第24話「闇の力。害周波とロスト・アビリティー」
 
 
 
マクベイン「んじゃ、まず何から話せばいいかのぉ・・・・。」
 
フォルト「まずは・・・共鳴魔法のことについて話そうよ。太助君達には今まで黙ったまんまだったし。」
 
太助「ごめんな・・・・あんまり無理強いするつもりはなかったんだけど。」
 
自らを責めるフォルトを太助がなだめる。その一方でOCSIANのメンバーは実とリディアは怪我の治療でこの場にはいない。
 
現在マクベイン一座は山岳地帯の頂上に位置する茶屋で一段落している。カントスには特に淋が手を出した形跡がなかった為、ルプシャ女史の統治するボザールへと向かうこととなったのだ。
 
 
フォルト「まずは・・・共鳴魔法の性質から説明し直すね。・・・共鳴魔法の原理は音の共振を制御して様々な力を発揮させる。ここまでは前説明した通り。」
 
ウーナ「そして、悲しい曲が悲しみを伝え、楽しい曲が喜びを伝えるように・・・音楽には感情を伝える力があるのは分かるわよね?」
 
太助「あぁ・・・なんとなくね。」
 
マクベイン「だが共鳴魔法は、音を正確に表現するだけではダメなんじゃ。」
 
乎一郎「それ・・・どういうことなんですか?」
 
 
少し間をおいてマクベイン達は口を開く。
 
ウーナ「確かに現象を引き起こすメロディーを奏でれば、魔法は発動します・・・。でも、奏でる心・・・つまり演奏者の心に濁りがあればメロディーも濁る・・・。」
 
フォルト「水底の民は共鳴魔法を使っていく内にその濁りを蓄積させて世界を滅ぼすほどの危険な力を育ててしまったんだ。」
 
翔子「ようは自分で自分の首を絞めたようなもんか。・・・不可思議な力を調子こいて使ってるからだぜ。」
 
マクベイン「それは特に猛き力を持つ魔法・・・すなわち攻撃魔法に多く見られる傾向なんじゃ。」
 
リナ「濁った心・・・殺意、憎悪、悲しみ・・・それら全てを含めた負の感情ね。」
 
フォルト「共鳴魔法を使う際に蓄積される悪しき力(負の感情)は術舎の心の濁りから生まれる一定の周波でもあるんだ。僕らはそれを『害周波』って呼んでるんだよ。」
 
ウーナ「だからわたしたちは共鳴石の補助無しでは共鳴魔法を多用できないの。・・・特に攻撃魔法はね。」
 
太助「それで回復の共鳴魔法にしろ、炎の共鳴魔法にしろあんなに使うのを躊躇っていたんですね。」
 
これでマクベイン達が武器を使った攻撃が主体なのがようやく理解できた。魔法が使えるのに使おうとしない理由。
 
それは先人達の教訓を忠実に守っていたのだ。同じ過ちを二度と繰り返さない為に・・・。
 
 
翔子「・・・ちょっと待て。それじゃなんでその共鳴石っつーのがあると平気なんだよ?」
 
マクベイン「理由はわし等にもわからん・・・。じゃが何らかの作用で共鳴石が害周波の発生を抑制していることは間違いないらしい。」
 
フォルト「でも半年前、共鳴石は厳重に封印しちゃったから・・・僕等もそれ以来共鳴魔法は使わないようにしようって決めてたんだ。」
 
太助「前の戦いぶりからして・・・淋のヤツ、共鳴魔法に目をつけているみたいだけど・・・・何をするつもりなんだろうな。」
 
マクベイン「あるとすれば共鳴魔法の特性である共振作用による魔法の発動性じゃろう。音さえ出せれば手軽に発動できるのじゃからな。」
 
翔子「手軽に?」
 
ウーナ「さっき言った通り、メロディーさえ奏でれば魔法は発動します。・・・そして、その音は何も楽器で出た音でなくても可能なのよ。」
 
太助「じゃあ共鳴魔法をあいつ等のロボットと組み合わせたら・・・・向かうところ敵ナシじゃねーか!!」
 
翔子「となると、次の奴の行き先が気になるな・・・。急いでボザールへ行こうぜ!!」
 
マクベイン「まぁ落ち着くんじゃ翔子ちゃん・・・もうじきシャオ達が情報収集から帰ってくる。それからでも遅くは無いじゃろうて。」
 
席から立ち上がって飛び出そうとする翔子をマクベインが止める。それに渋々納得する様子で翔子は再び席に着いた。
 
 
リナ「それじゃ・・・今度は私の番ね。・・・・淋が言ってた通り、私と剛君、実君にリディアちゃんの四人はロスト・チルドレンと呼ばれる種族に属しているのは分かるわね?」
 
