あとがき初登場の海の檻歌キャラ。この頃からオリキャラへのタメ口化が進んできてます・・・。
第六話「歌と仲間を求めて三千里(前編)」
 
 
大地にガガーブが刻まれる以前・・・三つの世界がひとつであった時代の記憶は、
 
既に人々にはない。
 
大地に遺されたのは罪の傷跡・・・・・・。
 
人はいつから罪を背負ったのだろう?
 
 
何百年もの昔・・・・・。海辺に住み、何処へと姿を消した”水底の民”。
 
彼らは”メロディー”を自在に操り、音をあらゆる力に換え、想像を超えた繁栄を築いたという。
 
完璧で、純粋で、力ある”メロディー”。だが、伝承は多くを語ることなく、
 
遠い過去の夢物語の一つとして伝わるに過ぎなかった。
 
その後、ある偉大な音楽家の手により、古の”メロディー”が再現されたという噂が
 
音楽を生業とする者たちの間に広まった。音楽家の名はレオーネ・フレデリック・リヒター。
 
演奏家として知られ、若き天才としても名を馳せていた。だが、それから50年が経った今でも、
 
その真相は確かめられることなく、・・・・・・やがて忘れられていった。
 
 
・・・・・・この時代、旅回りの演奏家が多く存在していた。
 
多くの場合、彼らは皆明るく、博識であり、演奏によって人々を慰める以上の役割を担っていた。
 
時として、彼らの巡業は世界を巡るまでに及んだ。
 
この物語は、そんな演奏家たちの知られざる大冒険から半年後の出来事である。
 
 
 
ぷぁーっ・・・ぷっぷぁぱぁー?
 
少年は海岸のはずれにてラッパを吹いていた・・・が、相変わらず何故かこの楽器だけは上達しない。
 
先程の演奏でも最後ら辺の部分の音がはずれてしまい、文字にすると疑問型になってしまうほどだ。
 
 
「ふぅ・・・うまくいかないなぁ。何でだろ??」
 
少年はラッパのあちこちを見回して見るも、変形などの異常は見あたらない。
 
明らかに自分にはラッパを吹く才能がないと思い知らされる。
 
「最近キタラばっかやってたせいかな?うまく感じが思い出せないや。」
 
今までの自分の行いを悔いる少年。でも今更悔やんでもしょうがないのは明白の事実である。と
 
「いい加減にキタラ一筋でいったらどうじゃ?」
 
少年の背後から年季の入った老人が言う。だが、少年は少し顔を曇らせるだけで、ラッパを離す気配はない。
 
 
「なにいってんだよ、下手だから練習してるんだよ。」
 
「フォルトよ、確かお前半年前も同じ事を言ってなかったか?」
 
「・・・言ったよ。でも演奏できる楽器がキタラだけじゃあ味気ないし・・・。」
 
練習への意欲に水を差された少年、フォルトは老人にラッパを向ける。
 
再びラッパを吹き始めるも、今度は音感そのものがどっかに行ってしまったような音色だ。
 
こんなんでよく演奏家が勤まるものである。ラッパを吹くのを止めるとフォルトは老人に再び話しかけた。
 
「次のカヴァロの演奏大会はラッパで出たいんだ。前回と同じキタラじゃ・・・」
 
「味気ないと言うんじゃな?」
 
老人にはフォルトの考えはお見通しであった。
 
再びラッパを吹き始めるフォルトだったが、どう考えてもこの世のものとは思えない奇怪な音色だ。
 
やはり彼にとってラッパはかなり不向きの楽器らしい。すると・・・
 
「二人とも何やってるの?」
 
突如後方から一人の少女が現れた。
 
「あっ、ウーナ。だってじいちゃんが僕のラッパの練習を邪魔してくるんだよ。」
 
「何を言う、下手くそだから師匠としてわしが助言してやろうとしてやったことなのに・・・それが師匠に向かって言うセリフか?」
 
「もぅ、ケンカなら向こうでやってよね。こっちは染料作りで忙しいんだから。」  
 
手を染料で汚している少女、ウーナは二人のケンカの仲裁に入ってきたようだ。手が染料で赤く染まっている。
 
 
「そういえばどうしたんじゃウーナ、手が真っ赤ではないか。」
 
「あっ、これはね・・・」
 
「鮮血!?」
 
・・・返り血と言いたいのかフォルトよ?
 
