第１３話
第１３話
主への思い
U
「火月、デン、乎一郎は俺と一緒に、殺南を撃つ！
あとの者は、風雪と婁襄の指示に従え！…行くぞ！」
烈境のかけ声で一斉に殺南めがけ向かっていく男性陣。
「じゃあ、ライちゃん、キリュウちゃん、翔子ちゃんは私と一緒に羅雪を！」
言って風雪は三人を連れ、羅雪の元へ行った。
「ルーアン、金欧は私と一緒にヘラヘラ女！
残りの水明、土架、木蘭、シャオはビクビク女！」
ふと、太助は自分が呼ばれないことに不思議がり、婁襄に訪ねた。
「婁襄、俺は？」
「太助は、あそこでのんびり見物してる馬鹿者をお願い。
ほっておいて、後で不意打ちなんてヤだからね！
…行くわよ！」
『了解！』
一斉にそれぞれの敵めがけて走り出した。
「魔焔光っ！」
殺南の放った負のエネルギーを纏った火の流れが、烈境めがけて迫る。
「くっ！壱式・火炎弾！」
烈境は、迫りくる炎に、数十発もの火炎弾を打ち込む。
が
「なに？！」
殺南の放った魔焔光は、威力を全く衰えさせず烈境に直撃した。
「烈境（さん）（兄）！」
「あ？もう終わり？呆気ねぇ
ま、まだ三人いるから、そっちで楽しむか」
言って、殺南は乎一郎を見る。
「さぁ、前座のボウズ共！俺を楽しませてくれ！
魔神風っ！」
殺南は今度は乎一郎めがけ、竜巻のように荒れ狂う風を放った。
「くそっ！乱型・風嵐流！」
乎一郎も応戦し、似たような風を放つが、殺南の放った魔神風には及ばない。
しかもあろうことか、乎一郎のはなった風さえも、自分の風に取り込み、威力を増大させてしまった。
「遠藤！逃げろ！」
デンが叫ぶがしかし、驚異的なスピードで進む風から避けることができず、乎一郎は風の中にのみ込まれ、上空高くに放り投げられた。
そして、その高さから、乎一郎は地面に激突してしまった。
あれほどの強風で、体が捻れたり契れたりはしなかったものの、落下のショックは相当の物だったらしい、微かに呼吸をしていることから生きていることは分かるが、虫の息である。
「さて、次にやられたいのは誰だ？」
「迅雷！」
「万象大乱！」
翔子の攻撃に、キリュウが万象大乱をかけ、威力を増大させる。
強力な雷が、羅雪めがけて迸るが、手にした釈杖で一払いするだけで雷の向きを変えてしまった。
しかもそれが、攻撃した翔子に向かわせたのだから曲者である。
「な…！」
「雷盾！」
翔子に直撃する寸前、ライが翔子の目の前に飛び出し、跳ね返ってきた攻撃を受け止めた。
「くっ…ぐぐっ！」
しかし、盾を使っても威力を消せないのか、まだ消えない雷に徐々に押され始める。
「反射ぁ！」
と、押され始めているかと思ったら、急に盾が光りだし、反射された雷を、またも反射し返した。
さしずめトリプルクロスカウンターだろう。
羅雪も、まさか反射してくるとは思っても見なかったようで、モロに直撃してしまった。
「やった！」
「油断しないで！連鎖行くわよ！」
「は、はい！」
攻撃が成功して浮かれたライに、戦いには厳しい風雪がカツを入れる。
「氷天舞技・弐式・氷蛇！」
「万象大乱！」
再び、風雪の攻撃にキリュウが万象大乱をかける。
表面を氷で覆い、牙をむき出しにした蛇が、羅雪に襲いかかる。
「うふふ、あなた達はあの程度で私を倒せると思って？」
がしかし、ライの反撃で、羅雪に直撃したところを見ると、砂埃が舞っているだけであった。
「なっ…」
「遅いわよ♪聖雷♪」
まるで赤子の手を捻るかのように、巨大な白きイカズチで攻撃した。
「きゃあぁぁぁ！」
「ぐはっ！」
羅雪はライとキリュウの後ろに回り込んでいた。
「ライ！キリュウ！」
羅雪は、足下に倒れている二人を見下ろし、美しい微笑で言った。
「もっと遊びましょ？」
羅雪の、本当に天使のような微笑みも、今の風雪には悪魔の微笑みに見えた。
「婁襄！アレ出して！一気に片付けるわ！」
華衣との戦闘に向けて走っている最中に、ルーアンが言う。
