第1話

 四神天来々!





「ん?なんだ?これ」
 太助は言いながらその直下型ボムに近寄る。
「・・・・・・なんかの玉か?」
 太助の上に落ちてきたのは、紅い炎のような玉と、白と蒼の神秘的な氷のような玉だった。
「どうしました?!太助様!」
「――?!シャオ?!」
 気がつくとシャオの顔が目の前にあったので、太助は驚き、尻餅をついた。
「大丈夫ですか?!私は太助様がその2つの玉を見ながら立ったまま動かないので、不安になったんですが・・・」
「え?」
 そう、太助は2つの玉ずっと見ていたのだ、まるで、何かに取り憑かれたように・・・、妙な感覚と共に・・・。
(動かなかった?この2つの玉を見ながら?)
 シャオの言葉で、自分が何故この玉を見つめていたのか考えたが、今考えてもシャオにいらぬ心配をかけさせるだけだと思い、笑って答えた。
「大丈夫だよシャオ、ちょっとこの2の玉があまりにも綺麗だったから見とれてただけだよ」
「そうですか?ならいいんです」
 太助の言い訳に笑って答えるシャオ。
「まぁ、とにかくこの2つの玉を、このままにしておく訳にはいかないな」
 そう言って、太助は2の玉を持ち上げようとするが――

ピンポ〜ン

 と、玄関のチャイムの音が微かにした。
 太助はインターホンの音を微かに聞いたような気がして、玉を取るのを止め、シャオに聞いた。
「シャオ、今玄関の音したか?」
 しかし、シャオは立ったまま俯いていて答えない。
 不思議に思った太助はシャオの顔をのぞき込む
「シャオ…?どうした…?」
 すると、シャオは急に顔を上げ、何か言い出した。
「憎しみと悲しみ、希望と絶望が今再び螺旋のごとく、この世に蘇る…」
 そういうとシャオは意識を失い、倒れた。
「ーー?!シャオ?!」
 とっさに太助は倒れたシャオを抱き抱えた。

「あっ!いたー!」
 シャオを抱き抱えたとたん、地下室の入り口から声が聞こえた。
「誰だ?」
 太助は疑問の声を上げた。
(今家にいるのは俺とシャオしか居ないはず…)
 しかし、太助は心当たりがあることに気づいた。
(さっきのインターホンか…)
 そこで仕方無く地下室の入り口の方を向く太助。
 そこには案の定、予想したとおりの顔があった、愛原である。
 しかし、当の愛原はというと、太助にとシャオの光景に言葉が出ない様子だった。
 愛原の様子に戸惑った太助だったが、すぐにその事に気づいた。
「ちっ、違うんだこれには訳が…!」
 必死に弁明する太助だが、もうそんなもの、愛原の耳には届いていなかった。
「七梨先輩の…、バカ―――!!」そう言って愛原は何処かへ行ってしまった。
「ああ…、行っちゃった…」
 地下室を嘆きの空気が漂う。
 それと入れ替わりに見慣れた顔を見た。
「お〜い、七梨、さっき愛原が泣きながら……」
 そう言いながら翔子が、地下室の入り口から顔を出す。
 しかし。
「………結構結構」
「ちょっとまて〜!!」
 翔子の勘違いに気づき、必死に弁明しようとする太助だが、
「なるほど、それで愛原は泣きながら走っていったのか……」
 翔子は全く聞いていなかった。