フォルト「うん、でも普通の人間とそのロスト・チルドレンって何が違うの?」
 
リナは少し俯いて悲しみにくれた表情を見せると、しばらくして顔を上げて太助達に話し出した。
 
リナ「見た目では普通の少年少女と何ら変わりはないわ。ただ違うとすれば身体能力の異常な発達と・・・・本来の人格の奥底に眠る、『魔』の衝動・・・・。」
 
ごくり・・・・。全員がつばを飲み込む。
 
 
リナ「『魔』の衝動は発動したら最後、周辺の生命全てを消滅させなければ消えることはない・・・残忍で惨たらしい人のエゴそのもの・・・。」
 
再び黙り込むリナ・・・辺りを静寂が包み込む。
 
リナ「私も・・・・かつてその衝動に支配され・・・大切な友人を・・・この手で!!」
 
自分の手を見つめ、目に涙を浮かべるリナ。涙を見せまいと、太助達に背を向ける形となる。
 
 
リナ「『魔』の衝動は私達にいろんな力をもたらしたわ・・・。炎を出したり、植物を操ったり、水を操作したり・・・・。私達はロスト・アビリティーって呼んでるけど。」
 
太助「それじゃ、あの炎の弾やら木の根っこやらは・・・・」
 
リナ「そう・・・・私達が『魔』の衝動に支配される直前の行為・・・。何で私達だけこんな事に・・・・って自分の運命を呪ったこともあった。でも、今は違う!」
 
涙を振り払い、再び太助達の方をまじまじと見るリナ。
 
リナ「これ以上私達のような子供達を増やさない為にも・・・全ての命を守る為に自分の力を正しい方に使ってみせるって決めたの!!」
 
・・・・・・・
 
 
太助「・・・・なるほどな。それがリナの戦う理由か。」
 
リナ「・・・最初の頃は、私達のことを理解しようとしてくれる人なんて、これっぽちもいなかった。・・・・私達は四人で支え合ったわ。じゃないと・・・自分を見失ってしまいそうだったから・・・・。」
 
翔子「・・・・・・・。」
 
翔子には何故かリナの一言一言がひどく重く感じた。何故かは分からないが、とても人事とは思えないのだ。一人孤独と戦い続けることの辛さに関しては・・・
 
リナ「淋の奴が、何が目的で私のDNAを『D』に埋め込んだのかは分からないわ・・・。でも、『D』はある意味、私自身でもある・・・。だから・・私が!!」
 
太助「自惚れるなよ。」
 
リナ「!!!」
 
 
太助「・・・・黙って聞いてりゃ自分達が不幸の固まりみたいな言い方して・・・。」
 
翔子「お、おい七梨!何を言い出すんだいきなり!!」
 
 
太助「シャオだって・・・ルーアンも、キリュウも・・・・・沢山の出会いと別れ、そして生と死を目の当たりにして・・・壁にぶち当たって・・・・乗り越えてきたんだ!!」
 
乎一郎「太助くん・・・・。」
 
 
太助「自分達が呪われてるなんて思ってるからホントにそうなっちまうんだよ!!見た目は普通の女の子なんだろリナは!?」
 
リナ「・・・・・・。」
 
 
太助「普通に生きてりゃ普通に年取って死んでいけるんだよ!!むやみやたらに戦おうとするから余計に血みどろになるんだろ!!そうじゃないのか?!」
 
 
フォルト「太助君、だめだよ!それ以上は!!」
 
太助「いーや、まだ言い足りないね!戦うべきは『D』でも淋でもない!リナ自身の心の中にいる『魔』の心そのものだろ!!
 