「・・・違うわよぉ。染料作っててこうなっただけだもん。」
 
「そうかぁ・・・なぁーんだ。僕はてっきり魔獣と『手に汗握る決死の大バトル』でも繰り広げたのかと思った。」
 
「・・・お願いだからそう言う怖すぎるボケはやめてよね。」
 
「ラッパと同じくボケの才能もないとはのぅ・・・。」
 
言われ放題のフォルト。まあ当然と言えば当然のことである。
 
「それとフォルちゃん。」
 
「ん、なに?」
 
(・・・・・デート、いつ頃行けそう?)
 
ウーナはフォルトに老人に聞こえない程度の声で尋ねた。
 
 
実はこの二人、ラブラブな関係になってもう半年も経つ。
 
・・・のだが未だに愛の接吻はおろかデートすらしたこと無いのだ。
 
最近はウーナが積極的になったので少しは進歩したと言ったところか。
 
「二人とも、わしに内緒で何をしとるんじゃ?」
 
「「べっつにー」」
 
フォルト&ウーナ、ハモって受け答え。彼等の音感は伊達じゃない。←関係ない
 
「フォルちゃん、ついでで申し訳ないんだけど、染料作り、手伝って。」
 
「ん、オッケー。」
 
あっさり承諾し、染料作り場へと向かう二人。
 
染料作りとは以外に人手がかかるものだ(多分)。
 
ただでさえ人口が少ないこの村では人手をやりくりするために子供も立派な働き手となるのだ。
 
ラッパを懐にしまいこみ、ウーナの後を追うフォルト。その後ろで・・・
 
 
「わしの名前のことについては結局触れられなかったな・・・。」
 
この哀愁漂う老人の名はマクベイン。フォルトの祖父であり、楽座『マクベイン一座』の座長でもある。
 
「寂しくなったな・・・。しょうがない、灯台で琴の練習でもしようかの。」
 
一人立ちつくすのが嫌になったのか、マクベインは村の南に位置する灯台へと向かった。
 
半年前の長旅を終えた彼にとって、今やこの灯台で練習するのが毎日の日課となっている。
 
そして、マクベインが灯台の入り口までさしかかった時、入り口でなにやら火花が飛び始めた。
 
バチッ・・・バチバチ・・
 
「な・・・なんじゃ?」
 
ぐぼおぉぉおん
 
突如マクベインの目の前に自分と同じくらいの高さの穴(地面に対して垂直状態)が発生し、
 
その中から一人の少女が放り出された。
 
「い、一体何なんじゃ?!」
 
穴が塞がると辺りにほとばしっていた火花も消え、辺りは再び波音とカモメの鳴き声だけこだまする。
 
「ん、女の子か?見たところ、ウーナと同い年くらいじゃが・・・一体どうして?」
 
目の前に突然現れた少女に驚くマクベイン。
 
「・・・・結構カワイイし、このまま灯台に連れ込んで一気に口説き落とすというのもおつかのう。
 
全然笑えない。と言うよりむしろマクベインロリコン説が浮上しそうでヤバい。
 
だがその直後・・・
 
「あぢいぃぃぃぃいぃぃぃ!!!!!!」
 
染料作り場からけたたましい悲鳴が聞こえてきた。
 
マクベインが急いで駆けつけてみると、染料を煮詰める鍋のそばで少年が悶絶していた。
 
微妙に体がエビフライのように反るようなポーズで悶絶していた。
 
「あっつうー!!・・・一体何なんだ!!?」
 
体中にかかった熱い染料を拭き落としながら少年は辺りを見回す。
 
「????あれ?ここどこ?」
 
明らかに少年の初めてみる景色らしく、少々戸惑い気味のようだ。
 
マクベインはフォルト達の元へ駆け寄るが、案外二人は落ち着いている様子だ。
 
「一体何があったんじゃ!?」
 
「この男の子がいきなり鍋の上に現れてそのままドボン!あとは見ての通り・・・。」
 
「ココハドコ?ワタシハダアレ??!」
 
むしろ完全にイカれていた。多分煮えたぎった染料の中にいきなり飛び込んだものだから
 
脳みその記憶回路がバーストしてしまったのだろう。
 
「あっ・・・・。」
 
ばたん
 
少年はその場に倒れ込んだ。
 
 
・・・・・・・
 
 
 
”母さんって某オカルト漫画のお嬢様と声優同じじゃん!!”
 