 とりあえず太助は、シャオの安否が気になったので、翔子の誤解は後で解くことにし、シャオを引き上げる手伝いをしてもらった。
 その後、翔子の手伝いで、なんとかシャオの部屋にシャオを寝かした太助達は、リビングに集まっていた。
「…なるほど、それでああなってたのか…」
 太助は、先程のインターホンで来た、翔子を初めとする、たかし、乎一郎、出雲に話した、たかしと出雲に関しては、その場に居なかった事が不幸中の幸い(?)だったのでなんとかなった。
 愛原に関しては、先程の光景を目の当たりにして、何処かへ行ってしまったので、後日、改めて誤解を解くことにした。
「で?この2つの玉を見てシャオが妙な言葉を言って、気絶したんだな?」
 太助の説明を聞いた翔子が確認する。
「ああ、ついでに言うと、俺も数秒だと思うけど、この2つの玉に見とれてたみたいなんだ」
 太助は持ってきた2つの玉を指していった。
「確かに見とれるほど綺麗だけど?」
 太助の言葉に乎一郎が言う。
「ああ、そうなんだけど…、何か妙な感覚を感じたんだよ」
「妙な…感覚…?」
「ああ」
 たかしの問いに答える太助。
「なにかこう、懐かしい感じと、悲しみの感じが入り交じったような…」
「そうですか…、それで…シャオさんが呟いた言葉とは?」
「ああ、それは…」
 出雲の問いに答えようとした太助は、耳に何か引っ張られるような感じがした。
「?なんだ?離珠?」
 離珠はなにやらペンと紙を取り出すと、なにやら書き出した。
「ええ〜と、この絵から察すると、『シャオしゃまが起きたでし』」
 絵を見てそう答えた太助は、離珠を見た。
 すると、離珠は大きく頷く。
 離珠の頷きを見ると太助は、光速の如し、シャオの部屋に向かった。
 シャオがかかわると、神懸かりの力を使えるようだ。
「シャオ!」
 太助がシャオの部屋の襖を勢いよくあけると、布団の上で上半身を起こし驚いてる、シャオがいた。
「た、太助様?ど、どうしたんですか?そんな息切らして」

 落ち着いた太助はシャオに地下室で何が起こったか話した。
「……そうですか…、私、太助様に御迷惑をお掛けしたんですね…」
 涙目になって言うシャオ。
「そんなことないよ、俺はシャオが元気で居てくれればいいんだ」
 少し照れながら太助が言うと、シャオの満面の笑みが帰ってきた。
 そのころ、リビングに集まっていたたかしたちは、当然シャオの部屋に行こうとしたが、翔子にやって拒まれていた。

 しばらくして、太助とシャオがリビングに入ってきた。
 すると3人がシャオに高速で近づいてきた。
「シャオ!大丈夫なのか?!」
「シャオさん!御無事でしたか?!」
「うおーー!シャオちゃん!俺の心の叫びが君を目覚めさせたんだな?!」
 急な3人の接近にも動じず、シャオは答えた。
「ありがとうございます。翔子さん、出雲さん、たかしさん、もう大丈夫ですわ」
 笑って言うシャオを見て3人はシャオから離れた。
「ところで、シャオちゃんは覚えてるの?地下室で言った言葉」
 唯一シャオに近寄らなかった乎一郎がシャオに言う。
「太助様からも聞きましたが、すみません、全く覚えてないんです」
「別に謝ることじゃないよ、たぶん無意識に言ったんだろ」
(なんで無意識に言ったのか分からないけどな)
 シャオを気遣った翔子が言うと、太助は心の中で呟いた。
「それよりシャオ、この2つの玉に見覚えはない?」
 太助はの問いにもう一度玉を凝視するシャオ。

