第22話「悪魔の来襲」
 
 
前書き
 
淋のカウンターを受けて、一時退却へと追いやられた太助と乎一郎。だが、その代償としてようやく再会できた翔子が人質となってしまった!!
 
はたして、太助達は無事翔子を救出できるのであろうか?!
 
 
 
そして、カントスの宿屋の一室・・・。
 
「んばば!!」
 
・・・・・
 
一応説明しておくと、今のかけ声はただの起床時の第一声だったらしい。のっけからアホなことをしているように見えるが、本人は至って真面目らしい。
 
「んん・・・ああっ!!そうだ、山野辺の奴あれからどうなったんだろう?!」
 
目覚めたばかりの脳みそで最初に思い出したこと。それは自分達を逃がすために犠牲となった翔子の存在。だが、その一方で・・・
 
 
「・・うるさいなぁ・・・・もう少し静かにしてよ太助くん。」
 
「何呑気に寝てやがんだこのメガネは。とっとと起きやがれこんちくしょう。」
 
まだ少し脳がお眠の状態なので、若干言語回路に異常が見られる太助。そんな太助を無視して爆睡をこく乎一郎。そんな彼の態度に太助はだんだんと腹が立ってきた。
 
「くそっ、俺は先に行くぞ!乎一郎もあとでついてこいよっ!!」
 
乎一郎に念押ししながら部屋をあとにする太助。だが、宿屋を出ようとしたとき、出口でリナ達に行く手を遮られた。
 
 
「行くの・・・太助君?」
 
「ああ、別に俺はあいつが心配だとかそんなことは微塵も思っちゃいないけど、このままあいつに借りを作りっぱなしっていうのはしゃくなんでね!」
 
言ってる割には表情に余裕が感じられない。素直じゃないね・・・。
 
「まあいい・・・今回お前はここに残っていろ。山野辺の救出と淋の始末は俺達だけでやる。」
 
「・・!!ちょっと待てよ、何で俺だけ居残りなんだ?!」
 
「・・・・淋を追っているのは、何もお前だけじゃないんだ。それに・・・今後こんな勝手な行動を取られちゃ、こっちが迷惑だからな。」
 
実の挑発的な言葉にだんだんイライラしてくる太助。だが、実の言い分も最もだろう。
 
「・・・・あたし等に気ぃ遣ってくれるのは嬉しいけどさ、こういう時だけはもうちっと頼りにして欲しかったな・・・。」
 
リディアも珍しく、今日はやけにしおらしい。
 
「とにかく・・・太助君はここで大人しくしててね。すぐに戻ってくるから・・・。」
 
軽く太助に手を振って分かれたリナ達は、カントス南部の山岳地帯へと足を踏み入れていった・・・。その一方で太助はと言うと・・・
 
 
「・・・大人しくしてろか。確かに今回のは出しゃばり過ぎたけど、じっとしてるほど俺は穏和な男じゃないんでね!!」
 
原作とはえらい違いだが、こういうときだけは頼もしく思えるのは気のせいだろうか?
 