 
 
「はっ!!・・・なんだ夢か。」
 
半ばどうでもよさそうな内容だが、このネタが分かる人はかなりの通である。
 
 
気が付くと少年はふかふかのベットで寝ていた。しかも染料で汚れた服もちゃんと着せ替えてある。
 
「・・・!!そういやシャオ達は??!」
 
少年、太助は辺りを見回すが、彼女たちの姿はない。
 
隣には自分と同じくこのラコスパルマにやってきた少女が静かな寝息を立てて寝ていた。
 
「・・・すー・・・すー・・・」
 
太助の隣で寝ていた少女、リナは直前の太助の意味不明なうなだれにも動じず、眠ったままである。
 
「俺、気絶してる間に彼女(リナ)に変な事してなかったよな??」
 
太助は自分に尋ねて見るも、答えが出てくるわけもない。
 
気絶していたのだから当たり前と言えば当たり前である。
 
 
「あっ、じいちゃん!!一人起きてるよー!」
 
外の方から声がしてきた。
 
「おぉ、元気そうじゃの。」
 
太助の目の前に現れたのは、フォルトとマクベインであった。
 
「・・・あ、あなた方は?」
 
「ぼくはフォルトっていうんだ。んでこっちはじいちゃんのマクベイン。」
 
「ときに少年よ、君の名は?」
 
「あ・・・俺は七梨太助・・・です。」
 
「しちり・・たすけ・・?変わった名前だね。」
 
・・・・・・
太助、しばし沈黙。その直後、彼の脳内では超高速で推測演算が処理され始めた。
 
 
”一体どうなってんだここは??たしかシャオ達とタイムマシーンに入ったはいいけど何か事故が起きたみたいでいきなり辺りが眩しくなってそんでその後あたりをナウマン象やら変態仮面Xやらブラキオザウルスやらいろいろなものがすれ違っていって気が付いたら五右衛門風呂みたいに煮えたぎった鍋にいきなりダイブしてぐつぐつ煮込まれて脳みそがほかほかのふろふき大根みたいにおいしそうに煮えたぎってそれからそれから・・・”
 
 
一部間違ったような表現があるが、彼はそれだけ錯乱しているということで認識していただきたい。
 
「あの・・・。つかぬ事をお聞きしますが、今は西暦何年でしょうか?」
 
「セイレキ??聞いたことないのう。」
 
「暦の事じゃないかな?今はガガーブ歴943年だけど・・・。それがどうかした?」
 
「へっ??!」
 
太助は更にConfuseしだした。いきなり飛び出した『ガガーブ』と言う単語に正直困惑気味であった。
 
「そう言えば君は一体何をしようとして鍋に飛び込んだの?」
 
突如フォルトが太助に尋ねる。
 
「え・・・あっと、その・・・。」
 
どう説明していいのか分からず、言葉を失う太助。すると
 
「熱湯コマーシャル?」
 
「宣伝活動!!?」
 
じゃあ太助は何を宣伝しようとしていたのだろうか。
 
「フォルト、異様な答えを導き出すな。」
 
「・・・そういえば、そこの女の子は・・・太助くんのお知り合い?」
 
「逃げおったな?」
 
話題を逸らそうと、フォルトは再び太助に尋ねる。
 
「ん?・・・ああ。彼女は園部リナっていって俺達のガイド役だったんだけど・・・。」
 
「ガイド?どう言うことそれ??」
 
太助は今までのいきさつをフォルト達に話し始めた。
 
・・・と、きりが良いのでこの辺で終わろうと思います。次回は後編ということで。
 
 
 
あとがき
 
初登場の海の檻歌キャラ。この頃からオリキャラへのタメ口化が進んできてます・・・。