不安




シャオが夢を見ているとき、あるところであの少女は

「ふぅ、これで四人目、次はこの子ね、それにしても驚いたわ、この子 三人の精霊の主なんて、でもまぁその方がこっちには、都合がいいけど」
そのとき後ろの檻の中からから
「こら〜出せ〜」
「俺たちをどうするつもりだ〜」
と二人の少年の声がした。
まだ檻の中には少年二人がいた。
「うるさいわね〜もう一人連れてくるからおとなしくしていなさい」
少女そういい呪文を唱えた。
するとさっきまで騒いでいた二人が突然倒れた。
「何をしたんだ」
さっきまで黙っていた少年のうちの一人が尋ねた
「ちょっと気絶させただけよ」
そう少女は答えた。
「えっと・・場所は鶴が丘から動いてないみたいね。
これで復讐の準備が整うわ」
そういうとまた呪文を唱え消えた。







小鳥は、朝を告げるかのように鳴く。 太陽が地平線から顔を覗かせ、昇っていった。
蒼い空は晴れ渡っており、白い雲が流れるままに浮かんでいる。
清々しい朝は誰でも元気がわいてくるようなものであった。ただ一人除いて・・・。
シャオは何か悪い夢を見ているだろうか、魘されているようだ。
やがてシャオはうっすらと目を開けた。
半身を起こしたシャオは、掛けられている布団を見つめながら物思いにふけった。
内容はもちろん、あの夢のことである。
夢全部覚えている訳ではないので、考えても何かピンと来ない。
ぼんやりしていると、不意に心の中にある不安感が急速に増大してゆく。
夢とはいえ、大切な人がいなくなるという恐怖を味わってしまったのである。
現実にそうなってしまうのではないか、という不安にかき立てられたシャオは、布団を投げ、自分の部屋を出てしまった。
不安になったシャオは、わき目も振らずに二階の部屋へ急いで駆け登った
「太助様!」
シャオがドアを開けた途端、叫びと似た声を発する。
その音に驚いた太助はびくっ!と身をすくめ、恐る恐るとシャオのほうに向く。
「へ?」
突然の事に呆然する太助。自分が着替え中だと忘れて。
シャオは、そんなのお構い無しに着替え中の太助に抱きついた。
抱き付かれた太助は何のことか、分からず、パニックに陥っているようだ。
「ごめんなさい、私、不安でしょうがないんです。」
「あの」
「もう少しだけ、このままでいさせて下さい。」
太助の言葉を遮り、さらに強く抱きつくシャオ。
太助はシャオに抱き付かれているだろうか、着替え中のところを見られたのだろうか、顔は真っ赤になっていた。
しばらくの時間が流れたが、太助にとってはこの時間が長く感じられた。
シャオの抱き付き攻撃に耐え切られなかったのか、太助が不意に沈黙を破った。
「あのさ、朝ご飯は?」
「え?」
太助に言われるまでまったく気づかなかったシャオは弾かれるように離れ、頬を赤らめる。
「あ、朝ご飯作りますので早く来て下さいね。」
と吃りながらも、そそくさと階段を降りていった。
残された太助はしばらくポカンとしていたが、自分の身体を見てようやく思い出す。
自分が着 替え中だったことをそう思った途端、沸騰するほど顔が真っ赤になった。
真っ赤になった太助はなんとか普段着に着替え、階段を降りた。
台所からいい匂いが流れてくる。
それに、トントンとリズムのそろった包丁の叩く音が聞こえてくる。
「いい匂いがするなぁ」
太助は、匂いを嗅いでいると

ドカ――――――ン!!!

