ガチャ←ドアを開ける音
第一話「宅配便から始まる悪夢」
 
 
 
200X年2月某日、日曜日。
 
二十一世紀に突入しても、この一家の一日はこれから始まる。
 
「皆さぁーん、朝食の支度ができましたよぉー!」
 
「うわぁ、俺もう腹ぺこ。」
 
「いい匂いじゃない。今日の朝ご飯はいったい何かしら?」
 
「・・・・ねむ(眠)。」
ここ七梨家の朝食の場面はだいたいこんな感じで始まる。
 
これ系統の話を初めて見る人のために、順に声の主をお教えしよう。先ほどの会話を例に、上から順にシャオ・太助・ルーアン・キリュウの順となっている。
 
まあこの小説を見ている人の大多数は、すでに人格や人間関係を把握していると思われるので、詳しい説明は抜きにしよう(ページも少ないし)。
 
「今日の朝ご飯は・・・こーんしりあるに、フレンチトーストにしてみましたぁ。」
 
「シャオ、コーンシリアルだって。」
 
微妙に発音が鈍っていたので、太助が的確にシャオに教える。
 
文章ではどんな発音をしてるのか分かりづらいだろうが、まぁ『コ』と『リ』に奇妙なアクセントが混じっていたと思ってくれればいいだろう。
 
「たー様そんな発音の問題はどうでもいいからさっさと食べちゃいましょうよ!」
 
腹ヘリのルーアンが太助をせかす。朝っぱらからでも彼女は食欲旺盛なのだ。
 
「じゃあ・・・いただきます!!
 
と、太助がスプーンを手に取ったその時
 
『ちわー、七梨さん宅配便でーす!』
 
「・・・・・・。」←太助(沈黙)
 
「・・・・ん?」
 
「太助様、宅配便さんがいらっしゃったみたいなんですけど?」
 
シャオの問いに頭をうつむかせる太助。
 
「出たくない・・・。」
 
「だが主殿、このままでは宅配会社の方が・・・」
 
「見たくない!どうせ姉貴か親父からの小包に決まってる!」
 
そう、彼はこの変態肉親から送られてくる奇妙な小包のせいでいつも大変な目に遭っている。
 
 
一回目は父親が送ってきた「支天輪」、二回目も父親送の「黒天筒」、三回目も父親送の「短天扇」、四回目は姉の送ってきたホロホロアホドリ(月天小説第5巻参照)の卵。
 
五回目は同じく姉輸送の呪いのかかった魔鏡(月天小説第9巻参照)と、送られてくるのはオカルトor正体不明物体ばかり。
 
 
母親は唯一まとも(精神状態はまともじゃない)でそのような物は送ってこないのだが(仕送りもなし)、
 
父親と姉に至っては霊能力が備わっているのではないかというほど、これらオカルト系グッズにぶち当たる可能性が高い。
 
そんな訳でこんな物を毎度毎度送られてきては、中身を拝見する太助の身が持たない。
 
 
「・・・俺は誓ったんだ。もう余計な物は家には入れない!俺は平和な生活を送るんだ!!って・・・。」
 
精霊であるシャオ達を呼び出してしまった時点で、彼の辞書からは
 
平和という2文字は抹消されてしまったようなものだが・・・。
 
「・・・・・・」←宅配従業員(考えている・・・)
 
「太助様、大丈夫ですよ。そんなに疑心暗鬼にならなくても・・・。」
 
「じゃあシャオ、本当に大丈夫だという確信はあるのか?」
 
「えっ・・・?そ、それは・・・」
 
今度は疑いの眼差しをシャオに向けてきた太助。よほど面倒ごとには関わりたくないらしい。
 
重々しい空気の中、キリュウがぼそっと太助に言った。
 
「逃げるのか?主殿。」
 
「ぐっ・・・(汗)」
 
手痛いツッコミだ。日頃からキリュウの試練に耐え抜いてきてる太助にとっては心にグサッと来る一言である。
 
「わ・・・分かったよ。」
 
渋々玄関へと向かう太助。だが・・・
 
「たー様、印鑑orボールペンを忘れてるわよ。」
 
「何故だルーアン!何故そんな物を見つけてしまうんだ!?」
 
「主殿、本当は適当にやり過ごすつもりだったのではないか?」←ややキレ気味
 
何だか小賢しいやり過ごし方である。
 
これでは注射を嫌がる子供並にタチが悪い。シャオから印鑑を受け取った太助は半泣き気味で再び渋々とと玄関へ向かった。
 
 
ガチャ←ドアを開ける音
 
 
「ター◎ス○ッシャーパ△チ!!」←キレてる
 
 
グリュリュリューン・・・バキッ!!
 
