第14話



第14話
主への思い
V



『がはっ!』
「ったく、情けねぇな」
 火月とデンを吹っ飛ばし、手持ちぶさたになった殺南が退屈そうに言った。
 と――
「炎帝拳武・百炎烈撃!」
 烈境が倒れた位置から、無数の炎が迸った。
「ッ?!」
 とっさのことで、殺南は避けきれず、直撃した!
 ――かに見えたが
「ふぅ〜あぶねぇあぶねぇ。危うく炭になるとこだったぜ」
 声は烈境の後ろから聞こえた。
「くっ!」
 声が聞こえた途端、烈境は沈み、足で殺南の脚を払おうとした。
 しかしそれを殺南はジャンプしてかわす。
 そして、そのまま落ちるときの威力を利用し、烈境に蹴りを入れようとする。
 それをとっさに避ける烈境。
「ふふっ、少しはやるようになったか」
「お陰様でね」
(なんだこいつ…最初より炎霊気が強くなってやがる)
(くそっ!百炎烈撃がかわされたか!)
 少しの間、睨み合う二人、そしてそれはやがて、両者の視線が交わり、動くことが負けに繋がる状況になった。
 そんな中、殺南が話し出す。
「そういやお前のエモノは確か鍵爪だったよな?」
「鍵爪……?何のことだ?
 俺は今まで己の拳でしか戦ったことはない!」
「はっ!まさかそんなことも忘れちまったのか?
 星転生ってのは以外と厄介だな」
 くっくっくっと、笑いを堪えるように笑う殺南。
「なにを笑っている!それに鍵爪とはどういうことだ!」
「こういうことだよ!」
 殺南は両手に黒い負のエネルギーを集めると、それを圧縮し、いくつもの物体を形成した。
「な、なんだそれは!」
 烈境は驚愕の表情を取る。
 烈境は、その一つ一つに、凄まじい気が凝縮しているのが分かったからだ。
「これが俺の冥武、『黒負のクナイ』だ!」
 殺南はそれを忍者が持つように持ち、投げた。
「くっ!」
 烈境は痛む体を引きずるように避けた。
 そして、烈境が居た位置には、数個のクナイが突き刺さった。
「ふっ、よく避けたな、まぁ、当たったら当たったらで大変だがな」
 そして再び殺南はクナイを作り出す。
 すると、烈境は自らの両手に炎を纏い始めた。
「―ッ?!貴様!なにをやっている!」
「貴様は昔、俺がなんて呼ばれていたか知ってるか?」
 烈境は俯き、炎を纏い続けている両手を下に垂らしている。
「昔の俺は、様々な戦い方をする奴らと戦ってきた」
 言いながらゆっくりと顔を上げる烈境。
「その度に俺は、そいつ等に最適な戦い方をしてきた。
 しかし、それをゆっくり考えている暇はない、何せ戦闘中だからな。
 すると、自然と相手の技を意図も簡単に扱える様になってな。
 だから、俺の戦闘での適応能力は異常だ。」
「な…まさか、こんな短期間で…!」
 殺南は烈境の両手に凄まじい炎霊気が集まっているのを感じた。
「だから、俺はこう言われた『灼髪の盗人』(フレイムシーフ)ってな!
 それが俺の百戦錬磨の名の由来よ!」
 烈境が雄叫びを上げる。
 それは道楽に現を抜かす者ではなく、戦場で駆け抜ける獣の戦士だった。
「お望み通り創ってやったぜ!これが俺の星武!『紅蓮の鍵爪』だ!」
 その鍵爪は、烈境の両手首から指先まで覆い、甲と指先の関節の部分から三本の鋭く鋭利な爪が出ていた。
 そして色は燃え盛るような深紅で、甲の部分には、何かが収まるような、底が平坦で周りに抑えのような物がある窪みがあった。
「さて、第2ラウンドと行こうか!」
 烈境が先に動いた。
「紅蓮…舞曲!」
 今回の紅蓮舞曲は、以前の紅蓮舞曲とはケタ違いの威力だった。
 まず炎の色が違う。
 以前は赤だったのが、今回は紅である。
 それに、ただ回転していただけの円柱型の形が、ランダムに回転し、球状をしている。
 それは地面を抉り、真っ直ぐ殺南に向かっている。
「炎霊気が増していい気になるな!」
 言って殺南は、六つのクナイを前方に配置し、六亡星の形を作った。
「闘魔結界陣ッ!!」
 クナイとクナイの間を黒い線が走り、六亡星の形を作り、その周りを円が走る。
 すると、その円の中に、透明な壁ができたのが解った。
 そこに、烈境が激突する!
 両者の力がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が生まれる。
 しかし衝撃が収まった後も、ぶつかり合った衝撃で吹っ飛ばされることなく、殺南は耐え、烈境は攻撃を続ける。
 ガチガチと、何度も何度も烈境が殺南の壁を引っかくのが分かる。
 と――

