第2話
傷ついた5体の龍







 烈境と風雪が言い終わると3人は静かに座った。
「あの〜、ちょっといいですか?」
 今までかやの外だった翔子達のグループの出雲が聞いた。
「なんです?え〜と、……出雲さん」
 出雲の問いに風雪が答える。
「私達には何が何だか分からないのですが…」
「私も」
「お、俺も何が何だか…」
「実は僕も…」
 出雲の発言をきっかけにするかのように翔子、たかし、乎一郎も言う。
「え〜とじゃあキリュウちゃんやルーアンさんの言ったことから簡単に説明しますね」
 そう言って風雪は話し出した。
「私達は星宿界における地位で四神天の位に属します」
「星宿界?四神天?」
 いきなり知らない単語を言われ戸惑う翔子達。
「星宿界っていうのは簡単に言えば魂の通過点だな」
「魂の通過点?」
「ああ、人には天界と地上の間に、どちらにも属さない空間があるって言われている、それが星宿界だ。人は死ぬと魂を星宿界に連れて行かれる。まぁたまに浮遊霊や自縛霊など星宿界に行かない奴もいるがな、大抵の魂は星宿界に行くんだ」
「それで、地上から星宿界に通じる門のような物を『地戸』と言われて、星宿界から様々な極楽浄土にいく門を『天門』って言われるの」(※作者注 作者が読んだ本に書いてありました) 「それで四神天っていうのはな、星宿界において上から3つ目の位のことを言うんだ」
「え?!じゃあかなり偉い人……精霊なの?!」
 少し言い直す乎一郎。
「まぁな、でも月天達だってそれなりの位は持ってるぞ」
『え?!』
 またも驚く翔子達、今度は太助も驚く。
「月天達の持つ位の十二天は四神天の一つ下の位なんだ」
 烈境の発言で皆はいっせいにシャオ達を見る。
「そ、そんなたいしたことじゃないですよ」
「う、うむ」
 さすがシャオと言うべきか、顔を真っ赤にして言うシャオに、キリュウも顔を真っ赤にして同意する。が…
「そ〜よ、私達は偉いのよ〜♪」
 ルーアンだけがシャオ達と違い威張る。
「ルーアン先生ってすんごく偉いんだ〜」
 乎一郎だけがルーアンの事を誉めたたえる(?)
 しかし…
「日天。そんなことばかりしていると『あの御方』の天罰にあうぞ」
 微笑しながら言う烈境だが、その言っている雰囲気が怖かった。
 一方ルーアンはというと…
「あ、『あの御方』?!す、すみません烈境様!ですからご報告は勘弁して下さい!」
 必死になって烈境に謝るルーアンを見て、太助達は驚いた。その上キリュウもいい顔をしていない。
「なぁシャオ、ルーアン先生が怖がってる『あの御方』って誰なんだ?」
「たぶん…」
「それなら俺が答えるよ」
 翔子の問いにシャオが答えようとしたら、烈境がシャオの言葉を遮るように言った。
「日天が怖がっている『あの御方』ってのはな、星宿界のトップに立たれる御方なんだ。そしてその御方の名は、『星神天』様だ」
「痛っ」
 烈境の言葉を聞いたとたん、シャオは一瞬頭痛にみまわれた。
(なぜ?なぜ星神天様の名前を聞くとこんなにも頭が痛いの?)

「どうした、シャオ?」
 シャオを心配した太助が言う。
「いえ、なんでもありません。ただ一瞬頭痛がしただけですから…」
「……そうか、でも何かあったら俺に言えよ」
「はい」
 シャオは笑って言うが、その笑みにはやはり曇りがあるように見えた。
 ルーアンの必死の誤りを聞きながら烈境は思った。
(月天はやはり……、しかし忘れているようだ。これは不幸中の幸いと言っていいのか?)
「ところでルーアン先生が怖がってる人は分かったけど、なんで怖がってんだ?」
「ああ、それは星宿界の管理は星神天様に一任されているからなんだ。だから星神天様の作った法もある。もしそれに逆らったら当然の罰もある。それに、もし星宿界の精霊達が人間界で悪事を行ったと判断されれば天罰が下る。それは星神天様が見ているときもあれば、俺達監視役がそれを判断して、星神天様に報告することもある。だから日天は俺が報告すると思ってこんなに必死に謝ってるんだ」
 確かに烈境が説明しているにもかかわらずルーアンは必死に謝っている。
 太助はこの光景を見て微笑していた。
 するとルーアンは太助が微笑したことに気づき、声を上げた。
「笑い事じゃないわよたー様!星神天様のお怒りをかったらどんなことになるか!かつて星神天様のお怒りをかった精霊はこの世で一番悲しい事をされたっていう話なのよ?!」
「日天!その話は止めろ!」
 ルーアンの話が終わるか終わらないかの時に烈境怒鳴るようにしていった。
「は、はい」
 急に大声で言われ静かになるルーアン。
「あなた……、どうしたの……?」
「……いや、何でもない……」
 心配する風雪を安心させようとする烈境だが、その顔は冷や汗混じりで焦っているように見えた。
「烈境…さん、なにか苦しんでることがあったら何でも言って下さい。まだここに来たばかりで何も分からないでしょうし。それにあなた達も、俺の掛け替えのない家族なんですから……ちょっと頼りないかもしれませんが」
 急に怒鳴った烈境に優しく微笑しながら言う太助。それに呼び名や言い方が敬語なっている。
 それを聞いて平静を取り戻した烈境は……
「ありがとう」
 こちらまでほのぼのしそうな笑顔で言った。
(ちょっと待て?確かさっき風雪さんがなんかすごいこと言ってたような……)
 胸中で呟き、考え込む太助。と―
「そういえば、お二人って夫婦なんですか?」
 考え込む太助を余所に乎一郎が言った。
『え?!』
 当然皆驚く。
「そうだ!それだ!さっきから考えてたんだよ!風雪さんさっき烈境さんのこと『あなた』って言ったんだ」
 乎一郎の言葉で、今までつっかかってた物が取れたように言う太助。
「そういえば言ってなかったわね。そうよ私たちは精霊同士の夫婦よ」
『ええ?!』
 再度驚く太助達。