 
そして、山岳地帯中腹・・・。切り立った崖の中央部にそれはあった。
 
「洞窟か・・・確かマクベインさんから借りた地図にはそんなものはなかったはずだが・・・。」
 
「となると、淋がせっせと土木工事でもしたんでしょうね。相変わらずまめなんだから・・・。」
 
何やらぶつくさ言いながら洞窟に足を踏み入れる三人。・・・だが、
 
「な・・何だここは?!」
 
洞窟内の概要に衝撃を受ける三人。それもそのはず、辺りに散りばめられたコンピュータの数々。そして異様な形状をした生物が眠っている培養カプセルのような物。
 
明らかに、この世界で作られるような代物達ではなかった。
 
それでも、探索を続ける三人。表情はかなり険しい。
 
 
「こいつ等は一体・・・・あ、あそこに端末があるわね、調べてみましょ。」
 
辺りを見回しながら洞窟奥のコンピュータを起動させるリナ。その一方で、顔色を悪くしている実。いや、顔色だけではない。
 
全身は鳥肌が立ち、何やら右腕に痛みを覚えているようだ。
 
「ど、どうしたの実君?!」
 
「う・・ぐっ!・・・魔断刀が・・・・共鳴を・・・うぉっ!!!」
 
必死に何かを押さえ込んでいた実の右腕から、突如刀が出現した。そう、実の元恋人「静佳」の魂が宿る魔断刀(第17話参照)である。
 
「な、何故魔断刀が・・・?!」
 
「確か魔断刀って実君が水の力を引き出して作るロスト・ウェポンだったよね?」
 
不思議そうに見つめる魔断刀を見つめる実とリディア。そして・・・
 
 
『先輩っ!!一体ここは何処なんですか!?』
 
刀に突如目・口が出現し、実に話しかけてきた。何を隠そう、これこそ静佳の魂(人格)なのである。
 
「落ち着け静佳・・・俺達も今ここにやって来たばかりで何が何だかよく分からんのだ。」
 
『そうですか・・・って、それどころじゃないですよ先輩っ!!ここで造られている化け物達・・・みぃんなあのウィルスが元になってるんです!!』
 
「あのウィルス・・・?!お前を死へと追いやったアレか?」
 
「ね、ねぇねぇ二人だけで話し進めないでよ!あたしさっぱり分からないわ!!」
 
いつの間にやら二人の世界へと入っていた実と静佳。さすが元恋人同士と言ったところだが、リディアに関してはただのイヤな雰囲気でしかなかった。
 
 
「わ、分かったからその物騒な大斧をしまえ!!っつーかどこでそんなモン手に入れてきた!!
 
いつの間にやらリディアの両腕には大斧が握られていた。おそらく非常時用の防火設備の一つとして置かれていたのだろう。
 
 
 
一方太助はと言うと・・・
 
「マクベインさん、こっちです!!」
 
「お、おい待ってくれ太助くん!!もちっと年寄りを労らんか!!」
 
あれからマクベイン達に招集をかけて例の洞窟へと磯いているところなのだが、何分マクベインとシャオは年が年である。若年層に比べて息の乱れが激しい。
 
 
「じいちゃん達はほっといて先行こう。・・・ところで、翔子さんは無事なのかな?」
 
「多分な。山野辺のことだ、きっと淋に金的蹴りでもかまして逃亡生活送ってんじゃねーの?」
 
太助のあまりにもさらりとしたセリフに顔を赤らめるウーナ。確かに翔子なら何の躊躇いも無くやりそうだが・・・それでは彼女の女としてのポリシーが・・・
 
 
「あ、あれです!」
 
太助が指差した方向には例の洞窟が・・・
 
どかあぁぁぁんっ!!!
 
たった今崩れ去りました。
 
 
・・・・間。
 
 
「わし等の精一杯の努力はあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 
一生懸命坂を駆け上ってきてこの仕打ち。マクベインとシャオは発狂した。
 