「……どれ？」
「三番！」
「わかったわ
金欧！最初に一発かまして！一発かましたら、すぐに離れなさい！巻き添え食らうわよ！」
（わかりました！
では…行きます！）
まず最初に金欧が先攻する。
（金暗器！）
金欧は、いつも首にかけている、アクセサリーを大きくさせた。
「いらっしゃい！お姉さんが可愛がってあげるわ！」
（金暗器・壱の型・牙！）
金暗器は、簡単に言ってしまえば薙刀に似た感じのモノである。
（はぁぁぁぁ！ていっ！）
金欧は走っていた時の力を利用し、力一杯華衣めがけて刃を突いた。
がしかし、それは軽々とかわされてしまった。
「まだまだねぇ、顔も肌も髪もいいけど、まだまだ体が幼いわ」
（なっ！）
その言葉に金欧はカチンときた。
実は金欧、年下の木蘭より胸が無いのを気にしていた。
腰のくびれやヒップは自信があったが、胸だけは気にしていたのだ。
（あなたなんかに言われなくても分かってるわよ！）
一撃食らわせることは出来なかったが、一度は攻撃しているので、作戦通り、一旦退かなくてはいけないのだが、金欧は華衣の挑発に見事にハマってしまった。
「ちょっと金欧！退きなさい！」
（いいえ！ここまでバカにされて黙っていたら、私のプライドが許しません！）
「ちょっと金欧！何そんなくだらないことでキレてんのよ！」
ルーアンが言う。
「そうよ！あなたは胸が無くても綺麗よ！」
と婁襄。
（あなた方二人には、私の気持ちなんて分かるはずはないわ！あなた達立派なモノ持ってるじゃない！）
『う……』
黙るルーアンと婁襄。
（うわ〜ん！アンチ巨乳派隊員募集〜！）
とか言いながら、ちゃっかり攻撃はしている金欧。
「とにかく！一旦退きなさい！」
婁襄が怒鳴る。
「さもないとアノことばらすわよ？！」
（アノことってどのこと？！）
「どのことって、そんなに心当たりがあるの？！」
（う……）
どうやら相当心当たりがあるらしい。
「分からないのなら教えてあげるわ！
それはそう…コトが始まる前の朱雀庭のテラスで…」
（――ッ！！）
婁襄は金欧が反応したのを見ると、顔をにやけさせながら続ける。
「そこであなた『達』は……」
（やめてーーッ！！）
金欧は攻撃の手を止め、婁襄の元にすっ飛んでいった。
（お願いします！その事だけは！言う通りにしますから、その事だけは御内密に！）
「ルーアン！」
婁襄は金欧が戻ってきた途端、胸元から三と書かれた札を取り出し、華衣めがけて投げた。
「行くわよ！霊力最大！陽天心招来！」
ルーアンが唱えるや否や、婁襄の放った札が光りだし、中から数千もの鉄槍が出てきた。
ルーアンは、それの一つ一つに陽天心をかけ、自由自在に華衣めがけて突進させた。
「はぁ……」
すると、今までコトの状況を見ていた華衣は、深い溜め息を出した。
「私は気帝って言ったでしょ？」
心底呆れたように言う華衣。
「だから…」
言って華衣は、次々と鉄槍を地に落としていく。
「なっ…！」
「私の能力の『気』は、あなた達の『風』の能力者と似たような力があるの。
あえて違うと言うなら、私は気圧だけでなく、気と付くものなら、たいてい操れるってことね」
だから…と言って、両手をあげる華衣。
「気持ちも操れる！
いくわよ！『マインドアクション』！」
『きゃぁぁぁぁ！！』
「お、音波！」
『きゃっ！！』
「うぐっ？！」
「み…耳が…！」
いざ攻撃を始めようとする水明や土架達は、突如として、強烈な耳鳴り襲われた。
「ごめんなさいごめんなさい！！
私も本当は戦いたくないんです！」
「だったら…！」
耳鳴りの中、シャオが言う。
「ダメなの…私はあの人のために戦うと決めたから…！」
音の放つ音波がより一層強くなる。
「私はあなた達を出来るだけ傷つけたくない。
だから、鼓膜が破れるほどまで強くしない。
だからお願い。私の声が聞こえているうちに降参して」
乙冬は体を震わせている。
