FightRPG Dat.7「死せる者達への鎮魂歌(レクイエム)」
 
アークレイ山地ふもとの林内で、突如腐りかけのゾンビ犬に襲われた一行。
 
間一髪のところで明かりの灯る洋館に逃げ込んだが・・・その中にはクリスの姿はなかった。
 
 
令「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・・ここまでくればもう大丈夫でしょう。」
 
横「あ〜〜マジで死ぬかと思った。」
 
い「・・・・・・」
 
そんな中、未だに現状が把握し切れていないいちご。無理もない・・・
 
いきなりこんな生臭い空気の漂う世界に放り込まれたのだ。
 
こんな中平常心を保っていろという方が無理難題だ。普段は冷静なジルでさえ、心の動揺は隠せない。
 
無論、先程ケビンの死体を見るなり失神したれたすは言うまでもなかった。
 
い「・・・一体、何だっていうの?!あたし達、これからどうなっちゃうの!?」
 
令「落ち着きなさい!・・・悪いけど、今はそれどころじゃないの・・・。」
 
れ「どういうことですか?」
 
令「・・・・クリスの姿がないの。」
 
一同『!!!!!!!』
 
ウェスカーを除く全員の表情が凍り付く。いくら百戦錬磨のクリスとはいえ、
 
あんな訳の分からない怪物が相手ではとてもじゃないが太刀打ちできない。
 
有無をいわさず玄関のドアに手を伸ばすジル。しかし、ウェスカーが冷静にジルの行動を遮る。
 
ウェ「よせ、ジル!外に出るのは危険だ!」
 
ジ「でもクリスが」
 
 
バンッ!!
 
 
ジルが全てを言い終える前に、洋館内に響く銃声。
 
ジ「今のは?!」
 
ウェ「クリスか・・・?」
 
沈黙・・・・
 
い「・・・・あたし、ちょっと様子を見てきます。」
 
令「いちごちゃん?!」
 
れ「いちごさんが行くのなら私も行きます。」
 
以外にもミュウミュウの二人が名乗り出てきた。
 
確かに変身すればこの状況下でも彼女たちの戦闘能力は頼りになるが、いかんせん状況が状況だ。
 
ましてや、彼女らは中身・・・つまり心は全く普通の女の子。ああいう異質な者を相手に出来るほど強くはない。
 
バ「ちょっと待ってくれ。・・・俺も行くぜ。クリスとは古いからな。」
 
ジ「私も行くわ。皆のバックアップくらいなら出来ると思うから。」
 
ウェ「よし、私はここで居場所を確保しておく。皆は銃声の元を調べてきてくれ。」
 
バ・ジ「「了解。」」
 
ジル・バリー、各々の銃を構え、扉のドアノブにそっと手を添え・・・。
 
ばたんっ!!
 
勢い良くドアを開き、部屋に進入すると同時にバリーがシルバーサーペントを構えて攻撃態勢を維持する。
 
そして・・・
 
 
食堂らしき部屋に、一行はそっと入り込む。チクタクと年代物の振り子時計の音と、一行の足音だけが部屋に響き渡る。
 
 
い「・・・何も、無いみたいね。」
 
横「しっかし珍しいよな〜。今のご時世にこんな年代物の屋敷があるなんてよ。」
 
辺りを見回す横島。一方の美神は、表情を曇らせながら辺りを見回しながら何かに気付いた。
 
令「・・・おかしいわね。」
 
れ「何がです?」
 
令「霊気が感じられないのよ。あれだけ外にゾンビ犬が徘徊してたのよ?少なくともこの屋敷の中にもそれらしき気配があってもおかしくないのに・・・それが全く感じられない。」
 
い「・・・あたしも同意見です。」
 
令「どういうこと?」
 
い「はっきりとは分からないんですけど・・・あたしの中で、何かが警告しているように感じたんです。」
 
れ「私も似たような物を感じました。何だか・・・言葉では言い表せないような・・・禍々しい力に対する警告を。」
 
三人の話を総合すると、奴らは物の怪の類ではないということか。
 
 
食堂を大分奥まで進んだとき、バリーが何かに気付いた。
 
バ「?!皆、ちょっと来てくれ!!」
 
あわてて駆け寄る一同。バリーの足下には、何者のかも分からぬ血液が広がっていた。
 
気のせいか、少しどす黒い。
 
 
ジ「・・・血?」
 
バ「分からない・・・。ジル、他をあたってみてくれ。俺達はこいつを調べる。」
 
達・・ってことはあたし等も入るんかい。と心の中で思いつつも、それが妥当だと美神達は納得した。
 
ジ「了解。・・・でも、援護で一人か二人ほしいわね。」
 
となると、指名されるのは・・・・?
 
