時を越えて!!(3)




「ん、んん」
朝になり、目を覚ました太助。
「わっ」
目を覚ました瞬間、目の前にキリュウが寝ていた。
しかもキリュウも太助の方を向いて寝ていた。
「な!!何でキリュウがこんな近くに?!」
太助はいきなり目の前にキリュウの顔があったので顔を赤くしながらびっくりした。
「自分の布団で寝たはずだけど?」
その場で寝る前の出来事を太助は振り返った。
「ルーアンを怒った後に布団に入って・・・もしかして布団がいつの間にか移動してたのか?」
太助は前にあるキリュウの寝顔を見た。
「キリュウの寝顔初めて見たけど・・かわいいな・・・・・って!!俺はシャオがいるのになんと言うことを考えていたんだ!!」
太助は先程より顔を赤くした。
「ううーん、たー様」
「!!?」
太助は心臓が飛び出るほどびっくりした。
太助は後を振り向くとルーアンが寝ていた。
「はぁーもしさっきの言葉をルーアンに聞かれたら・・・」
ルーアンが先ほど太助が言った言葉を聞いていたら何をするか考え始めた。
「まずはたー様の浮気者とか言ってその事をネタにしてシャオ追い出し作戦なんか立てたりするだろーな、きっと」
「私ではだめなのか、主殿!!」
「!!!?」
太助はキリュウが起きたと思い振り向くとまだキリュウは寝ていた。
「なんだ、寝言か・・・一体なんの夢を見ているんだろう?」
太助は独り言を言いながらキリュウとルーアンを起こさないよう静かに部屋を出て庭に向かった。
太助は庭に着くと廊下に腰を下ろしため息をついた。
「はぁ・・・」
「どうした、ため息などついて」
太助は声のした方向に顔を向けるとそこには清明が立っていた。
「清明さん!!いや、シャオのことが気になってしまって」
「太助、心配するな」
そう言うと清明が太助の肩に手を当て言った。
「そういえば清明さんは何でここに?」
「太助がいたので来て見たのだ」
すると香蘭が来た。
「清明様、博雅様が来られました」
「わかった」
清明は庭に出ると向こうから博雅が来た。
「清明、木の人形を作ってきたぞ」
清明は博雅が一体の木の人形を取り出した。
「一体だけか?博雅」
「清明にこれで良いか聞きに来たのだ」
そして木の人形を見た清明は
「うむ、これをあと三体頼むぞ、博雅」
「わかった」
そして博雅は帰って行った。
「清明さん、あの木の人形は?」
「あれは虎鬼を試す物に使うのです」
すると香蘭が廊下を歩いてきた。
「清明様、朝食の用意ができました」
「さて、飯を食べに行くか」
「あ、清明さん、キリュウを起こすのを手伝ってもらえますか?」
「いいですよ」
太助はキリュウがあの部屋に目覚ましをセットしていないことを思い出し清明に起こすのを手伝ってもらう事にした。
「キリュウ起きろー」
太助は言いながら戸を開けるとキリュウは寝ていた。
スースー
「キリュウ起きろ」
太助はキリュウの体を揺さぶるとキリュウの蹴りが飛んできた。
「うわっ」
太助は何とかキリュウの蹴りを避けた。
「ほう、今度は私が起こして見ましょう、これをすればおきるでしょう」
清明は懐から数枚の小竹を取り出してその小竹に指を当てた。
「・・・・・」
小さな声で呪を唱えるとキリュウに向かって小竹を吹いた。
すると数枚の小竹はキリュウの方に向かって飛んでいった。
バサ・・・・
キリュウが布団から素早く出てきた。
「・・・・何をした?主殿」
キリュウは無表情で太助に言った。
「いや、俺じゃなくて清明さんがその小竹に何か言って飛ばしたんだけど?」
太助は清明を見ながら言った。
「では説明をしようか、この小竹に呪を唱えたのです、あなたなら避けると思って」
見てみると布団は切り刻まれていた。
「では、飯を食べに行きますか?」
太助とキリュウは清明の後を着いていった。
朝食が置いてある部屋に入るとルーアンがいた。
「たー様、おはよー」
「ルーアン、おはよう」
「ルーアン殿、おはよう」
「ルーアンどの、おはよう」
太助と共に入ってきたキリュウと清明も挨拶した。
そして食事が終わったとき清明が
「すまんが、太助、ルーアンどの、キリュウどの、髪の毛を数本切ってもらえるか」
「どうしてですか?」
太助が尋ねると清明が
「虎鬼がどのくらいの力か見てみたいので、偽者を作ろうかと」
「それならいいですよ」
清明は小刀を出した。
「これで切ってください」
パサリ・・・
太助たちは髪の毛を数本切り清明に渡した。
「清明」
博雅が来た。
「出来たか、博雅」
「出来たぞ、清明」
博雅は懐から四体の木の人形を取り出し、清明に渡した。
「博雅、少し頼まれてもよいか?」
「何だ、清明」
博雅は真剣な顔で清明を見た。
「博雅、俺の代わりに太助たちに暇がつぶせそうなところに連れて行ってやってくれ」