 ピシッ、ピシピシッ

 殺南の闘魔結界陣に亀裂が走る。
「なっ…!」
「くらえ!」
 殺南は叫ぶまもなく、烈境によって切り刻まれ、宙を舞い、太助の後方に落ちた。
「またつまらぬものを斬ってしまった…か」
 一撃を喰らわし、相手の気をほとんど感じなくなった烈境は、気を沈め、いつもの表情に戻る。
「さて…他の奴らは…」
 言って烈境は、他の戦いも終盤だということを悟ると、踵を返し、乎一郎達、怪我人の元へ向かった。

「聖刃乱舞」
 ライとキリュウを見下ろす位置から、羅雪が新たな攻撃を繰り出す。
「がっ!」
「うっ!」
 白い刃が翔子と風雪の髪を服を、肌を切り刻む。
「はぁ…はぁ…どうやら…」
「ええ…あの釈状が力の源のようね」
「…と、いうことは…」
「あれさえどうにかすれば、勝機が見れる!」
 二人は同時に技を繰り出す。
「雷柱爆炎弾!」
「氷天舞技・壱式・氷柱舞」
 上からの雷柱、下からの氷柱、それが、そばにいるライとキリュウを避けて、羅雪めがけて迸る。
「――っ!!」
 いっせい攻撃に羅雪も一瞬動きを止めたが―
「甘いわ!」
 羅雪はその場から後方に跳躍した。
 攻撃は上と下から来ているのだから、前後左右に逃げればいいだけのことである。
 が―

 ガシッ

「――ッ?!」
 後方へ下がろうとする羅雪は、足首を何かに捕まれ、尻餅をついた。
「行かさん!ライ殿!」
「雷神・招来!」
 キリュウが合図の声を上げると、ライはスカートの中から札をだし、羅雪の釈状を手にしている手めがけ放った。
「あちっ!」
 静電気の数倍の強さと思ってくれていい痛みが走り、羅雪は手にしていた釈状を手放した。
「キリュウさん!」
「心得た!」
 キリュウは落ちかけの釈状を、空いている方の手で拾い、風雪に呼びかけた。
「風雪殿!」
「氷天舞技・肆式・氷着鎧!」
 キリュウの呼びかけに応じた風雪は、ライとキリュウを氷の鎧で厚く覆った。
「ちょっと、離してぇ!」
 しかしキリュウは、羅雪の足首を持ったまま氷付けになったので、堅く、開こうとしない。
「き…キャー!」
 断末魔に聞こえる羅雪の声は、直撃でかき消された。
 跡には、氷付けにされたライとキリュウ、それと正面は黒こげ、背面は霜焼けになっている羅雪が残った。
 それでもフードには傷一つついていない。
「……終わったのか…?」
「気がさっきと段違いに弱まってるからたぶん…」
「でもとりあえず、あの二人を助けなきゃ」
 あれほどの攻撃だったのに、ライとキリュウの氷着鎧は傷一つついていない。
「肆式・解!」
 風雪が氷着鎧を解くと、あれほどの攻撃にも耐えた鎧にヒビが入り、粉々に砕けた。
「ん…んん…」
 まるで眠りから目覚めるかのように起きるライ。
 しかし、キリュウはいっこうに起きあがろうしない。
 しかもガタガタと震えている。
「キリュウ?」
 どうしたのかと尋ねる翔子にキリュウは…
「さ…寒い…」