「烈境様と風雪様の熱愛ぶりは星宿界では有名なのよ」
 烈境と風雪に聞こえないようにルーアンが太助に言う。
「へぇ〜」
 感心するような言う太助。
(俺もいつかシャオと……)
 妄想に浸る太助、どうやら最近妄想壁に近くなってるらしい。
 それはともかく、太助は自分が何を考えていたか考えると、顔がキリュウ並に赤くなった。
「七梨〜何考えてたんだ〜?まさかシャオとあ〜んなことや、こ〜んなことをするようなことじゃないよな?」
 太助の考えてる事が分かった翔子はニヤケながら言う。
「ちっちがっ!」
 必死に弁明しようとする太助だが、翔子の言葉でたかしや出雲が2人が詰め寄ってきた。
「太助!」
「太助君!」
 2人は太助に詰め寄る。
 太助も必死で弁解しようとするが止められないようだ。
「これだから七梨をからかうのは辞められないんだよな」
 ケタケタと笑いながら言う翔子。
 それを見て烈境と風雪は微笑している。
(ホントいいところね)
 風雪が胸中で呟くと、つけっぱなしだったテレビの通常番組が変わり、臨時ニュースが現れた。

(これから通常番組を変更して臨時ニュースをお送りします。)
「珍しいな。番組を変更してまで放送する臨時ニュースなんて」
(今日未明東京都練馬区にある中央公園に全長30メートルある巨大な龍が現れました)
「なんだって?!」
 シャオのくんでくれたお茶を吹き出しそうになりながら翔子は叫んだ。
「どうしたんだ?山野辺」
 太助達は翔子の声に反応したので取っ組み合いは一時中断して太助が聞いた。
「東京に龍が現れたって……」
『ええ?!』
 翔子の言葉を聞くと皆は一斉にテレビの近くへいきテレビを食い入るように見た。
(突如出現した龍は全部で五体。いずれも傷だらけの状態で暴れ回る気もないようです。え?あ、はい。今現場と中継が繋がりました。では現場の齊藤さんお願いします)
 すると画面が切り替わり、若い青年風の男が画面左下に現れ、画面中央には巨大な龍が見えた。
 すると少し遠目からテレビを見ていた烈境と風雪は……
『あれは!』
「なんだ?2人とも知ってるのか?」
 翔子が尋ねるが烈境は答えず太助に言った。
「主。俺達は今からあの龍のところへ行くが一緒に行くか?」
 急に名を少し戸惑った太助だが、笑って
「ああいくよ、龍も見てみたいし。それに……」
 途中で言葉を止め少し後ろを見る。
 その後ろではたかしや乎一郎が行く支度をしている。
「………なるほど。分かった……じゃあ行くか」
「ああ」

 そして庭に出た太助達は烈境に言った。
「なぁ、あんた達何で行くんだ?私達はシャオ達の乗り物で行くけど…」
「心配ない。俺達には頼れる相棒がいるからな」
 そう言って烈境は何か唱え始めた。
「古来より四方を護る聖獣よ。今炎の精霊が命じる。我の前に現れ我を助けよ。いでよ『朱雀』!!」
 言って、烈境の前に大きさにしてキリュウが大きくしたウェン程の赤く燃えたぎるような毛の鳥がいた。
「よしじゃあ行くか」
 烈境のかけ声を合図にして皆はそれぞれの乗り物に乗って飛び立った。
 ちなみに乗っているメンバーは