「わかった」
博雅は真剣な顔で返事をした。
「では、太助たちもその格好では怪しまれる、俺が用意した服をきてくれ」
すると香蘭がどこから服を持ってきた。
「キリュウさまとルーアンさまには唐衣裳です、隣の部屋で着替えてください」
「俺は?」
「これを着てください」
それは清明が太助ぐらいにきていた狩衣だった。
「人にあったら太助は俺の弟子とでも名乗っとけば言い、そしてキリュウ、ルーアンは私の式神かそれがいやなら自分で考えてくれ」
「ありがとうございます」
太助は清明に感謝した。
そして着替えが終わりルーアンとキリュウが出てきた。
「どーお、たー様」
「あーにあうよ」
太助は力のこもってない声で答えた。
「動きづらいな・・・」
「女の着物では動きにくいものばかりですから」
香蘭はそう言うとキリュウは仕方が無く着ていることにした。
「キリュウ、なかなか似合うよ」
太助は女らしい服装を着ているキリュウを見て新鮮な感じがした。
太助のほめ言葉に顔を赤くしたキリュウは歩いてくると
「あっ」
「!!」
太助が声を出したとき唐衣裳の裾を踏んでしまいキリュウは倒れた。
「キリュウったら、馬鹿ねー」
ルーアンがニヤニヤしながら言った。
「・・・」
キリュウは起き上がるとまた顔を赤くした。
そして太助たちは玄関に行った。
「では清明」
「博雅、頼んだぞ」
「清明さん、行ってきます」
博雅と太助たちは出かけた。
出かけて道を歩きながら博雅はどこに行くか考えた。
「(清明に言われたもののどこに行くか)」
「ねーたー様、私は料理たらふく食べてくるわ」
「仕方ないなー」
「なら私の屋敷で食べるがいい」
そして太助たちは博雅の屋敷に行った。
屋敷に行く道で、みんな珍しそうな目でこちらを見ていた。
「なんかはずかしいなー」
「・・・」
キリュウは真っ赤に顔を染め顔を下に向けていた。
「気にするな、みな珍しいだけだ」
そう博雅は言った。
その人だかりの中二人の少年が目を輝かせて太助たちを見ていた。
「おい見たか、あの赤い髪の女の子かわいかったな」
「あのお姉さんもきれいだったよ」
それはたかしと乎一郎に似た二人組みだった。
そして博雅の屋敷に着いた。
すると一人の女性が出てきた。
「博雅様、お帰りなさいませ」
「すまぬが、この人が満足するまで料理を出してはもらえぬか?」
「わかりました」
女性は中に入っていった。
「では、ルーアン殿、存分に食べていってくれ」
「はーい」
ルーアンはご機嫌で屋敷に入っていった。
「博雅さん、すみませんが誰も来ないところに行きましょう?」
「それならば」
博雅は歩き始めた。
すると博雅はどこかの木が生い茂っている場所に来た。
「ここならいいだろう」
「ありがとうございます」
「ここなら試練が出来るな」
すると博雅は懐から葉二を取り出し唐から伝わった秘曲青山を吹き始めた。
博雅は音楽の才があり、天下の笛の名手といわれている。その他の楽器の扱えるのである。
葉二は、江談抄(ごうだんしょう)が伝えるには
源博雅、天下に並びなき、横笛の名品を持っている。
名を葉二と言う。
葉二は高名の横笛であり。朱雀門の鬼の笛と号すはこれなり
と伝えられている。
その笛の音を聞いた太助とキリュウは試練を忘れその場に座り博雅の笛の音を聞いた。
そしてその笛を夕日が出るまで吹いた。
太助とキリュウも笛の音を聞いていた。
「博雅殿は笛がうまいな」
「ほんとにうまかったです」
キリュウと太助がほめた。
博雅は笑みを浮かべた。
「練習をしましたからな」
博雅は夕日が出ているのに気がついた。
「夕日が出たか、では戻るとしよう」
博雅は笛をしまうと、太助とキリュウを連れて清明の家に向かった。
そして清明の家について清明がいる部屋に通された。
「太助、キリュウどの、楽しかったか?」
「はい」
「それは良かった、そういえば今日、坊主が物の怪に食われたそうだ」
「!!?」
博雅と太助は驚いた。
「まさか清明、その坊主を食ったのが虎鬼か?」
「それは分からぬがもし虎鬼ならば匂いをかいで来るはずだ」
「どうすればいいんですか」
太助は清明にこれからどうすれば
「この屋敷の中から出なければ大丈夫だ」
清明はそう言うとルーアンが来た。
「ルーアン戻ってきたのか」
「いっぱい食ってきたからね」
ルーアンは満足な顔をしていた。
「では夕食にしますか」
すると香蘭が夕食を持ってきた。
そして夜になった。
夜になると月と今では見られないくらいの多くの星が出ている。
その夜の中清明の屋敷の近くの屋敷の屋根の上に人ではない、獣人に近い形の影があった。
「くっくっく、この匂いだ、この匂いだ、俺が待ち望んでいた食い物は!!」
続く