FightRPG Dat.19「水剣の勇者」
 
 
紅麗「・・・・・小金井、何をしている?」
 
薫「あ・・・紅麗。これは、えと・・・・その」
 
自分の立場を忘れ、人質達と遊びほうけていた小金井に凍り付くような視線を送る紅麗。
 
すると、雰囲気を察したのか、みんとが2人の会話に割って入る。
 
 
み「ご心配なさらずとも、この方はわたくし達が勝手にこの遊びに引き入れましたのよ。」
 
歩「そういう訳なのだ。薫のお兄ちゃんは何にも悪くないのだ〜!」
 
紅麗「・・・・困りますねぇ。あなた方はもっと自分達の置かれた状況という物を理解した方がいいかと思いますよ?」
 
ざ「忠告として受け取っておくわ。・・・ところで、外が騒がしいようだけど何かあったの?」
 
小金井の次はミュウミュウの3人に冷たい視線を送る紅麗に、ざくろが巧みに話題を逸らした。
 
それを聞いて、今以上に凍り付きそうな表情(といっても顔の殆どは仮面で隠れているが)でざくろの問いに答えつつ、数枚の写真を彼女達の前に放り投げる。
 
 
紅麗「・・・侵入者です。それは恐らく、あなた達が最も知っている人達ですよ。」
 
み「ふぅ・・・どうやらフィリアさん達が駆けつけてきてくれたようですわね。」
 
柳「・・・・烈火くん。烈火くんだよ!!あはっ、来てくれたんだぁ♪」
 
紅麗「!!!!!!!」
 
ざ(何・・・?!この身体の奥底まで響くような冷たい空気は?)
 
柳の一言を聞くなり、さらに表情を曇らせる紅麗。それに伴い監禁部屋の空気が一気に張りつめる。と・・・
 
 
ジェ「そんなにピリピリしなさんな。まずは仕事の方を片づけて貰わなくちゃならないんだから。」
 
紅麗「・・・・・ジェシーですか。勿論仕事はきちんとこなしますよ・・・。ですが」
 
ジェシー「言っとくけど、あんたの私怨の為だけにプランターを使われたんじゃこっちは良い迷惑だわ。・・・いいわ、侵入者は私が排除するから。
 
紅麗「なりませんっ!!あの男・・・・あの男だけは!」
 
ざ(どうやら・・・協力関係はあっても信頼関係は無いに等しいみたいね。)
 
み(それに・・・何ですの、この方?)
 
柳(烈火くんの事を聞くなり雰囲気が変わった?!)
 
こわばった表情のままジェシーを制止しようとする紅麗だが、彼女の肩を掴もうとした瞬間、彼女はシュンッと音を立てて消えた。
 
 
ジェシー『・・・・心配いらないわよ。別に殺しはしない、時間を稼ぐだけよ。お姫様達の事を調べ上げるだけの時間を・・・ね。』
 
紅麗「そうしてくれる事を切に願いますよ。さて・・・」
 
辺りに響くジェシーの台詞に表情を殆ど変えず答え、紅麗は小金井のほうに向き直った。
 
 
紅麗「小金井、先回りしてジェシーより先に侵入者を排除しなさい。手段は問いません・・・。」
 
薫「分かった・・・お姉ちゃん達、そういうワケだからオレ行くね。」
 
ざ「こっちの事は心配しないでいいわ。頑張ってらっしゃい。」
 
み「まぁ、フィリアさん達が錚々やられるとは思えませんけど。」
 
紅麗「・・・・だからなんでそんなに余裕かましていられるんですかあなた達は?一応人質なんですよ?」
 
 
紅麗の命令によりフィリア達の元へ向かおうとする小金井を笑顔で見送るざくろとみんとの様子を見るなり
 
不思議でならないといった表情を見せる紅麗。
 
 
み「まぁ喧嘩をお売りになられたメンツがメンツですので・・・ご愁傷様ですわ。
 
紅麗「・・・・・・。」
 
自信家というか何というか・・・笑顔で毒づくみんと。同じ金持ち一族の者としてつくづく彼女の凄さをかいま見た紅麗であった。
 
 
 
〜一方そのころ、フィリア達は〜
 
 
フィ&烈『ヘクシミリ!!』←くしゃみのつもりらしい
 
セ「なんだかどこかで聞いたことのあるようなくしゃみですね。」
 
風「いったい何処のどいつだ?この二人の噂なんかしてるのは。」
 
そのツッコミは少し酷いと思うぞ風子。などと思いつつ凹む忍(しのび)と23歳。
 
 
フィ「ぐしっ・・・大方、みんとちゃんあたりでしょうね。あのコ毒舌ツッコミ得意だし。」
 
土「笑えねぇ・・・。」
 
生々しい事実なだけに仲間になって日が浅い土門達でも、フィリア達の境遇に同情する。
 
現在屋敷の3F。石王を倒したのが屋敷のSPの皆さんに響いたのか、ここまで何の障害に出会うことなく進んでこれた。
 
時々すれ違うSPの目つきがなんだか人外のモノを見つめるような感じ
 
当事者達(誰の事だかはあえて触れまい・・・)はやや凹み気味だったが。
 
ずしん...
 
