次回はハプニングの序章。そしてリナ達の初ライブ?!
第20話「友にしばしの休息を」
 
 
水の魔導玉『ヴェリアクア』を手に入れた太助達。カントスへの道中、魔導玉の力を確かめるために魔獣相手にいろいろと使ってみた。
 
そして・・・カントスに到着して。
 
 
「つ、疲れた・・・。」
 
「魔法の使いすぎだよ太助君。RPGにはMP(マジックポイント)っていう概念があるの知らないの?」
 
「お前だって乎一郎レーザー乱発しまくってたじゃねーか。」
 
ちっちっちと人差し指を小刻みに降る乎一郎。なんだかこいつがこういう風にあしらうと腹が立つ。
 
 
「甘いね太助君。僕のはTP(テクニカルポイント)だよ。」
 
「何だよそれ。っつーかお前妙にこの世界概念に慣れてないか?!」
 
「愚問だね太助君。それは僕だから可能なんだよ!
 
「・・・・・・。」
 
言葉を失う一同。その自信がどこから現れるのかが不明だが。
 
しかし、当の太助は妙に納得していた。ま、今までの乎一郎の行いを見ていたら、なんとなく頷けるが・・・。
 
 
「ま、何はともあれカントスに到着じゃ。太助君達は初めてじゃが、わしらにとってはいろいろと思い出深いところじゃからな。」
 
「レオーネの曲も手に入れられたしね。」
 
しみじみと思い出に浸るマクベイン達。
 
「ところでマクベインさん、この町は一体どういう町なんです?」
 
「カントスはかの有名な音楽家、レオーネ=F=リヒターが創設した音楽学校があるんじゃ。レオーネが残した練習用の曲があり、この町そのものの宝なんじゃ。」
 
「へぇ・・・音楽学校か。」
 
思わず重いイメージが浮かんでしまう太助。まぁ、ざっと聞いた感じではどっかのエリート校のように感じる。
 
「それでは、また情報収集と行きますか。あたしと実君は別ペアね♪
 
「リディアちゃん、地味に意味不明なこと言われてもつっこみづらいんだけど。」
 
 
裏月天でもあったような気がするなぁこのネタ。
 
「・・・ここは無難に男女に分かれて捜すっていうのはどうだ?」
 
「おぉ・・・ナイス意見、実。」
 
「でもなんだか出雲さんみたいな言い方だね。」
 
出番がないっていうのにこういうときだけは名前が出てくる出雲。哀れすぎることこの上ない。
 
と・・・
 
「捜す手間なんていらないぜ、七梨。」
 
とてつもなく聞き覚えのある声だ・・・特に太助にとっては。
 
「・・・山野辺か、何でよりにもよってカントスでお前なんだよ。」
 
「聞き捨てならないセリフだなオイ。・・・あたしだってそれなりに芸術を愛でる気持ちぐらいあるんだぜ?それにこの街に落ちたのはあたしの意志じゃねーんだ。」
 
普段の翔子の言動と性格を考えると、とてもじゃないが音楽が似合うような組み合わせとは思えない。
 
「いや、俺から言わせりゃこれ以上にないくらいアンバランスな組み合わせはないと断言できるぞ。」
 
「ムカつくなぁ・・・。まぁいいや、フォルゲン校長に話してくるよ。お客さんが来たって・・・。」
 
「えっ・・?フォルゲン校長を知ってるの?!」
 
察するに音楽学校の校長先生らしい。フォルト達が衝撃を受ける中、そんなお偉いさんをタメで話せる翔子って一体・・・?
 