横「お、俺ッスか?!」
 
令「あんた以外に誰がいるのよ?」
 
聞くまでもなかったようだ。
 
おキヌ「じゃ、私も一緒に行きます。私幽霊ですから相手には触れられません。」
 
令「そうね、イザとなったら相手を絞め殺してちょうだい。」
 
ゾンビ犬にビキニ姿でヘッドロックもしくはチョークを繰り出すおキヌの姿を想像し、
 
ちょっとふいてしまった同年代少女二人(←いちご・れたす)。
 
ジ「・・・幽霊がどうやって絞め殺すのよ。」
 
令「あら、こう見えてもおキヌちゃんは300年幽霊やってるから物には触れるし、普通の人にも見えるし普通に会話だってできる。」
 
横「よし、ジルさん行きましょう!!」
 
ジルの手を取り、妙に張り切る横島。当然何を考えているか何て事は分かりきっているのであえて書かない。
 
無論、美神とて例外ではない。
 
令「横島クン・・・?もし国際的問題にまで発展することやらかしたら懲戒免職ぐらいじゃ済まされないから覚悟しておきなさい。
 
美神以外全員((((((脅しだ・・・完璧に脅迫してる。))))))
 
横島の性格を一番分かっているだけに、一番始末に負えないと言えよう。
 
終始ビクビク怯えながらおキヌ・ジルと共に扉をくぐる横島。その様子を後方から見送る4人。
 
バリーは引き続き、床に広がる血だまりの調査を開始した。とは言っても専門的な器具は持ち合わせていない。
 
指で触ったりして、感触を確かめている。さすがに臭ったり舐めたりは出来ないが・・・。
 
そんなバリーの姿を側で見つめるいちご。
 
 
い「・・・バリーさんは、怖くないんですか?」
 
バ「ん?・・・まぁ、俺も何だかんだで人間だからな。嬢ちゃんは・・・怖いのか?」
 
い「少し・・・。さっきだって、横島さんに助けてもらうまで自分一人じゃ何もできなかったし・・・。」
 
少し照れくさそうに呟くいちご。さすがに微笑ましく・・・とまではいかないが、バリーも若干緊張が緩んだように見える。
 
 
あの時、横島がいち早く攻撃していなかったら・・・自分もあんな風になっていたのかも知れない。
 
ヘリの残骸の中で息絶えたケビンのように・・・。私もあんな風に・・・死ぬ。そう思うとどうしようもできなかった。
 
しかし、彼女を突き動かしていたのはそんな安っぽい感情からではなかった。
 
 
い「いつまでも、人に頼りっきりじゃ強くなんかなれないし・・・、好きな人にもいつかは見放されるかも知れない。そうなりたくないから頑張りたいんです。」
 
れ「私も同じです・・・。理由はどうあれ、私達は美神さんと一緒にこの事件を解決するためにアメリカまで来たんです。ここで逃げちゃ、日本に残ってるみんなに顔向けできませんし。」
 
バ「へぇ・・・なかなか味な事言うじゃないか。・・・俺も出来ることなら、一人で皆を守れるほど強くなりたい所だがな・・・。」
 
何かを思い詰めるように考え込むバリー。美神も、それに呼応するように話しかけてきた。
 
令「一つ言わせて貰うけど・・・そう思うんだったらもう少し自分に素直になんなさい。こういうときは、いちごちゃん達みたいな普通の女の子は怖がって当然なんだから。」
 
い「美神さん・・・。」
 
令「ま、死なない程度に頑張りなさい。・・・私からはこれだけしか言えないわ。」
 
素直じゃない20歳。
 
令「そうそう、二人に渡しておく物があったんだわ。」
 
そういうと胸元から何やらごそごそと取り出す美神。それは紛れもないスタンガンだった。
 
れ・い「「み、美神さん・・・これは一体?」」←ハモった
 
令「見れば分かるでしょ、スタンガンよ。護身用に取っておきなさい。」
 
相変わらず体中に何を仕込んでいるか分からない女であった。そして、いちご・れたすの二人が
 
スタンガンに手を伸ばそうとした、その時!!
 
ばたんっ!!
 
先程ジル達が進んでいったドアがけたたましく開かれ、息を荒らしながら三人が一行の元へと逃げ帰ってくる。
 
バ「どうした?!」
 
ジル達の後方には、異様な形相をした人間・・・いや、もはやそれはヒトと呼べるほどの原形は止めていない。
 
体中の皮膚は爛れ、肉が腐れ落ちて所々骨が露出している。力無く肉が踏みしめられるような足音をたてながら化け物は着実にジル達との距離を縮めていく!
 
ジ「気を付けて!奴はモンスターよっ!!」
 
先程まで強がっていたいちご・れたすも再び言葉を失い、放心状態に陥る。
 
バ「俺に任せろっ!!」
 
言うが否や、バリーは愛用のシルバーサーペントを構え、ゾンビの身体に鉛弾をブチ込む!!
 
ズドウンッ!!
 
しかし、一瞬の衝撃によってよろめいただけで、ゾンビは歩みを止めようともしない。
 
かまわずバリーは続けてマグナムを撃ち続ける!!
 
ズドウンッ!!
 