 
烈「ん、何だ?今のは??」
 
風「まさか土門・・・お前、こいたか?!
 
土「なっ・・・ちょっと待て風子!!いくらオレのでも地響き起こす程じゃねーぞ!!」
 
フィ「その前に『こいたか?』なんていう女の子らしからぬボケに
ツッコミ入れる方が先だと思うけど。」
 
脱線してしまっている土門のツッコミに更につっこむフィリア。こういうのももはや手慣れたモノだ。
 
だが、もちろん先ほどの擬音は土門の腸内ガス(刺)などではなく、その場所にある、何らかの仕掛けが作動した音だった。
 
 
ずずずずずずず・・・・・
 
天井がつり下がり始め、一同に襲いかかってきたのだ!!
 
 
香「うえぇっ!!?な、何これぇっ!!」
 
土「だぁぁーっ、ちくしょぉぉぉっ!!」
 
どんどん迫ってくる天井を自慢の怪力で支える土門。だが、さすがの彼も機械の力で迫ってくる天井のパワーには勝てないのか・・・
 
体のあちこちで悲鳴がこだまする。
 
少年の声「へぇぇーっ・・・なかなかやるじゃん。」
 
 
声の主は・・・先ほど紅麗に命ぜられて烈火達の始末をしにきた小金井だった。いつものように小悪魔よろしく微笑を浮かべながらパーティーを見回す。
 
 
烈「あぁぁぁぁぁっ!!!てめえは姫と先生をさらったクソガキじゃねぇか!!」
 
フィ「先生・・・って、学校の先生も拉致られてたの?!」
 
風「正確には歴史の立迫文夫先生。烈火が異常に興味津々だった忍者組織『火影』にこれまた以上に詳しかったんだ。」
 
セ「なんだか複雑ですねぇ・・・。」
 
薫「話は変わるけど・・・、柳姉ちゃんのナイト様って、誰?」
 
セ「・・・・はい?」
 
いきなり小金井の口から飛び出した質問に、思わずボー然とする一同。それだけ今の状況にふさわしくない内容なのだ。
 
あっけらかんに取られつつも、香澄が改めて小金井に尋ねる。
 
 
香「質問の意味がわかんないんだけど・・・?」
 
薫「だからさぁ・・・柳姉ちゃんを助けにきたって言うナイト様って誰のことなのかって聞いてんの。全く、これだからおばさんは・・・。」
 
香「!!!!!」
 
直後、香澄の中で何かが切れた・・・・。
 
 
香「誰が・・・・可愛げのない・・・大根足の・・・・・適齢期過ぎたおばさんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
 
薫「誰もそこまで言ってないってぇぇぇぇぇぇっ!!」
 
禁句に触れてしまった小金井に対し、問答無用と言わんばかりに持っていたアサルトライフルを乱射する香澄。
 
お国を護る国家公務員がこんなんでええんかという一方で、自衛官の女性ってやっぱし切実なんだなぁと間違った知識を習得した民間人一同。
 
 
フィ「あ・・えと、セリカちゃん。天井、何とか出来る?」
 
セ「え、あ、はい。」
 
土門が必死になって支えている天井に向かって拳を構え・・・
 
 
セ「二重の極みぃっ!!!」
 
フィ「その技はいろんな意味でまずいからっ!!!」
 
フィリアの制止もむなしく、非常にマズい技を繰り出して天井を・・・・文字通り木っ端微塵に砕いたセリカ。
 
いつかはやるんじゃないかと思ってただけに、フィリアの落ち込み様もひとしおだ。
 
 
薫「おぉ・・・・素手でこの仕掛けを留めた兄ちゃんといい、素手で天井を粉々に砕いたコといい・・・・スゴイねお姉ちゃん達。」
 
風「それはそうと・・・質問に答えなきゃな。話の流れで行くと、この場合柳を助けに行きたいって『イ』の一番に言い出したの烈火だし・・・。」
 
土「つぅワケでナイト様っていうのは花菱ってコトになるな。」
 
薫「えぇ〜この兄ちゃん?確かに強そうだけど・・・カッコイイっていうほどの外見じゃないし。」
 
烈「こら小僧、人は外見で判断しちゃいけませんって学校で習ってねぇのか?」
 
烈火のツッコミなどいざ知らず。小金井は更に酷いことを口にした。
 
 
薫「どちらかっていうとこっちのおばさんの方がそれっぽくてしっくりくるなぁと」
 
おばさん「だぁかぁらぁっ・・・私はまだ23歳だっつーのっ!!
まだまだお年頃な乙女だし・・・ってさりげに名前の所を『おばさん』に変換するなぁぁぁぁぁぁっ!!
 