「・・・見て、あそこに淋が!!」
 
レイチェルの声に反応し、全員が振り向いた先には例の如く淋が崖のてっぺんで悠々と佇んでいる。吹っ飛ばされた洞窟の瓦礫の傍らにはリナ達がその場にうずくまっていた。
 
ギリギリの所で脱出は出来たものの、ダメージは少なからず受けてしまったようだ。
 
 
「お久しぶりです、皆さん。・・・とは言っても太助くんは先日特攻をかけにいらっしゃいましたから久しぶりではありませんが。」
 
「御託はどうでもいい・・・山野辺を帰して貰おうか。」
 
単刀直入に述べる太助だったが、相手の淋は全く相手にしないと言った感じだ。
 
「そうはいきません。彼女には我々の実験に立ち会って貰わなければなりません。そろそろヒトを使っての『D』の力を試してみたいんでね。」
 
「『D』?何だそれは・・・。」
 
「ま、その前にちょっと昔話をしますよ。」
 
「昔話・・・長くなりそうだな。」←聞く気全くゼロの奴
 
さてさて始まる昔話。始まり始まり〜〜♪
 
 
西暦2645年・・・人類が地球を離れ、月で生活し始めて500年。
 
本来とは異なる生活環境に最初は困惑気味の人類だったが、半世紀もしないうちにすぐに順応してしまった。
 
だが、西暦2400年・・・異変が起きた。強大な力を持つ子供達が生まれ始めたのだ。皆それぞれ違った力を持つも、どれも皆簡単に人を殺し得る強大な力を持っていた。
 
ある者はその腕から炎を呼び出し、またある者は風を呼び雷をも手中に収め、はたまたある者はその手にした水であらゆる形の物体を再現した・・・。
 
当然、当時の研究者達も彼らの力の源を全力で調査した。そして導き出された答え・・・それは自分達が今住んでいるこの月そのもの。
 
遙か昔から、月は魔力の塊であると言い伝えられていた。人を凶暴化させたり、闇の住人を呼び覚ましたり・・・その力は様々だ。
 
故に彼らの事をこう呼ぼう・・・失われし未知なる力を持つ子供達・・・・・ロスト・チルドレンと・・・。
 
 
 
「以上が、私達の世界で起こった出来事なんですが案の定全然聞いちゃいませんねあなた達。
 
あまりの長話にいつの間にやら大富豪で盛り上がっていた太助達。ちなみに現在フォルト(大富豪)→マクベイン(富豪)→太助(平民)→レイチェル(平民)→ウーナ(貧民)→シャオ(大貧民)
 
 
「あ、終わった?いや〜あまりにも長すぎたんで3ゲームもしちゃったよ。」
 
何時間話してやがったんだ淋の奴・・・?
 
「ま、まあいいでしょう。とにかく、我々が作り出した『D』には・・・そのロスト・チルドレンのDNAが組み込まれているのです。」
 
「だから何だ?俺達には全く関係ねーじゃねぇか。」
 
「ところが大アリなのですよ・・・ねぇ、園部リナさん?」
 
 
!!!??
 
 
淋の振りに顔を背けるリナ。一番驚いているのは接している時間が一番長い実達であろう。
 
「嘘だろ・・・?リナ・・・・。」
 
「・・・本当よ。私が実くん達と出会う前、私は白虎の連中と接触してて・・・その時に多分。」
 
「・・・・・・・。」
 
「っつーことはリナ達もそのロスト・チルドレンって言う類なのか?!」
 
こくりと太助の問いに頷くリナの一方で、事実を素直に受け入れることが出来ない実。そうなるともしかして・・・・!!
 
 
「ということは・・・リナからDNAを採取し、完成させたばかりの『D』を・・・実験で埋め込まれたのは、まさか!!」
 
「そう、確か・・・・名前を『静佳』さんと言いましたねぇ。いやぁ苦労しましたよ、暴れる彼女を拘束し、犯しながらウィルスを注ぎ込んでいくというのは・・・。
 
「!!!!!!!」
 
「骨が折れる作業でしたが、お陰で貴重なデータが取れたわけですし・・・彼女には感謝してますよ、ホント。」
 
ぷつんっ
 
 
淋のセリフに実の頭の中で何かが切れた。今までにない殺気を放ち、淋を見つめる。
 
「貴様が・・・様がああぁぁぁぁぁっ!!!!!
 
「実君っ!!!」
 
リディアの制止も振り切り、単身傷付いた体で淋の元へと突っ込んでいく実!果たして彼は静佳の敵を取れるのだろうか?!
 
 
to be continued!!
 
 
あとがき
 
ども、今回は比較的更新が早いtakkuです。
 
ゲーム再稼働はまだゲームCDが手元にないので無理ですが、サントラだけは何とか確保できたので、曲を聴きながらイメージをふくらませて書いてます。
 
いつかは書こうと思ってためてたリナ達の正体。そして、淋の行動理由の一部が明らかに。
 
次回は実と淋の一騎打ち?!