く何者かの声・・・。その直後!
 
ばしゅうん・・・っ
 
突如ジル達の目の前に一人の青年が姿を現した。最初いちごとれたすは『こいつもエイリアンの仲間か?』とか何とか思ったが、その可能性は見事にうち砕かれた。
 
???「いっておくが、オレはエイリアンとか妖怪とかじゃねぇぞ。」
 
横「・・・違うってさ。」
 
い「わざわざ言わなくても分かりますよっ・・・。」
 
???「悪ぃけどウェスカー・・・『t』はもう役立たずでしかねぇ・・・それでも使いたいって言うんなら止めないが・・・」
 
謎の青年が妖しい笑みを浮かべた直後、タイラントはウェスカーの方を向き、徐々に間合いを詰めてゆく・・・。
 
 
ウェ「な、何?!・・・まさか貴様、『プログラム』を!!!」
 
???「そうさ、あんたももう用済みだってさ。・・・我らが主『ディエヴァ様』がな。」
 
ウェ「ディエヴァが・・・だと?!ば、バカな・・・」
 
どしゅっ!!!
 
疑惑の表情を浮かべるウェスカーの上半身を、タイラントの大爪が貫いた!!真っ赤な鮮血が辺りに飛び散り、近場にいた青年の服に血化粧を施す。
 
ウェ「が・・はぁ・・・・・」
 
れ「い・・いや・・・いやあぁぁぁぁぁっ!!!!!
 
あまりの光景に悲鳴を上げるれたす。いちごも悲鳴こそ上げはしなかったが、体中がガタガタ震えている。
 
横島と美神は青ざめた表情で血だらけと化したウェスカーを見つめている・・・。
 
 
???「ふふふ・・・ふはははは☆どうだい?自分の欲した究極生命体に躯を貫かれた気分ってゆーのは?」
 
ウェ「ぐ・・・くそぉ・・・・・」
 
意識が途絶えぐったりとするウェスカー・・・そして。
 
ぶぉうん・・・どさりっ!!
 
 
タイラントがウェスカーを突き刺した大爪ごと左腕を振り下ろし、ボロ雑巾のように元・ウェスカーであった物体を投げ捨てる。
 
 
令「悪党の末路っていうのはサイテーなもんだけど・・・ちょっとこれは行き過ぎね。」
 
横「み、美神さん・・・このシチュエーションだと、タイラントの次の目標って・・・」
 
???「そう、あんたらだ。真実を知られて公表されるにゃ些かまだ早いんでね。ここで消えて貰うよ。」
 
青年の言葉通り、タイラントが再び向き直る。目標はもちろん、リーダー格のジルと美神。
 
ディテイル(以下ディ)「オレのコードネームは『ディテイル』。縁があったらまた会おうぜ、お嬢さん方・・・。」
 
ばしゅうん・・・っ
 
丁寧にお辞儀をしたディテイルは、再び異次元の彼方へと消えていった。そして残されたジル達。
 
 
令「さぁて・・・こっちはこっちでお掃除始めますか!いちごちゃんは後方で待機してなさい!!エネルギーが回復するまで時間があるでしょう?!」
 
い「は・・はい・・・。恥ずかしながら・・・。」
 
ジ「OK!!行きましょう!!!」
 
れ「ミュウミュウレタス・・メタモルフォォォゼッ!!!」
 
スナメリの遺伝子を覚醒させ、ミュウレタスへと変身するれたす!!そして、中庭墓地で手にいれた.357マグナムを構えてジルが雄叫びをあげる!!
 
ジ「来い、フランケンっ!!!」
 
 
ジルのその雄叫びに呼応するように、タイラントが大爪を構えて一挙に振り下ろすっ!!
 
 
がきゃっっっっ!!!
 
 
タイラントの一撃は幸いにも誰にも当たらなかった。が、放たれた攻撃は辺りの計器に文字通り凄まじい爪痕を残した。だが、それはタイラントからしてみればどうと言うこともない。
 
最大のピンチは、この狭い通路内で彼の巨体が蓋をしてしまい、自由に逃げ回ることもままならないからだ。
 
令「ミュウレタス!まずは奴の動きを封じるのよ!!」
 
ミレ「はいっ・・・リボーンッ・レタスラァァァッシュ!!!
 