今度は怒りを通り越して泣き顔になる香澄。オイオイと大粒の涙をこぼしてその場に崩れ落ちる。
 
???「はぁ・・・全く、君たちはいったい何がしたいんだ。」
 
 
瞬っ!!
 
テンションがどんどん低下していく香澄と、その状況に微妙におどおどしている一同の中央を突き抜け、
 
そのまま一直線に小金井の懐に入り込んで一撃。
 
無論それを避けられない小金井ではなかった。紙一重でその一閃をかわしきり、自慢の魔導具『鋼金暗器』を構えて戦闘態勢に移行する。
 
 
???「ほう・・・この一撃をかわすとは。ただの子供じゃないな?」
 
薫「兄ちゃんこそ、一瞬で間合いを詰めるなんて・・・なかなかの腕前だね。」
 
はにかみながら答える小金井と対照的に、眉ひとつ動かさず剣の形をした自前の魔導具『閻水』を構える青年。
 
 
烈「あんたがこんな所に来るなんて・・・どういう風の吹き回しだ?水鏡凍季也。」
 
セ「それじゃ、説明お願いします風子お姉様。」
 
風「・・・同じ学校の水鏡先輩。柳がらみで一回烈火をボコってる。」
 
みんとの真似をしつつセリカが聞いてくるもんだから風子ちん鳥肌モード全開。
 
それでもちゃんと答えられるというのは心の奥で優越感みたいなモノを感じていたものと思われる。
 
 
フィ「一瞬赤坂君が白金君引き連れてやって来たのかと思った。」
 
セ「どちらかというと私はガンダムのパイロットの方かと。」
 
凍季也(以下凍)「それ以上下らないネタで話の進行を妨害するなエテモンキー×2。」
 
 
ちゅどーんっ!
 
 
二人の頭が一斉に噴火し、先程の香澄以上に殺気じみた表情で戦闘モードスイッチオン。目標・・・緑川CVのキザ男。
 
 
フィ&セ『We’re kill you!!!』
 
土「落ち着いて二人ともっ!!あいつなりに場の雰囲気を和ませようと言ったんだろうからっ!!!」←罵られるのに慣れてる
 
烈(オレなんてこの前シーモンキーなんて呼ばれちまったしなぁ・・・。)
 
土門の制止で何とか持っているものの、まさに一触即発、逆鱗爆発状態。
 
そんな二人を後目に改めて小金井の方に向き直りつつ、烈火に毒付く水鏡。
 
 
凍「不甲斐ないな、花菱。」
 
烈「あん?!どういうこった!!」
 
凍「お前は柳さんの忍となり、命をかけて護る立場になると誓った。しかしどうだ・・・。」
 
水鏡は一瞬間をおいて再び烈火に問いただす。
 
 
凍「実際はどうだ。みすみす彼女をさらわれ、未だに助け出せずにいる。挙げ句の果てにはバカザル共と仲良く談笑か?」
 
烈「・・・判ってらぁ。つまりてめえはこう言いたいんだろ?『約束をちゃんと守れ』って。」
 
凍「・・・・なんだか脱線しているような気がするがそんな所だ。」
 
烈「言われなくても百も承知だ。」
 
聞くだけ無駄だったようだ。バカやっているように見えてもちゃんと本心は一番大切な人の方に向いている。
 
それが確認できただけでも水鏡としては十分だった。
 
 
凍「だったら早く行け。・・・僕は子ザル共の援護をしてやる。どうやらまだ懲りていないようだからな。」
 
『だから子ザル言うな!!』と後ろの方でヤジが聞こえたような気がするがこの際無視だ。
 
水鏡の言った通り、小金井は大好きなスポーツをするような笑顔を浮かべながらストレッチを繰り返している。
 
それじゃあ遠慮なくといった感じで、土門は女性陣を何とか宥めつつ次の部屋へと通じるドアを開ける。
 
 
烈「サンキュ水鏡、助かるぜ!!」
 
フィ「あんたね、次会ったときは覚悟しときなさいよっ!!」
 
セ「そうですよっ!!その時にはフレアアローの連続詠唱をお見舞いしちゃいますよっ!!
 
風「ついでに風子ちゃんのツインバスターライフルもなっ!!」
 
さすがにその連続技はキツいかも・・・などと同時に肝が冷えた水鏡と小金井だった。
 
 
続く
 
 
あとがき
 
久々だなぁ忍者烈進編。今回は苦労したけど後半はネタが湧き出てきたからまだマシな方ですね。
 
それにしても香澄は年齢ネタでいじりやすい・・・。まるでMXのアクア姉みたいだ。
 
・・・なんてネタにしてますけど、当事者からすればすっごく切実なんですホント。