「……すみません、記憶にないです」
「そうか……」
 太助は残念がりながら、2つの玉を持ち上げた。
「でもこの紅い玉はまるで『炎』だな、んでこっちの蒼白の玉は『氷』だな、まるで」
 太助は笑いながら言った、すると…
「なっ、なんだ?!」
 太助が呟いた直後、2つの玉はお互いに螺旋を描くように天井へとゆっくり浮かんでいった。
 そして、一番高くなると2つの玉は『カチッ』といってぶつかった。
 その直後、2つの玉から紅い光と蒼白の光が発せられた、まるで紅い光は南方を守護する『朱雀』と、蒼白の光は北方を守護する『玄武』の姿に酷似しているように見えた。
 そして、朱雀は羽をおろし、玄武は体を鎮座するようにその場に横たわった。
 そして、さらに光が強くなると、なにも見えなくなり、光が消えると朱雀と玄武が居たはずの所に若い男女が、腕を胸の所でクロスにし、膝はひざまづくようにしてひれふしていた。
 やがて、2人は顔を上げ立つと。
『初めまして主(様)』
 と言った。
 太助達は(また精霊が……)という顔をしていた。
 太助達の顔を見るといつもと違うリアクションに出てきた男女2人組は困ってしまった。
「あ、あの〜」
 でてきた女性が太助達に問いかけた。
「驚かないんですね、私達が出てきたことに」
「まぁ、4度目だからね、それなりに慣れると思うよ」
 苦笑いして答える太助。
「4度目?、ということは、俺達以外に精霊がいるって事か?」
「まぁそうなるね」
「ということは……、5人の精霊が居るって事?!」
「それはこの次元始まって以来の奇跡じゃないか?!」
「この次元始まって以来って……」
 乎一郎が冷や汗混じりで呟く。
「あんた達いったいいつから生きてるんだ……?」
 翔子も冷や汗混じりで言う。

「そういえば私達の紹介がまだだったわね、せっかくだしみんなも自己紹介してくれる?」
 笑顔で話しかけてくる女性を断れないので、承知した。
「じゃあまず俺からだな、俺は鍛身炎天 烈境(たんしんえんてん れっきょう)主の体を鍛えるために来た、能力は火と炎を自在に操れる」
「次は私ね、私は癒身氷天 風雪(ゆしんひょうてん ふうせつ)主様の体を癒やすために来ました。能力は水と氷を自在に操れるわ、じゃあみんなの自己紹介してくれる?」
 風雪にあおられ、それぞれが自己紹介する。
「俺は七梨太助、一応精霊5人の主やってます」
「守護月天シャオリンです。宜しくお願いします」
「守護月天……?それってあの……」
「?どうしたんですか?私が何か?」
「いや、何でもない」
 風雪の呟きが気になったが、烈境にあしらわれてしまった。
「私は山野辺翔子、よろしくな」
「俺は熱い魂を持つ男、野村たかしだ!よろしく!」
「私は宮内神社の神主をしています、宮内出雲と申します、以後お見知り置きを」
「僕は遠藤乎一郎です、よろしくお願いします」
『よろしく』
 みんなが自己紹介し終わると、烈境と風雪は笑顔で言った。そのとき

「ただいま〜」
「今戻った」
 玄関から声が聞こえた。
「お帰り〜」
 太助は玄関から聞こえた声に、声を返した。
「今の声は?」
 急に聞こえた声に烈境が不信がる。
「残りの2人の精霊だよ」
 太助は笑いながら言った。
「残りの精霊か…」
 そう呟く烈境だが、残りの精霊が誰か楽しみのようだ。
 その証拠に、口元がにやついている。
 するとルーアンとキリュウがリビングに入ってきた。
「たー様!ルーアンを誉めて〜、今日商店街の定食屋の早食いで、5万円取ったの〜」
 リビングに入って来るなり俊足で太助に抱きついた。
「……ルーアン……、定食屋で5万円取ったのは誉めるが、抱きつくのは止めてくれ」
「や〜よ〜」
 もう慣れているのか、ルーアンの攻撃(?)を難なく交わし、キリュウに聞いた。
「そうだキリュウ、烈境と風雪って知ってるか?」
 太助の質問に「ピクッ」動きを止めたのは質問されたキリュウだけでなく、太助に引き離されたルーアンまで動きを止めた。
「あ、主殿…、何処でその方達の名前を知ったのだ?」
「そうよ、たー様、なんであの方達の名前を知ってるの?」
 何かに怯えているかのように話すキリュウとルーアン。
「何処でって、今ここで本人達に聞いたからだよ」