天井が響くほど大きな音がした。
それはキリュウの目覚しだと分かっている太助は、身をすくめながらも天井を仰いだ。
キリュウが起きたというよりも、こんなことをやって天井が破れないのか、と心配のこもった 気持ちで。
シャオはその音にびっくりしたのか、慌てて台所から飛び出した。
「太助様!」
「え?」
脅えたシャオは間抜けな返事をする太助に抱きつく。
普通のシャオならここまで脅えないはずのだが、さっきの夢の所為でそうさせてしまっているのだろう。
「あの、どうしたの?シャオ」
「え、ごめんなさい」
はっと我に返ったシャオは、謝罪の意を太助に伝えた。
そして、頬を赤らめ、目の前にある太助の顔をじっと見つめる。
もちろん、シャオが太助に抱きついた姿であるが太助の顔を見つめ続けているうちに頭の中がぼーっとして、心の中にある不安感が消えてしまった。
「キリュウの目覚しが発動したから、大丈夫だよ。それに・・・」
続けて言おうとした時、
眠たそうな表情をしているキリュウがリビングルームに入ってきた。
しかし、二人の姿を見た途端、湯気が出るほど顔を真っ赤にしてしまった。
こんな光景を見てしまっては真っ赤になるのは無理もない。
顔が赤に染まったキリュウは吃るような口調で訊ねた。
「シャオ殿、主殿、何をしておられるのだ?」
そう言われたシャオは、慌てて太助から離れた。
「朝ご飯は?」
太助はまさか二度目となる言葉を言うつもりもなかったのに、そう訊ねてしまった。
それも照れというものから来たのであろうか、と、太助の言葉はもう手後れだった。
なぜなら、焦げた匂いが台所から流れてきたからである。
それが一層、シャオを慌てさせてしまった。まるで普通の女の子のように、 慌てたシャオが台所に戻って見たものは、やっぱり焦げた魚とぐつぐつ煮えだっている鍋があった。
“朝ご飯”とよべるものはどこにもない。らしかぬ失敗をしてしまい、 シャオは泣きじゃくってしまった。
「ごめんなさい。失敗しちゃいました」
「もう一度作ればいいよ。俺も手伝ってやるからさ。泣かないでくれよ、なっ」
女の子の涙に弱い太助はおろおろしながら、そう慰めた。
その頃、キリュウの姿は見えない。きっと洗面所へ顔を洗いに行ったのだろう。
太助に慰められて、ようやく泣き止んだシャオはにっこりと微笑み、こくりと頷く。
「はい、一緒に作りましょうね」
「ああ」
太助も頷くしかなかった。ああいう風に見せられては。
そして、朝ご飯を作り始めるシャオ。今度は太助と一緒で作業を進めているのだ。
シャオは太助と一緒に居られるのが嬉しいのか、笑顔を絶やさずにいる。
洗面所へ行ってきたキリュウがテーブルの椅子に座ると、二人の様子を眺めた。
「何か微笑ましいな・・・。」
キリュウの一言は妙に説得力があった。
それは、台所の空気は何だかとっても暖かいような雰囲気があるから。
やがて今日はスキーに行くことになっているので珍しく早起きしたルーアンきた。
「ふわ〜まだ眠い、あら!朝ご飯用意してるじゃない!」
ルーアンが起きたころにはちょうどできた料理を並べているところだった。
みんながそろったところでいつもより早い朝食になった。
何気ない食事であったが、シャオ一人だけ不安の中に居た。
ちらっと太助の顔を見つめ、心で 呟く。
(気の所為よね、でも、心配・・・太助様が私の届かないところへ行ってしまいそうで)だが、シャオの思考は太助の言葉により停止する。
「シャオ、早く食べないとみんな来ちゃうよ」
「あ、はい!」
我に返ったシャオは慌てて朝ご飯を食べ始めた。
朝ご飯を食べ終えた一行は、それぞれ最後の準備をするべく自分の部屋へ戻っていった。時計はそろそろ八時を告げようとしている。
(みんなそろそろ来るころだな)
太助が、そう思っていた刹那、玄関のチャイムが鳴った
ドアを開けるとそこには翔子の姿があった。
「よっ、七梨」
「山野辺早いな、一番だぞ、それにしてもすごい荷物だな」
太助がそういうのも無理はない。なぜならば、翔子の持っていた荷物は、スキーに行くにはあまりも大きすぎる荷物だった。
「まあいろいろとあってな、ところでシャオは?」
「たぶん自分の部屋いると思う」
「そっか」
そういい翔子はシャオの部屋のほうに向かっていった。
(また、シャオに何か吹き込まなければいいけど)
太助はそう思いながらも、また二階へと上がった。
「シャオ、いるか〜?入るぞ〜」
翔子はそういいつつシャオの部屋に入った。
「あら、翔子さんおはようございます。」
シャオは笑顔で言ったが、翔子はシャオが一瞬見せた不安そうな顔を見逃さなかった。
「シャオ、何かあったのか?」
翔子は聞いた。
「・・・何でわかったんですか?」
「それくらいシャオの顔を見ればわかるよ」
シャオは今日見た夢のことを翔子に話した。
「そうかそういうことがあったのか」
翔子は少し考えてから、
「なぁ、シャオそんなことを考えていたら本当にそうなってしまうよ。 ここは心配しないのがいちばんだと思うよ」と言った
「わかりました」
とシャオは、言った。
そのとき玄関のほうでチャイムがなった。
(次は誰が来たかな)
太助はそう思いながら玄関のほうに向かった。
しかし・・・・



あとがき

今回は結構長めに作りました。
感想、指摘などいただけるとうれしいです
第四話以降は受験が終わるまでかけないと思います

〜次回予告〜

太助たちの前に現れた一人の少女。
その少女の正体は・・・・
そして明らかになるシャオたちの過去。
「太助様ぁぁぁぁぁ」

第四話 「夢が現実に・・・」