 シャオ&太助
 ルーアン&乎一郎&たかし
 キリュウ&翔子&出雲
 烈境&風雪

 である。
 どのような経緯でこうなったかは読者様のご想像にお任せしたい。
 そんなこんなでニュースでやっていた中央公園に到着した。
 すると着くなり烈境と風雪は自衛隊のロープをくぐり龍に近づいていった。
「お、おい!」
 慌てて太助達も烈境達を追いかけようとするが自衛隊の人に止められてしまった。
 遠くから見守る太助達をよそに烈境達は龍の前に立った。
「一体どうしたんだ?こんなに傷ついて……、それにおまえ達の今の主はどうしたんだ?」
 龍に訪ねる烈境だが龍は傷つき過ぎてまともに目も開けられないようだ。
「とにかくここだと目立つわ早くここを離れましょう」
 風雪の言葉に無言で頷く烈境。
「とりあえず今は窮屈で苦しいと思うが、ここに入っておいてくれ」
 そういって烈境と風雪が取り出したのは自分達の精霊器だった
「さぁ、お入り」
 風雪の優しい言葉で龍達は何とか体を起こし烈境の精霊器に3匹、風雪の精霊器に2匹入った。

 龍を自分達の精霊器に入れた2人は再び朱雀を呼び出し太助のところまで来た。
「主、俺達は今すぐここを離れなければならない。だから先に家へ帰っている。主も騒ぎにならないうちに帰った方がいい」
「失礼します。主様」
 そう言って2人は飛び立っていった。
「………なんなんだ?一体……」
 突然のことになにがなんだか分からない太助は立ち尽くしていた。
「いました!この人達です!」
 すると立ち尽くしていた太助達の所にたくさんの報道陣達が今にも集まってきそうだった。
「やばい!テレビに映されたら精霊の事も話さなきゃならないぞ」
 翔子が迫ってくる報道陣に囲まれた時のことを想像し言った。
 翔子の言葉にことの重大さをいち早く察知した太助は大声で怒鳴るように言った。
「逃げるぞ!」
 そしと3精霊は自分達の乗り物をだし皆を乗せ、空高く飛び上がった。
「ふ〜間一髪ってとこかな」
 翔子は、安堵の息をはいた。
 下には報道陣達がなにやら奇声を上げているが、早くここを去らなければと思った太助はシャオ達に家へ帰るようにうながした。

「結局あの2人は何をしに行ったんだ?」
 帰り道で残念そうにたかしが言った。
「そうね、あんな龍私は初めて見たわ」
 ルーアンの呟きに驚く乎一郎ったかし驚いた。
「え?!ルーアン先生、あの龍見たこと無いんですか?!」
「ええ、龍っていうのは結構種類があるもんだけどあんな龍は今まで見たこと無いわ」
 すこし悔しそうに言うルーアン。
「そっか……ルーアン先生も知らないのか……」
「え?私もって事は誰かに聞いたの?」
「ええ、あの2人が龍に近づいていったとき、キリュウちゃんが龍をみながら、考えごとをしてたみたいだから聞いたんですよ。なぁ?乎一郎」
「うん。そしたらキリュウちゃんがボソっと『あんな龍は今まで見たことがないが……』とか何とか言ってたよ」
「そうありがとう」
 乎一郎の言葉を聞きルーアンはその話を切り上げた。
(キリュウも知らないなんて……シャオリンにも一応聞いとこうかしら、たぶん知らないだろうけど…)
 などと思っているルーアンをよそに乎一郎は…
(ルーアン先生に『ありがとうっ』て言われちゃった〜)
 余談だが、その時乎一郎は今にも昇天してしまいそうな笑顔だったという   たかし談

 ルーアン達の会話をよそに七梨家一行+αは七梨家に到着した。
「さて…あの2人はもう帰ってるはずだけど……」
 そう言って太助はリビングの敷居を跨ぐと、驚くべき光景が広がっていた。
 中央等辺にあったテーブルやソファー端っこにやられ、その場所には老若男女バラバラの5人が、横たわっていた。



あとがき
少し更新遅れてすいません!
実は更新予定日に風邪を引いてしまい更新できませんでしたすいません
では説明ですが、今回は謎の龍と七梨家のリビングに横たわっている5人の素性が気になりますが、
わかる人にはわかると思います(ってか全員分かるんじゃない?)
あと文中に出てきた「東京都練馬区中央公園」は実際に存在しますので探してみてはどうでしょう
まだいろいろ説明しなくてはいけないことがあるんですが
(烈境と風雪の顔、プロフィール、なぜ地下室にいたのか、等々)
これから明らかになっていくと思いますので、気長に待っていてください!
では来月のコミブレ発売日に!



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