 太助の言葉にキリュウとルーアンは顔を見回し、烈境と風雪を見つけると一目散に2人の前にひれ伏した。
「慶幸日天ルーアンここに、お久しぶりです。かつて星宿界において百戦錬磨と呼ばれた烈境様」
「万難地天キリュウここに、久方ぶりです。かつて星宿界において、冷酷な女神と詠われた風雪殿」
 2人にひれ伏した2人だが、シャオがひれ伏していないことに気づき、慌ててシャオをひれ伏させた。
 シャオは何が何だか分からず、とりあえず2人の前にひれ伏した。
 するとこの状況を見ていた烈境が口を開いた。
「よせ、日天、月天、地天、その名前は捨てた名だ、今更名のる気はない」
「しかし、星宿界四神天のお二人がなぜ十二天のような役目を負っているのですか?」
「それは、気晴らしだ。それに人間界の観光や十二天の連中がここで役目を果たしているか観察しようかと思ってな」
 キリュウの問いに答える烈境。
「それではここの3人が役目をちゃんと行っているか確かめるのですか?」
 烈境の言葉に恐る恐るルーアンが尋ねる。
 しかし烈境は笑って
「いや、大丈夫だ。それは主が決めてくれる」
 烈境の発言に、その場にいる全員が太助の方を向く。

 烈境の言葉に最初は驚いていた太助だが、やがて笑って。
「最初は親父の送ってきたのは支天輪っていう八角形の輪だった…。そこからシャオが現れて俺の心を孤独や寂しさから守ってくれると言った。その後また親父から黒天筒が送られてきて、ルーアンが出てきて、俺を幸せにしてくれると言った。そこから俺の辞書に『平穏』と言う言葉が無くなった。その後、那奈姉が帰ってきて、大変だったし、十年近く離れていた母さんと話もできた。そのあと、シャオが支天輪に帰されたとき俺は誓った。『俺が主でいる間にシャオを守護月天の宿命から時放つ!』そのあとキリュウが来て、最初打ち解けられなかったけど、今はもうシャオを守護月天の宿命から解き放つために試練をしてもらって手伝ってもらってる。それに、俺はシャオやルーアンにキリュウが精霊だから一緒に居るんじゃなくて、今ではもう、立派な家族の一員だから…、俺はみんなと一緒にいたい!」
「太助様…」
「たー様…」
「主殿…」
 太助の言葉にシャオ達は今一度改めて、『この主様は必ず守って、幸せに、成長させようと心に誓った』
「いい主だな…」
 太助の発言を聞いて、しみじみと感じた烈境が言った。

「よし、では審判を終了する。3精霊の主である七梨太助、汝を我ら四神天の主と認める。それでは、契約の儀を」
 すると烈境と風雪は太助を立たせ、太助の前に立った。
 そして、太助に2人の玉を持たせるように言った。
 右手に烈境の持つ紅い玉を、左手に風雪の持つ蒼白の玉を。
『ではここに四神の炎と氷を司る炎天と氷天を従える事をここに認める』
 烈境と風雪がそろって言うと、2人の精霊器が光太助を包み込んだ。
 しかし、光は太助を包み込んだと思ったとたん光はやんでいた。
『契約完了。汝七梨太助を我らの主と認む』




あとがき
最初にすみません!
1ヶ月以上も更新をさぼって!
でもなんとか第1話を無事に載せることができました。
それにいくつか勘のいい人は「これはここから来ている!」ってわかる人がいるかと思います。
かなり他の漫画からネタ持ってきてるんで(汗)
そのうち細かいところは紹介しようと思います。
ちなみに自分で決めた〆切は、1話につき1ヶ月です!ですから毎月30日でコミブレと同じです。
遅いかと思いますが、自分にはこれが精一杯です(泣)
では、第2話をお待ちください



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