 スパコーン

「アホなこと言ってないで傷見せる!」
 キリュウが言うと、強烈なハリセンがキリュウの顔面を叩いた。
「な、何をするんだ風雪殿…というかどっから出した?それ」
「うるさい!とにかく傷治したら他のみんなの加勢に行くわよ!」
 言って、風雪は、ライとキリュウに治癒呪文を唱えた。

 マインドアクション、心乱は、心のバランスを崩し、喜怒哀楽などの感情や、その者の深層心理にある隠れた心を、華衣が自在に操ることが出来る技である。
 婁襄達は、華衣の心乱に見事にはまってしまった。
(あはははっ、私は胸が小さい単細胞ですよ〜)
「どうせ私なんか、新シリーズでもいいとこ無しなのよ」
 金欧は楽、ルーアンは哀にはまってしまった。
 そして婁襄はというと…
「……………私は…の子……他の者とは相対に位置し、交わることのできない存在……」
 婁襄の周りには黒い靄が立ち混み、負のエネルギーが徐々にではあるが、出てきた。
「な、なによこれ!マインドアクションで、こいつがこんなになるなんて聞いてないわよ?!」
 予想外の婁襄の変貌に狼狽えを見せる華衣。
「故に…私は孤独の螺旋に堕ちる…」
 婁襄はそう言うと、体から一気に黒い靄を出し、それを固形化、黒い繭を作る。
「い、一体全体何がどういうこと?」
 心が乱れている金欧とルーアン、それに華衣を残し、婁襄は、深層世界へと落ちていった。
「ま、まぁ…あっちは何もなかったことにして、こっちを片づけるか」
 言って華衣は、未だバーサク状態の二人を見た。
 今度は金欧は怒りはじめ、ルーアンは喜び始めていた。
「さて、最後は自滅してもらおうかしら」
 言って華衣は、二人の心理状態を怒にした。
 すると、二人は今までの動きを止め、ふつふつと異様なオーラを放ちだした。
(ルーアンさん…)
「金欧…」
 二人の目は据わり、お互いを睨む。
 すると、せきを切ったかのように怒鳴り出す。
(だいたいあなたは大食らいすぎなんです!太助さんの言うとおり、家族だとしても、自嘲した方がいいんです!!)
「うるさいわね!たー様が良いって言ってるんだから良いのよ!」
 ギャーギャーと喚く二人。
「さて…もう少ししたら憎しみにして……うふふ
 仲間同士が争う様を見るのはゾクゾクして楽しいわぁ」
 サディストのような発言をする華衣。
 やがて、金欧とルーアンの喧嘩はエスカレートする。
「さて…そろそろかしら…」
 言って華衣は、二人の心理を憎しみに変える。
「なんかあんたのことが急に憎くなってきたわ」
(偶然ですね、私もですよ)
「やっぱり私とあんたは、こういうことになる運命なのかもしれないわね」
(ホント、そうですね)
 今までは言葉だけのケンカだったのだが、二人はそれぞれの武器を握りしめて、向かい合った。
「陽天心招来!」
「金暗器・弐の型・龍!」
 ルーアンは先程、華衣めがけ放ち、地面に叩きつけられても無傷だった鉄槍に陽天心をかける。
 金欧は、牙の形にしていた金暗器を龍、すなわち鎖鎌に組み替えた。
 そして、ルーアンと金欧は、敵めがけ、攻撃を放つ。
 そう、十二冥帝である敵、華衣めがけ。
「え?!」
 予想外の出来事だったが、なんとか避けようとする華衣。
 それでも避けきることができず、ルーアンの鉄槍がいくつか掠り、金欧の鎖鎌の刃が、脚を切った。
「な、なんで……!」
「マインドアクションが効かなかったって?」
 華衣の質問をニタニタしながら代わりに話すルーアン。
(どうやらあなた達はここ一週間、雑魚を使って私達を試していたようですが、調査不足だったようですね)
 さっきまでの取り乱したような態度とは一変して、毅然とした雰囲気の金欧。
「そんなことが聞きたいんじゃない!何で私の心乱が効かなかったのよ!」
 華衣は体をくの字に折りながら怒鳴るが、いまいち気迫がない。
 そう思ってみてみると、足下から大量ほどではないが、血が滴り落ちているのが分かる。
 しかしフードは傷ついていない。
 どうやらフードは、破けはしないが、攻撃などは貫通してしまうらしい。
「だから調査不足って言ったでしょ?」
(つまりあなた達は、私の能力を完璧に理解していなかったという事です)
「どういう事よ!」
(つまりテレパシストである私には、心乱は完璧な効力を発揮できなかったという事です)
「最初の数秒は効いてたらしいけどね、金欧は訳ありで、深層世界への進入を拒んだのよ」
「じゃああなたは!」
 ルーアンの説明にあっけに取られた華衣だが、ルーアンの事を思い、怒鳴り聴いた。
「私?私が心に進入を許すと思う?」
 これでもかと、蹴落とすような高笑いで言うルーアン。
「そ、そんな……」
 ペタッと、崩れ落ち、膝をつき、落胆する華衣。
「でも、婁襄はよっぽど効力が効いたか、何かから逃げたくてああなったのね…」
 時たま見せるルーアンの優しい目が、繭になった婁襄を見る。
(とりあえずあっちも心配だけど、こっちも片づけなくちゃね)
 言った金欧がかまえると、ルーアンも黒天筒をかまえる。
「覚悟なさい!陽天心招来!」
(金暗器・伍の型・暗!)
 ルーアンは再び鉄槍に陽天心をかけ、金欧は龍の型から暗の型へと金暗器を組み替える。
 暗の型は魔弓、弓矢の形をしている。
 それらがいっせいに、華衣めがけ飛ぶ。
 しかし華衣は、よっぽど自分の技に自信があったのか、簡単に破られたショックから立ち直っていない。
 しかし、放たれた攻撃は待ってはくれなかった。
 金欧の矢は肩へと刺さり、ルーアンの鉄槍は華衣の全身を掠るかのように、傷を付けた。
 華衣は叫ぶ気力もないのか、無言で二人の攻撃を受け、そのまま倒れてしまった。
「…終わった?」
「もう気が無いに等しいです。それにあの傷から見て…」
 ルーアンの問いに、金欧は戦いの終わりを告げる。
「…そうね、とりあえず他の皆も心配だけど、今は婁襄ね」
(はい)
 言って二人はきびすを返し、未だ繭の状態の婁襄の元へ向かった。