レタスネットから放たれる大量の水流がタイラントを壁際へと追いやる!その隙を逃さまいと、すかさず懐へと飛び込むジルとバリー。そして、互いにマグナムを構えて・・・
 
 
バ・ジ「「盛大に鉛弾をプレゼントしてやるぜっ(わよっ)!!!」」
 
 
タイラントの腹部に零距離でのマグナム一斉連射を繰り出す二人。立ち直ったバリーとジルのコンビネーションはパーフェクトだ!!
 
しかし、さすがは究極の生命体。ウェスカーガ自慢していただけあって、今の集中攻撃にもビクともしていない。
 
 
令「何てタフな奴なの?!」
 
横「美神さん、ジルさんっ!!これ(手榴弾)使って下さいっ!!!」
 
そういうと横島はリュックから取りだした手榴弾をジルと美神に投げ渡す。
 
 
令「サンキュー横島クンっ!!・・・ジル、いけるわね?!」
 
ジ「ええ、銃がダメなら・・・・」
 
言うとミュウレタスが再びレタスラッシュで美神とジルを援護する!!負けじとバリーもシルバーサーペントでタイラントの動きを封じにかかった。
 
 
ジ「お前は生きていてはいけない生き物なんだぁぁぁっ!!」
 
がっ!どっ!!ぐぼっ!!!
 
 
巧みにジャンプしながらタイラントの心臓・口内・先程のマグナム制射で出来た腹部の穴にそれぞれ手榴弾を押し込んで後方に転がる形で下がるジル。
 
そして、全員が物陰に伏せたのを確認した美神が、タイラントに向けて自分の持っていた分の手榴弾を投げつけた!!
 
 
ちゅどどどどどどぉぉぉぉぉんっ!!!
 
 
凄まじい連続爆破音と衝撃と共に、まきあがる土煙と瓦礫の破片。この零距離での爆発には一溜まりもなかったのか、ようやくその場に崩れ落ちるタイラント。
 
流血こそしないものの、意識は完全になくなったと見て間違いないだろう。
 
そして数分後・・・瓦礫を押し上げてバリーが姿を現した。瓦礫から身を挺してジルといちごを守っていたのだ。
 
残る美神・横島・ミュウレタスはおキヌが用意していた結界の中で何とか無事にやり過ごしていた。
 
 
令「・・・ふぅ、さすがにここまでやられちゃ立ち上がれないでしょ。」
 
バ「・・終わったんだな。」
 
ジ「いえ、まだよ。無事にここから生きて出られるまではっ!!」
 
れ「そうですね、それに・・・日本に残してきた皆さんのことも心配ですし、一刻も早く日本に帰らなきゃ・・・。」
 
 
ウェスカーの言っていたことが本当なら、日本に残っている残りのミュウミュウ達を誘拐したのはアンブレラの一味である可能性が高い!!
 
そう判断した一同は一刻も早く日本との連絡を執り行いたかった。が、
 
 
令「・・・・ウェスカーは?あの傷で動けるとは思えないんだけど?!」
 
バ「何っ?!・・・ホントだ死体がねぇ!!」
 
ジ「やられた・・・まだ生きていたなんて。」
 
い「とにかく、ここを出ましょう!!」
 
 
瓦礫の山をかき分け、部屋の出口へと向かう一同。そして、部屋を出た直後・・・!
 
 
『起爆装置が作動しました。繰り返します、起爆装置が作動しました。研究員は所定の脱出路で速やかに避難してください』
 
 
研究所全体に異様なアナウンスが流れる。こんな事しでかす奴はこの世でただ一人しかいない!
 
バ「・・・ウェスカーの仕業か。行くぞみんな!!!」
 
一同『はいっ(ええ)!!!!』
 
頼れる兄貴分が帰ってきて、一段と志気が高まった一同であった・・・。
 
 
続く
 
 
あとがき
 
ミュウミュウの変身時の叫び、今回初で出てきましたがはっきり言っててきとーです。
 
だってアニメ版で聞いた限りではあんな感じの発音だったんだもん。←横暴
 
結構今回の戦闘シーンは派手目に描いたつもりでしたが、いかがでしたでしょうか?
 
次回はいよいよ狂気奮闘編ラストです。