自分はこんなことはしたくない
が、愛する人の為にしなくてはいけない、しかし本当はしたくない、と言う気持ちが葛藤しているのだろう。
「あなたにも…」
乙冬の攻撃の中、シャオが喋り出す。
「あなたにも守るべき人が居るように、私たちにも守るべき人が居る！
だから、私たちも、その人のために戦う！
来々、土司空！」
支天輪から、星産の間で新たに加わった星神が現れる。
ただ違うのが、あの時の大きさより大きく、シャオの膝下くらいの大きさであることくらいである。
「行きなさい！土司空！」
現れた土司空はキューと、可愛らしい声を鳴らし、地面へ潜った。
「無駄よ！」
言って乙冬はシャオ達に向けていた両手を『地面に向けた』
「かかった！」
「？！」
「水龍刀！」
「木龍弓！」
「土龍槍！」
「来々、梗河！」
四人のいっせい攻撃が、乙冬へと向かう。
「ゎわっ！」
四人のいっせい攻撃に慌てた乙冬は、慌てて回避する。
いや…逃げまどっていると言った方が適切かもしれない。
なかなか素早くかわす乙冬は、皆の接近攻撃を紙一重でかわし、安全な場所まで逃げ仰せた。
「あ…危ない…もう少しでやられるところだった」
息づかいが荒々しい、乙冬は本気でビクビクしている。
「でも…逃げてばかりじゃ、あの人に認めともらえない…！」
言って乙冬は、シャオ達に向けていた足を強く蹴った。
「一気に片付けてあげる！」
乙冬（？）は走りながら言うと、右手に力を入れ始めた。
すると、乙冬（？）の右手にはウィップ……鞭が握られていた。
「あなた達の仲間はまだこの力に目覚めていない。
だから、あなた達はこれも知らないでしょうね！」
ヒュンッ！
「キャッ！」
乙冬（？）の放った鞭は、空気を切り、シャオの足首に絡み付いた。
「気をつけた方がいいですよ？
それは鉄筋コンクリートでさえ絞め折り、切り刻んでしまうんですから」
「なんだと？！」
「超音波ナイフをご存じ？
要はアレと同じなの、振動で切れやすくしてるのね。
それも、微かに振動してるのは解るでしょ？」
「――ッ！」
「まぁそれは、切り刻む時にしか使わないけど、絞め折ることは出来るの。
ほぉら、だんだん絞められてるのが分かるでしょ？」
「ぐっ！」
「シャオさん（お姉ちゃん）（殿）！」
シャオの足首から下の色がおかしくなってきた。
締め付けられているため、血が止まっているのだ。
「くそっ！」
水明は舌打ちして走り出そうとしたが
「おっと！今動いたらその女の足首を絞め折るわよ？」
「――ッ！」
「ふふふ、暫くそうしてなさい」
乙冬（？）が振り向いてどこかへ行こうとすると。
「そうはいかない！
行きなさい！土司空！」
シャオが叫ぶと、最初の攻撃で地面に潜ったままでいた土司空が、乙冬（？）の手めがけて噛みついた。
「いたっ！」
「！」
今度は、またも召喚中の梗河が動いた。
一瞬のスキを見逃さず、乙冬（？）の鞭を奪い去ったのだ。
「なっ？！」
乙冬（？）は一瞬の出来事に困惑していた。
すると鞭は、持ち主の手を離れたとたん、消えて無くなってしまった。
持ち去った梗河は一瞬驚いたが、主であるシャオが助かったのでよしとした。
「行くわよ！」
「ゎわっ！」
シャオ達の攻撃に乙冬はあわてて先程出した鞭を出した。
がしかし、先程のしなやかで強靭な出で立ちはどこへやら、全くのひょろひょろの鞭がでてきた。
「あれ？」
「何か、さっきと威圧というか何というか…雰囲気が違いませんか？」
木蘭と土架が不思議がる。
「どういうことでしょう、シャオ殿」
「さぁ、分かりません。
先程の時も、最初と雰囲気が違う気もしましたが…」
そういえば…と、シャオは続ける。
「以前彼女が学校に現れたとき、後からきた男が変なことを言ってまし」
「変なこと？」
「今は夏かよ…て」
「夏？」
「さぁ…どういう意味かは分かりませんけど、夏と言うことは、他にも春秋冬があるってことですよね？」