「来々、天陰、天鶏!」
「水龍刀!」
「木龍弓!」
「土龍槍!」
 シャオの召喚済みだった2体を入れた4体と、水明達の攻撃がいっせいに乙冬めがけ襲いかかる。
「もう逃げてばかりじゃ…いけないッ!音障壁!」
 すると、乙冬の前方2メートルほど前になにか、水の波紋が広がるような感覚の壁が現れた。
 そこに7人の攻撃が衝突する!
『――ッ?!』
 謎の壁に衝突した途端、凄まじい振動に体が揺れ、その衝撃に吹っ飛ばされた。
『キャッ!』
「うぐっ!」
 しかし吹っ飛ばされながらも、皆は体勢を立て直し、落下のショックを、最低限にする。
「まだっ!音弾!」
 水明達がシャオの元に着地した途端、壁を消し、先程の波紋のような球を、無数に作り出す。
「行けぇ!」
 それを投げる!
「みんな集まって下さい!来々、塁壁陣!」
 しかし、一足早く、シャオが塁壁陣を召喚、音弾の着弾を防いだ。
「今度はこっちの番です!」
 これは木蘭、いつもの間延びした喋り方ではない。
 戦闘では性格が変わるタイプなのだろうか?
「木龍弓!」
 木蘭の武器は弓、しかも5本同時に撃て、100メートル離れた針の穴にも通す腕の持ち主である。
 ちなみに星宿界での異名は「ネジの抜けた精密機械」である。
 塁壁陣が消えると同時に、木蘭は矢を放つ。
 5本の矢は、すごいスピードで乙冬めがけ飛んでいくが、最初のキリュウの攻撃同様、矢に亀裂が入り、粉々に砕けてしまった。
「遠距離でも、近距離でも攻撃が通じないなんて…!」
 シャオが舌打ちする。
「いや、今の木蘭殿の攻撃と、先程のキリュウの攻撃を見ると、遠距離の攻撃には音の振動を、対象物の一点に集中させているようですじゃ」
「――っ!そうか!」
 突然土架が大声をあげる。
「その攻撃を耐えた後や、その攻撃中は他のところは無防備!」
 その途端、皆が集まっていたところに大型の音弾が着弾した。
 それらが分かったとたん、皆は四方八方に散った。
「そう言うことなら…土龍槍!」
 土架は土龍槍を地面に突き立て、土…と言うより地を操り、乙冬の周囲3メートル程陥没させ、深さ2メートル程の穴を作った。
 そこに乙冬は見事に濱ってしまった。
「木龍弓!」
 それと同時に木蘭が跳躍、穴の上空から5本の矢を放つ。
 そして再び木蘭が矢を放つと同時に、シャオは土司空を地中に潜らせた。
「音障壁!」
 予定とは違うものの、穴を作ることによって、入口しか壁を張らない、心理的にも防御的にも一番安全な手を使ったと思う乙冬。
 そして、木蘭の矢が、音障壁にかかると!
「キュキュー」
 矢が音障壁にかかる寸前、乙冬の落ちた穴の壁から土司空が出てきたのだ。
「なっ!」
 土司空の背中は、本を見て分かるように、針鼠の針の部分が、太くなったような形をしている。
 その上、爪も太く大きい。
 作者は、ポ○モンのサン○パンに似ていると思っている。
 そして、乙冬の真横から現れた土司空は、そのまま乙冬に体当たりしようとした。
 あの体での体当たりである。
 下手したら大怪我で済まないのでは?