2発目で少し勢いが落ちてきたゾンビにバリーが銃を構え直し、引き金を引いた瞬間、トドメの一撃が放たれた!!
 
ズドウンッ!!
 
体組織を完全にズタズタにされ、その場に倒れ込むゾンビ。床に新たな鮮血が広がる・・・。
 
バ「一体、何なんだこいつは?!」
 
令「横島クン、一体何があったの?説明して!!」
 
横「そ、それが俺にもよく分からないんスよ!近寄ってみると、人の喉笛噛み切ってそのまま喰ってるし、しかも喰われてたのがジルさんの同僚らしいし・・・てんやわんやッスよ!!」
 
令「人を?!」
 
全く人知を越えていた。というよりも、狂っているとしか言いようがなかった。
 
い「・・・・ダメ?どういう事?・・・近寄っちゃダメ?」
 
れ「ヒトが生み出した、欲の結晶?・・・どういうことなの?」
 
令「ちょ、どうしたの二人とも?!しっかりしなさい!!」
 
ゾンビの死体を目の当たりにし、何かに取り憑かれたように自問自答を繰り返すいちごとれたす。
 
あわてて美神が彼女らの肩をゆさゆさと揺さぶり、平常心を取り戻させる。
 
い「・・・・ふぁ?あ、あれ??あたし・・・どうしちゃったんだろ?」
 
令「それはこっちのセリフよ!一体どうしたっていうの?」
 
れ「よく分からないんですが・・・私達のレッド・データ・アニマルが、警告していたように聞こえたんです。」
 
令「R・D・A(レッド・データ・アニマルの略)が?!どうして?」
 
い「分かりません・・・でもこれだけは言えます。こいつ等ゾンビは、自然界には存在してはいけない何かによって生み出されたんです!!
 
ジ「生み出された?・・・一体どういうこと??」
 
バ「とにかく、ウェスカーに報告しよう。先ずはそれからだ。」
 
バリーの指揮の元、急いで中央玄関へと戻る一行。そして扉を開けると・・・
 
 
ウェスカーの姿は、もはや玄関には存在しなかった。さっきまでそこにいたのに・・・この数分間の間に、煙のように消えてしまったのだ。
 
 
バ「ウェスカー!!」
 
バリーの呼びかけにも反応はない。無情にも彼の声が玄関全体に響き渡る・・・。
 
ジ「一体どうなってるの?!クリスだけじゃなく、ウェスカーまで居なくなるなんて・・・。」
 
バ「・・・一応玄関全体を探してみよう。あいつの性格からいってかくれんぼなんて幼稚なマネはしないと思うが、念のためだ。嬢ちゃん達も協力してくれ。くれぐれもこの部屋から出るんじゃないぞ。」
 
い・れ「「はいっ!」」
 
各自散開し、玄関ホール全体を歩き回ってウェスカーを探し回る。だが・・・
 
どこにもいない。本当に消えてしまったのか?!
 
バ「どうだ、いたか?」
 
ジ「いえ。」
 
い「こっちにもいません!」
 
れ「こっちもです!」
 
二階部分・ホール奥の通路を散策していたいちごとれたすも同様に答える。
 
 
ジ「もう・・・何が何だか分からなくなってきたわ!」
 
バ「ああ、俺も同感だ。・・・とにかくこうしても何も始まらねぇ。脱出経路を探そう。」
 
令「そうね。おキヌちゃん、しばらく屋敷の上空で辺りを散策してきて。多分この山奥だからヘリポートぐらいあると思うんだけど・・・。やってくれる?」
 
おキヌ「はい、分かりました!」
 
挙手の敬礼のポーズを取るなり、おキヌは天井を突き抜けて外へと飛び立った。
 
 
バ「外からの散策はあの幽霊の嬢ちゃんに任せるとして・・・ジル、それと他の嬢ちゃん達は東側の部分から調べていってくれ。俺はまた食堂付近を調べる。」
 
ジ「分かったわ。落ち合い場所はこの中央玄関でいいわね?」
 
バ「ああ。それと・・・キーピックだ。お前が持ってた方が都合がいいだろう。ホラ。」
 
そういうと、バリーはジルにキーピックを投げ渡す。
 
キーピックは専用の開錠ツール。手先の器用なジルの手に掛かれば、一昔前の鍵などたちどころに開いてしまう。
 
まさに、鬼に金棒といえよう。
 
ジ「ありがとう、使わせて貰うわ。」
 
最後に、『頼んだぞ』と言い残して、バリーは再び食堂へと消えていった。
 
そして、生き残りを賭けたサバイバルゲームが今、始まろうとしていた・・・。
 
 
続く
 
 
あとがき
 
長げぇなオイ&しかもストーリーの殆どがバイオかい!!←一人ツッコミ
 
何だか狂気奮闘編に入ってから、いちごが貧弱化&ヒロイン化してきてる気がする。
 
バイオ主人公(の一人)であるジルを差し置いて・・・。
 
当分シリアスな雰囲気が続くのでギャグが無くなると思われますが、ご了承下さい・・・。