乙冬は、必死にひょろひょろの鞭をきちんとしようとしていて、こちらに集中していない。
これはこれでチャンスなのだが、罠かもしれないため、動けない
しかし、相談時間にはもってこいである。
「その男の発言で今は…と言うことは、違うときはまた違う季節と言うことになるの。
春夏秋冬に基づいたらだが」
「いえ、春夏秋冬で合っていると思います」
「土架殿はなぜそう思うんだ？」
「夏ときて、他の事象が思いつきますか？」
「………」
「私の考えはこう、奴は奴自身を入れて、五人の人格を持っているんだと思うの」
「五人？！」
「そう、で、今の奴がオリジナル。
それで、他の四人は春夏秋冬にちなんだ性格をしてるんだと思う」
「なるほど…」
水明が思案顔で頷く。
「例えば春ならポケポケ、夏なら熱い、秋なら〜〜の秋にちなんだ性格、冬なら冷静沈着とかね」
「土架ちゃんすご〜い♪」
木蘭は土架の頭をいい子いい子して、頭を撫でた。
「えへへぇ〜」
土架は誉められて嬉しそうだ。
「と、言うことは…」
「奴が他の誰かに変わる前に始末した方がよかろう」
「やった！」
話がまとまった途端、乙冬が歓喜の声をあげた。
見ると、さっきまでひょろひょろだった鞭が、先程までとは行かずとも、しっかりしていた。
「じゃ…行きます！」
「火龍・奥伝・昇火刃！」
太助は、宙に浮かんでいる影鬼めがけ飛んだ。
が、太助の攻撃は、影鬼の前の見えない壁にはばかれた。
「ん？なんだ『貴様』か、『貴様』には用はない。失せろ」
まるで興味のないオモチャを見るような口調。
「そっちに用が無くても、こっちには用があるんだ！」
太助は再び飛び、影鬼より高く飛ぶと、今度は降火刃を放つ。
しかしそれも、影鬼には通じない。
「なぜおまえ達はこんな戦いをする！十二星帝への復讐だけが目的なのか？！」
「ふんっ！そんなもの、ただのおまけでしかない」
「ならおまえ達の目的は何だ！」
太助の問いに、少し間をおいて影鬼は悪どい笑顔で答えた。
「……全次元の消滅、及び再生だ」
「？！」
「それをするためには少々時間がかかってな、神に頼んで、復讐する時間をもらったというわけだ」
「神だと？」
「そうだ、俺たちの次元の冥神天様だ」
「なら、なぜ星神天様をさらった！」
「おいおい、言いがかりは止してくれ、奴は自分から俺に付いてきたんだぞ？」
「なに？！」
「おっと、そろそろいい頃合いか？」
影鬼は周りを見て言った。
「？！」
太助は影鬼の言葉で、周りを見た。
座談会
グ「アンチ巨乳派隊員募集中です」
烈「隊長は？」
グ「金欧」
婁「隊員は？」
グ「今のとこ俺だけ」
風「……金欧ちゃんはそんなに無いの？」
グ「設定としては、貧乳と無乳の間くらい」
烈「元ネタはまほろだな」
グ「っ！！」
風「…はぁ」
グ「どした？」
風「どうしてここの男どもは…」
婁「作者、この話の流れは自らの首を絞めるけどいいの？」
グ「手が勝手に動く…つか、婁襄、そんな突っ込みするもんじゃないぞ」
烈「微妙に話が飛んで、噛み合ってないな」
風「……とりあえず今日の感想」
グ「今回はちょっと短めだったけど、次回は１，５倍近くあるのでご期待を」
烈「もう出来てるのか？」
グ「ああ、今はWを作ってる。…でも」
風「まさか」
グ「うん、当初の予定は３人だったんだけど４人になりそう」
婁「じゃ長くなるのね」
グ「うん…うまくいけばX失敗したらYかも知れない」
烈「これからの流れも考えると痛くないか？」
グ「だって…そうなるんだもん…」
風「まぁ、私たちは、誰も死なないでハッピィエンドならいいんだけど」
グ「っ！」
風「何よ！誰か死ぬの？！」
グ「じゃ、今日はこの辺で、次回こそは婁襄が大変になるので。じゃ」
風「こら！勝手に終わらせるな！！」
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