 しかし乙冬は、音障壁をそのままに、木蘭の矢を跳ね返した。
 しかも今度は跳ね返った矢を木蘭に向かわせたのである。
 そして乙冬はと言うと、幅が3メートルあるからと言って、たいして大きくないはずの穴の中で、見事、土司空をかわしたのである。
「簡単ですね」
 いつの間にかまた人格が変わっていた。
 体当たりをかわされた土司空は、そのまま反対側の壁にめりこんで地中へ戻って行った。
「水龍刀!」
「行きなさい!天鶏!」
 矢を放ち、落下するだけになっていた木蘭に、自分の矢が向かっていた。
 しかしそれを水明と天鶏が打ち(焼き)落とす。
「攻め方はよかったですけど、詰めが浅かったですね」
 乙冬は穴の中から跳躍、底が2メートルの穴の中から出てきた。
「さて…今度はこっちから……」
「来々、車騎、軍南門、北斗七星!皆!行きなさい!」
 乙冬は最後まで言うことが出来なかった。
 シャオは今召喚している星神を入れた全ての攻撃型星神を、乙冬めがけ向かわせたのである。
 これには乙冬も手も足も出なかった。
 いくら攻撃を跳ね返すことが出来ても、この数では集中させるところが特定できない。
 しかも星神達は、シャオの考え以上の働きをした。
 星神達はシャオの指令ではなく、自分達自ら陣形をとり、乙冬へ向かった。
 最初に車騎と軍南門がうって出た。
 まず車騎が遠距離での砲撃、そこで乙冬は、砲撃を返そうとするが、そこに軍南門が現れ、音障壁にパンチ。
 軍南門の力を音の障壁で返すなんて無理な話である。
 通常の人は跳ね返しても、軍南門の巨体&力を跳ね返せない。
「そ、そんな!私が月の力に負けるなんて!」
 それが今回の戦いの最後の言葉だった。
 なぜならそれから、乙冬は反撃すらする事が出来ず、一方的な戦いになったからである。
 軍南門によって破られた音障壁を突破し、車騎の砲撃が直撃。
 その直撃で、乙冬は暫し宙を飛ぶが、地面に着地することなく、地中から現れた土司空に真下からの体当たり。
 再び宙を舞う乙冬。
 宙に舞った乙冬に、天鶏が仕掛ける。
 天鶏は乙冬に体当たり、フードこそ燃えなかったが、乙冬の肌は大火傷をしただろう。
 そして乙冬は落下、そこに走り込む天陰と梗河。
 二人は同時に体当たり、再び宙を舞う乙冬。
 そして最後。
 星神最強の攻撃力を持つ、北斗七星。
 彼らの攻撃により、乙冬は地面に落ち、めり込んだ。
「……すごい」
 声にこそ出さなかったが、土架も木蘭もシャオの総攻撃に驚いている。
「太助様にこれ以上心配をかけないためには、私が…強く…ならなくちゃ…いけ…ない……か…ら……」
 シャオは全ての星神を支天輪に戻した途端、力尽きたように倒れた。
「シャオさん(お姉ちゃん)(殿)!」
 倒れたシャオに三人が駆け寄る。
「だい…じょうぶです。久々にあれだけの星神を同時召喚したから、疲れたんでしょう。昔は大丈夫だったんですが、鈍ったようですね」
 弱々しく笑うシャオ。
「大丈夫です。少し休めば治りますから」
「……分かりました。では私達は」
「ええ、他の皆様の手助けに行って下さい」
「分かりました。…では」