 
・・・・・・・
 
 
マクベイン「・・・・・今日はもう遅い。シャオとレイチェルももうじき戻ってくる頃じゃろう。みんなゆっくり休むんじゃな。」
 
テーブルにおいてあったビールを飲み干してマクベインは寝室へと向かった。それについていくような形でフォルト・ウーナ、そして太助達も寝室へと向かう。
 
 
 
 
二時間後・・・・
 
 
茶屋の外、切り立ったがけの上からリナが夜空の星を見上げている。空気が澄んでいる為か、いつもより眩く輝いて見える・・・。
 
 
リナ「・・・・嫌われちゃったかな。私ったら、昔からこうなんだから・・・・」
 
俯いてそのまま黙り込むリナ。
 
リナ「自分の『魔』と戦え・・か・・・・。結局また、逃げてただけなのかも・・・自分の運命から・・・。」
 
 
黄昏れているリナの背後から、一人の人影が・・・
 
太助「まだ起きてたのか?いくら何でも風邪引くぞ。」
 
リナ「太助君・・・・・。」
 
 
沈黙する二人・・・。そして最初に太助が口を開く。
 
太助「・・・べ、別にリナのことが嫌いになった訳じゃないからな。・・・ただ」
 
リナ「ただ?」
 
 
太助「・・・・人事じゃないって思えたから・・・その・・・。上手く言えないけどな・・・。」
 
リナ「????」
 
太助「俺が今話してるのは、ロスト・チルドレンじゃなくて普通の天然お惚け少女『園部リナ』なんだからな。」
 
リナ「天然お惚けの時点で普通の女の子って言わないと思うけど?」
 
確かに・・・・。
 
 
リナ「・・・ありがとう、太助君。そんな風に言ってくれたのあなただけよ。」
 
太助「そ、そうか?ま、何にしてもリナには元気になって貰わないといろいろと困るからな。」
 
リナ「いろいろって?」
 
太助「あんま深くは追求するな。説明すんのって面倒くさいしさ。」
 
軽く微笑する太助に答えるように微笑むリナ。
 
 
リナ「まぁいいわ。お陰で元気がいっぱい出てきたし!」
 
太助「そうか、なら今日はもう寝な。明日も出発は早いらしいし・・・。」
 
招き入れるが如く、太助が手招きで茶屋へとリナを連れて行こうとしたその時・・・
 
リナ「あ、太助君・・・・ちょっと待って。」
 
太助「ん、何?」
 
 
ちゅっ
 
 
その直後、太助の頬に奇妙な感触が伝わる・・・。柔らかくて・・・・温かくて・・・・って
 
太助「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 
何やら錯乱状態に陥った太助。暴走機関車と化してそこかしこに激突しながら爆走を続け、しばらくしてその場に崩れ落ちた。
 
そんな無駄に近い行為を数分間続けた太助は、体力も尽き完全に崩れ落ちた。
 
 
太助「な、何するんだよっ!!」
 
リナ「あら、こういうのは好きじゃない?」
 
太助「いや、好きとか嫌いとかじゃなくて・・・実と同じで慣れてないだけ・・・・・」
 
セリフを途中で言いかけ、太助はあることに気付く。どっかで見たことのある展開だなぁと思ってたら第17話の実と同じパターンじゃん!!
 
 
太助「それに・・・シャ、シャオとも・・・まだだって言うのに・・・・」
 
リナ「だからほっぺなのよ♪」
 
太助「リナにしろリディアにしろ絶対遊んでるだろ俺たちで?」
 
ウブ三人集(←フォルトは第12話)ろくな扱い受けないなここんとこ。
 
 
リナ「・・・でも、遊びじゃないのはホントだよ。負けてられないかもね、これは・・・。」
 
太助「・・・ちょ、ちょっと待てよ。それって今まで(原作)の女性陣登場と同じパターンじゃねーか?」
 
リナ「・・・・優しすぎるんだもん、太助君は・・・。思わずズキンって来ちゃった。」
 
太助「・・・・・。」
 
やっぱり自分の所業が完全に自分の首を絞めているとしか思えない太助。
 
 
リナ「ま、キスのことはみんなに内緒にしといてあげる♪さ、寝ましょ寝ましょ!」
 
こうして、またシャオと太助の間に強大なライバルが増えましたとさ♪
 
 
 
to be continued...
 
 
あとがき
 
またこのパターンかよってつっこまないで下さい。
 
今回の太助は前回がアレでしたので、今回はちょっと裏の方に戻してみました。
 
どちらかってーと原作より(?)かもしれませんが・・・。
 
さて、今回から会話のところでキャラの名前を入れて分かりやすくしてみましたが、どうでしょう?
 
これで誰がいつ何処で話したってのが分かりやすくなったと思うのですが・・・。