「・・・そういや七梨、こいつ等一体何者?」
 
「・・・歩きながら説明するよ。めんどくさいけどな・・・。」
 
渋々納得した表情で太助達は音楽学校へと向かった。と、一方のマクベイン一座の方はニコニコにやにやと喜びを隠せない様子だ。
 
 
・・・・・
 
 
「おぉ・・・マクベインさん、フォルト君お久しぶりですな。前のカヴァロ演奏会以来ですね。」
 
「お久しぶりですフォルゲン校長先生♪・・・ところで、シュベールは元気にしてますか?」
 
「えぇ・・・今のあなたに負けないようにと一生懸命練習に励んでますよ?」
 
どうやらカントスでの友達の様子をうかがっている様子だ。妙にほくそ笑むフォルトの後ろで太助と翔子がマクベイン一座のことについての説明をしている。
 
レイチェルとシャオに関しては、あまり説明の必要がなかったらしくものの3分で紹介が終わった。
 
「よぉっし!!それじゃ久しぶりにシュベールと一緒に演奏だぁ♪」
 
「待ってフォルト君、私達も行くわ。」
 
フォルトが意気揚々と友達の元へと向かおうとしたところ、リナが突如名乗り出た。
 
対するフォルトの方は全く困る様子もなく、笑顔で迎え入れる。
 
「そうだね、せっかくだから一緒に演奏する?」
 
「えっ、そ、そんなこと急に言われても・・・楽器の演奏なんてやったことないし・・・」
 
「大丈夫だって、さ、行こう!!」
 
フォルトの誘われるまま、ついていくリナ。マクベイン達もそれに併せて校長室を出ていき、部屋に残ったのは太助と翔子、乎一郎の三人だけとなった。
 
 
「ところでフォルゲン校長・・・一つ聞きたいことがあるんですが。」
 
「何でしょうか・・・?」
 
「あの・・・山野辺以外にも、俺達と姿格好が似た輩をこの周辺で見ませんでした?」
 
いかにもこんなのと言わんばかりに太助が親指で翔子を指差す。これにはさすがの翔子もムッときたが、とりあえずフォルゲン校長の答えを聞く方が先だと判断し、
 
怒りを胸の奥へとしまった。
 
「そうですねぇ・・・確か翔子さんが意識を取り戻す前に一人の男がカントスを訪ねてきましたよ。」
 
「男・・・どんな感じの奴でした?」
 
「そうですねぇ・・・背広にスーツ、シルクハットを被ってたと思います。」
 
奴だ・・・太助と乎一郎は即座に思い当たる人物を記憶の中からはじき出した。・・・淋である。
 
今度はカントスに顔を出していたようだが、全く持って奴の目的が分からない。
 
 
「その男、何か喋ってませんでした?どんな小さな事でもいいんで教えてください。」
 
「うぅ〜〜ん・・・申し訳ありませんがそこまでは分かりませんな。」
 
「そうですか・・・。」
 
太助は正直うなだれた。ただでさえ仲間の捜索でいっぱいいっぱいだって言うのにこの上また何か騒ぎを起こされてはたまったもんじゃないと思ったからだ。
 
だが、淋がこの街で何かどでかいことをやらかそうとしているのは事実だ。そう判断した太助は翔子と乎一郎を連れ、
 
フォルゲン校長に挨拶をして、そそくさと校長室をあとにした。
 
 
「一体どうしたってんだ七梨?そのシルクハット男、ヤバイ奴なのか?」
 
「ああ、いろいろあってな・・・。とりあえずリナ達にも報告しとかなきゃいけないな。」
 
「待ってよ太助くん。・・・ここは一つ僕らだけで対処するっていうのはどうかな?」
 
「へっ??!」
 
今までの乎一郎からは考えられない唐突なアイディアに衝撃を受けた太助。ま、確かに魔導玉もあるし、ある程度なら自分達でもいけそうだ。
 
でも、現時点で戦力の6割近くを担うリナ・マクベインがいないのはいくら何でも無謀すぎる。
 
「言っとくけど、今回僕はマジだよ?リナちゃん達最近ボコボコになるまでやられっぱなしだし、今回は休暇ということで。」
 
「おぉ・・・乎一郎たまにはいいこと言うじゃないか。」
 
普段から毒混じりのつっこみばっかりだというのに、どうしたんだ今回の真面目ぶりは?
 
 
「・・・いいじゃんそれ、あたしは賛成だぞ。七梨はどうなんだ?」
 
「まぁ・・・乎一郎の言うとおり、リナ達もいろいろと事情があるみたいだし、今回くらい休みあげてもバチは当たんねーだろうな。」
 
「んじゃやるのか、七梨?」
 
「ああ。その前にもっと情報を集めよう・・・淋の潜伏先を調べて一気に畳み掛ける!!
 
「ようは奇襲作戦だな。わずかながら良心に響くが・・・。」
 
かつて万引きやってた不良少女が何をほざくか。
 
まぁいままで受け身の戦法が多かったから今回くらいこんな殴り込みぐらいやっても許されるだろうという了見で・・・。
 
 
to be continued...
 
あとがき
 
ちょっと自分達の実力に自信が見えてきた太助達ですが、あんまり調子に乗りすぎると痛い目見るぞ?
 
海の檻歌やってる人は分かると思いますが、潜伏先って・・・あの辺て潜めれる場所無いやん
 
とかそういうつっこみは無しにしてください。ちゃんと考えますから・・・。
 
次回はハプニングの序章。そしてリナ達の初ライブ?!