「あいつらは、おまえらの仲間にやられたようだな」
 仲間がやられたのに平然としている影鬼。
「だが、これで終わったと思うな?」
 すると殺南達4人の体が宙に浮かび、影鬼の元に飛んできた。
 そして、傷を癒やし、急に敵が飛んだのに驚いたので、他の皆が集まってきた。
「太助様!」
「主殿!」
「たー様!」
 4人は糸で吊らされた人形のように、影鬼の下に立っている。
「さて…おもしろい物を見せてやろう」
 言って影鬼は、両手を真下、殺南達に向けた。
「脱影癒着!」
 すると、影鬼の両手から、黒い平面の物が現れ、4人の足下にくっついた。
 するとなんということか、華衣から流れていた血が止まり、虫の息だった気が、戦闘前の状態に戻った。
『ッ!!』
 華衣だけではない、他の3人の傷も治ったようだし、気も回復している。
「そんな…」
 そう、影鬼の脱影癒着は、個人の影を肉体から取り外す技である。
 そして、どんなに肉体が傷ついても、死滅しない限り、無傷の影を付けることによって、回復できるのである。
「無様だな」
 意識を取り戻した4人に影鬼が言う。
「う、うるせぇ!ちょっと油断しただけだ!」
「そ、そうね。今度は負けないわ」
「そうよ!だって、フード取ったらこいつら!」
「…そうです!もう負けません!」
 その4人を見て影鬼は
「本当だな?では、その言葉に間違いがないか、そのフードを取って証明して見せろ!
 これより、フードを取っての戦闘を許可する!」
 影鬼の言葉を待ちわびていた4人は、フードに手をかけると、無造作にフードを脱ぎ捨てた。
 そして四人がフードを脱ぎ捨てると、太助達は驚愕した。
 そして、今まで肉体的、精神的、な戦いより、遙かに勝る精神的な戦いが始まった。


座談会
グ「なぁ」
烈「あぁ?!」
グ「何で俺は吊るされて…いやいい、自業自得だから…」
風「当たり前よ!今回の話どれくらい延ばしと思ってるの?!」
婁「約一ヶ月オーバーね」
グ「…それは、携帯が使えなくて、本体に送れなかったからです…」
烈「それはお前の責任だろう!」
グ「そうです…すいません…」
風「で?次の話はどうなの?」
グ「うぅ…もう出来てるから、本体に送って、編集して座談会書けばいい」
婁「じゃあしちゃいなさいよ」
グ「無理ゆうな、これを編集するのにも結構神経使って、時間かかるんだから、それにこの次は個人的に時間をおきたい。俺が書きたかったところだから尚更だ」
烈「……ちゃんと考えてあるんだな?」
グ「もちろん!」
烈「よしじゃあ、今回は見逃してやる」
風「でもこんなのが毎回続いたら信用無くすわよ?」
婁「そうそう、この業界は信用第一なんだからw」
グ「了解した」
烈「じゃあ、次回は十二冥帝の真の姿が見れるということで!」
グ&烈&風&婁『再来!』



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