 
と、某スーパーロボットみたく実際に腕が分離して回転しながらクリーンヒットしたワケではなく、
 
やや腕をひねった状態で繰り出されたストレートが太助の顔面に直撃したのである。
 
そしてそのパンチの主は・・・。
 
「お前なぁ、いるならいるでさっさと出て来いよ!宅配便の兄ちゃんが困ってんだぞ。」
 
声の主は、この時間帯からしては珍しい翔子であった。
 
「山野辺・・・、何でお前がここに?」
 
「たまの日曜日だし、今日はシャオとどっかに遊びに行こうかと思って誘いに来たんだけど・・・来て早々シャオのダメ主のヤな一面を見るハメになっちまった。」
 
それでは太助の性格がひねくれているようにしか聞こえないぞ翔子よ。
 
「お前も今までの俺の生き様を見てきたろ?ここでまた変な居候や面倒事に巻き込まれて見ろ。俺の平和な休日が台無しになってしまうんだぞ?」
 
「知るかそんなん。ていうか、それも試練だ(キリュウのモノマネ)。
 
「・・・・・・(怒)」←太助
 
 
太助は自分を小バカにしているように見える翔子を玄関から突き飛ばしてやろうかと思ったが、
 
シャオ達や第三者(宅配便のあんちゃん)の目前ではそのような行為はできないと思いとどまった。
 
「あ・・・あのー・・・(焦)。」
 
忘れかけられていた宅配便のあんちゃんが太助に尋ねてきた。
 
まぁ、仕事が立て込んでるので焦る気持ちも分からんでもないが、今太助に喋りかけることは己の命を捨てることに等しい。
 
「とりあえず・・・サイン、頂けないでしょうか?」
 
「あ、あぁ。すいません・・・。」
 
太助は握っていたハンコを握り直し、証明書に印を押そうとしたが、微妙に手がプルプル震えていた。
 
相当荷物を受け取るのがイヤらしい。
 
「まだるっこしいなお前は!ホイっと!!」
 
ポンッ
 
「?」
 
翔子は印を押そうかためらっている太助の手を取り、強制的に判を押した。
 
ある意味これは犯罪である。宅配便のあんちゃんは少々納得がいかなかったが、
 
アのままここにいると確実に消されてしまうと思い、早々に七梨家を後にした。
 
「お前は・・・何て事を(泣)。」
 
「受け取る気だったのかそうじゃなかったのか位、はっきりしろよ!!」
 
こういう優柔不断なところが太助の短所であろう。
 
「ところでこの中身って一体何なんだろうな?」
 
「ん?ああ、えーっと・・・。あれ?」
 
翔子に言われて小包の外観を調べてみる太助だったが、どこにも差出人の名前等が書かれていなかった。太助はイヤな予感がした。
 
「また・・・からくり魔人の再来か?」
 
 
詳しくはアニメ第19話「嗚呼、オヤジ救出大作戦!」を参考にして欲しい。
 
太助はその時の悪夢を思い返したが、その時いなかった翔子とキリュウは何の事やらさっぱりであった。
 
「またって事は以前にもあったのか?このパターン。・・・あたしには何の事だか、さっぱりだけど多分七梨の身内だと同じネタは二度と使わないと思う。
 
「確かに。」
 
そこで納得するのもどうかと思うぞ太助よ。
 
 
「ところで太助様、その小包・・・開けるんですか?」
 
太助はその最も過酷な試練に挑もうか・・・少し迷った。
 
 
to be continued...
 
 
あとがき
 
どうも、takkuです。本来連載していた『芋ではない』が音信不通な為、グリフィンさんの提案もあり、
 
急遽『星宿界』で連載を開始することとなりました。あと、今回掲載するバージョンは以前のリメイク版です。
 
誤字脱字も少しは減る・・・と思います。